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彷徨のレギンレイヴ  作者: 二上たいら
第二部 第一章 幽霊部隊

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第十六話 統合基地奪還戦 その4

 それからは作戦は順調に――はいかなかった。

 マルコたちはすぐに別の家で赤ん坊を見つけたからだ。泣きわめく赤ん坊の声は家の外まで漏れ聞こえていた。今度は赤ん坊を持って行ってくれそうなオーガの子どもはいない。


「少尉、今度はどうするんですか? このまま家の中に放置して焼き殺すより、一発であの世に行かせてやったほうがよっぽど慈悲深いですよ」


「……止めて、軍曹。赤ちゃんは連れて行く。オーガに遭遇したら引き渡して脅して逃がす」


「司令官に判断を委ねるべきです」


 それなら確実に射殺命令が出るはずだ。あの司令官なら眉ひとつ動かさずに命じるだろう。だがそれはデボラ少尉も分かっているのだろう。


「どうしても私たちの手に余ったらそうする。それまでは私の指示に従って」


「了解しました」


 実のところ軍曹であるマルコは少尉を飛び越えてルフト司令官に連絡をしていいことになっている。だがマルコはそうはしなかった。デボラ少尉のためにならないと思ったからだ。

 デボラ少尉の言うとおり、自分たちの手に余るまでは彼女の判断に従うことにしよう。そしてきっとそれはすぐに訪れるはずだ。

 第六小隊が担当する区域の処理はまだ5%も進んではいない。他の小隊が10%を超えていることを考えると、このようなことで足を止めているのは第六小隊だけだということだ。


「フリッツ、赤ん坊を運べ。エルマー、焼け。さっさと先に進むぞ」


 第六小隊は燃え盛る集落を背に進んでいく。中には寝たまま焼き殺された赤ん坊もいたかもしれない。だがそのことを少尉に指摘するつもりはなかった。そんなことをすれば1件ずつ屋内を確認しながら進むことになりかねない。

 しかしそれでも30分を過ぎる頃には第六小隊が確保した赤ん坊は4匹になった。


「ここらが限界です。少尉」


「まだよ。軍曹。私も前方に付く。赤ちゃんを抱えた隊員は中央に」


 どうやらデボラ少尉は意固地になっているらしい。間違った正義感に取り憑かれているようだ。

 そのまま先を進んでいくと、ようやくというか三匹の大人のオーガが家の陰から飛び出してきて襲いかかってきた。咄嗟にマルコはストッパーをオーガたちに向ける。


「軍曹、止めなさい!」


 オーガの持った棍棒がマルコのドレスを殴りつける。シールドは衝撃も緩和してくれるが全てではない。思わずマルコはたたらを踏んだ。デボラ少尉も殴られて尻もちをついた。ここぞとばかりにオーガはデボラ少尉をめった打ちにする。

 マルコは自分を殴ったオーガを無視して、デボラ少尉を殴っているオーガに体当たりする。オーガは吹き飛ばされて、家の壁にぶつかってうめき声を上げた。


「少尉!」


「だ、大丈夫よ。赤ちゃんを地面に置いて! 下がりなさい!」


 背中を殴られながらマルコはデボラ少尉を引っ張って起き上がらせると、素早く後退する。オーガの1匹がマルコに体当たりされたオーガを立ち上がらせ、オーガ、地面に置かれた赤ん坊、第六小隊という順番に並んだ。


「そら、おまえらの赤ん坊だ。拾い上げろ、早く」


 パウルがレーザー銃をオーガたちに向けながらそう急かす。

 しかしオーガたちは赤ん坊に一瞥(いちべつ)こそくれたものの、それを大股に越えて第六小隊に向かってくる。


「少尉!」


「格闘戦よ! 殺さないように傷めつけて!」


「言われた通りだ! 訓練を思い出せ!」


 当然ながら兵士たちは格闘訓練も受けている。

 小隊員たちは銃器を背中に貼り付けて格闘戦に備える。マルコもストッパーを背中に、両腕を上げて構えた。

 オーガの大振りの棍棒をスウェーで躱し、がら空きのボディに手加減したパンチをお見舞いする。ドレスの膂力で本気で殴れば、吹っ飛ばすどころか穴が空きかねない。腹を殴られて体をくの字に折ったところで、顔面を殴る。

 体格は圧倒的にオーガが大きいが、ドレスを着た兵士たちの相手ではない。

 あっという間にオーガたちはうめき声を上げながら地面に横たわった。


「そら、敵わないと分かっただろ。赤ん坊を連れて逃げろ」


 パウルの言葉が理解できたわけではなかっただろうが、オーガの1匹が地面に置かれた赤ん坊に手を伸ばした。そしてあろうことか、片手で持ち上げると、赤ん坊を突き出すようにしながら第六小隊に襲いかかってくる。

 マルコが棍棒を躱し、殴ろうとすると、赤ん坊が突き出される。


「こいつ、赤ん坊を盾に!」


 マルコが殴るのを躊躇(ためら)ったのを見て、他の2匹も赤ん坊を手にして襲いかかってきた。


「畜生どもめ! 少尉! こいつらに情を期待するのは無駄です!」


 赤ん坊を盾に襲い掛かってくるオーガたちに対して、第六小隊は後退を続けるしかない。しかし後方は炎に包まれており、いかにドレスの耐熱性能が高いとは言え、いつまでも炎の中にいられるわけではない。

 ここが限界だ。司令官に連絡を取って直接命令をもらうべきだ。

 マルコがそう判断した時だった。


「総員、撃ちなさい」


「赤ん坊は!?」


「言わせないで! いいえ、赤ちゃんも、よ。オーガは殲滅なさい!」


「了解!」


 第六小隊は背中から銃を抜いて一斉にオーガたちを撃った。一瞬でオーガたちは肉片に変わり、吹き飛ばされる。彼らが手にした赤ん坊も同様だった。

 銃声が止むと、後には残された1匹の赤ん坊の泣きわめく声だけが辺りに響いていた。

 少隊員たちはお互いの顔を見合わせる。今の攻撃は自分たちの身を守るためだった。だが少尉の命令はオーガを殲滅することで、そこには当然泣きわめく赤ん坊も含まれている。

 確認を取るべきか一瞬だけ迷って、マルコはそうしないことに決めた。


「俺がやる」


 そう言ってマルコは赤ん坊の傍に立つと、その頭部にストッパーを向けた。

 悪く思うなよ。オーガに生まれたのが運の尽きだったんだ。

 引き金を引いた。

 赤ん坊の泣き声は止んだ。


「――第六小隊、遅れているぞ。何か問題でもあったか?」


 ルフト司令官の声が耳元で響いた。


「いいえ、司令官。問題はありません」


「マルコ軍曹、君には聞いていない。デボラ少尉、何か問題が?」


「……いいえ、司令官。軍曹の言うとおりです。問題はたった今なくなりました」


 デボラ少尉の返答は泣き声になりそうなのを噛み殺した、そんな声だったが、ルフト司令官はそのことに突っ込んで聞いてはこなかった。


「第六小隊は予定より10%も遅れている。遅れを取り戻すんだ。いいな?」


「了解しました。司令官。――聞いての通りよ、みんな、先を急ぎましょう」


「命令だ。第六小隊前進!」


 そして第六小隊は先に進み、炎の中にはオーガたちの死体が取り残された。

 全てが燃え落ちていく。

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異世界転移ものの新作を始めました。
ゲーム化した現代日本と、別のゲーム世界とを行き来できるようになった主人公が女の子とイチャイチャしたり、お仕事したり、冒険したり、イチャイチャする話です。
1話1000~2000文字の気軽に読める異世界ファンタジー作品となっております。
どうぞよろしくお願いいたします。

異世界現代あっちこっち
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