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彷徨のレギンレイヴ  作者: 二上たいら
第二部 第一章 幽霊部隊

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第十四話 統合基地奪還戦 その2

 実を言えばこの統合基地奪還作戦には作戦と言えるような作戦はない。

 管理者やレギンレイヴは過去の戦術データから、様々な提案をしてきたが、それを聞く人間側に軍事の専門家がおらず、複雑な作戦はかえって足並みを乱すだろうと判断されたからだ。

 あくまで目的はガーゲルン統合基地に居を構えたオーガたちを追い出すことであり、1匹残らず包囲殲滅するというわけでもない。

 そうであれば圧倒的な戦力を有する――はず――の幽霊部隊による単純な攻撃だけで事足りるであろうというわけだ。


 降下し始めたシャトル2機はガーゲルン統合基地を飛び越えて、500メートルほど離れた平地に垂直着陸した。それと同時にハッチが開き、シートベルトを外した兵士たちが次々にシャトルから降り立っていく。


「第六小隊、順番だ! いいですね。少尉」


「ええ、総員降機して」


 緊張しているのか少し震えた声でデボラ少尉が応じる。

 マルコはデボラ少尉との専用チャンネルを開いた。


「緊張していますか、少尉」


「ええ、とってもね」


「心配することはありませんよ。オーガなんぞ近づいてくる前にズドンで終わりです。だから落ち着いて、不安さを表に出さないようにしてください。上官が不安がっていると部下にも伝播します」


「そう、そうね。気をつけるわ。ありがとう、軍曹」


「どういたしまして、少尉」


 少しは気が紛れたのか、最後の方の声は震えてはいなかった。ひとまずこれでデボラ少尉は大丈夫だろう。

 第六小隊は地面に降り立つと、指定された位置についた。

 最初の陣形は八個小隊80名で作る長い横列だ。それでもオーガの大集落の規模からすると小さな線に過ぎない。

 全員が降機したことを確認すると、シャトルはハッチを閉じて垂直離陸して上昇していく。彼らのこれからの役目は上空から戦域を監視して、そのデータを送り続けることだ。


「総員進軍開始!」


 ルフト司令官の声が共通チャンネルで流れてきて、マルコたちは進軍を開始した。

 100メートルも進まないうちに、武装したオーガたちがやってくるのが目に入ってくる。シャトルが降下したのを見て様子を見に来たのだろうか。その数は数百ほどに見えた。

 彼我の距離はまだ300メートルほど離れている。

 ドレスの望遠機能を有効化して、オーガたちの様子を見ると、異様に興奮して手にした武器を振りかざしている。しかしそのほとんどが木の棍棒だ。中には棍棒の先に石を括りつけたものを手にしている者もいるが、その程度だ。


「進軍停止、射撃を許可する」


 彼我の距離は200メートルを切った辺りだった。オーガたちの雄叫びがようやく聞こえてきた辺りだ。兵士たちは足を止め、それぞれの武器を構えた。

 マルコもストッパーを構える。弾種は炸裂弾を選択、フルオートだ。

 最初の銃声を響かせたのは第六小隊ではなかった。銃声すらなかった。最初に攻撃を行ったのがレーザー銃を持った兵士だったからだ。

 レーザーにより胸元を撃ち抜かれたオーガの巨体が、体に穴を空けながら後ろに吹っ飛ぶ。高出力レーザーはその1匹だけでなくオーガ数匹を一発で貫通した。

 さらに射撃が開始され、銃弾が、炸裂弾が、レーザーがオーガたち目掛けて降り注ぐ。


「射撃開始!」


 ここに来てようやくデボラ少尉が射撃命令を出し、他の隊に少し遅れて第六小隊も射撃を開始した。炸裂弾による爆発でもうもうと土煙が上がっていたが、ドレスは映像に赤外線映像を重ねて表示し、その向こう側にいるオーガの姿を表わす。

 マルコはできるだけオーガが集まっているところを狙って炸裂弾を発射する。赤いシルエットとしてしか見えないオーガたちがばたばたとなぎ倒されていく。


「射撃中止!」


 ルフト司令官の命令が下って、兵士たちは一斉に射撃を止めた。

 兵士たちは隊列を維持したまま、土煙が収まるのを待つ。赤外線表示によると立っているオーガは1匹もいない。上空で浮遊しているシャトルからの映像は、土煙の向こう側で集落に逃げ帰ろうとするオーガ数匹を捉えているが、ルフト司令官は追撃命令を出すつもりはないようだ。

 やがて土煙が晴れて、マルコたちは自分たちがやったことの結果をはっきりと見た。200メートル先の地面に倒れ、あるいはバラバラになって、緑色の血を撒き散らしているオーガたちの死体の山だ。


「おお――!」


 誰かの声をマイクが拾ってマルコの耳元で響いた。それからあちこちで歓声が上がり、兵士たちは銃器を振り上げて、最初の勝利を祝った。勝利、それも圧倒的な勝利だ。幽霊艦隊での満身創痍での勝利とは違う。彼らが自らの手で武器を扱い、その上で手に入れた勝利だ。

 マルコも気がつけばストッパーを振り上げて、歓声を上げていた。


「……皆、よくやった」


 たっぷりと兵士たちが勝利の余韻を味わう時間を取ってからルフト司令官が言った。


「次は本格的な攻勢を仕掛けてくるだろう。それをここで迎え撃つ。方陣を組め」


 兵士たちは規律の取れた動きで素早く方陣を組んだ。マルコの第六小隊は後方右面だ。前方でないのが心惜しいが、後方にも陣を敷くのは当然のことだろう。

 シャトルからの映像はオーガの集落が大騒ぎになっているのを捉えている。しかし闇雲に攻めてくるわけではないようだ。マーヤの言った通り知能の高い、指導者的オーガの存在を感じさせる動きだ。

 オーガたちは武器を手に続々と集落の南側に集結している。その数は数千、ひょっとすると万に届くかもしれない数になりつつあった。それでもなおその数は増え続けている。

 偵察によるオーガの戦力分析に誤りがあったのだろうとマルコは思う。

 映像に映るオーガは雄だけでなく、雌や子どもの姿も見える。まさに総力戦だ。奴らには雄が戦って、雌や子どもを守るという概念が無いのだろうか。それとも本能的に集落の存亡の危機だと理解しているのか。


(敵戦力の総数4万超と推測されます)


 それは七塔都市の総人口を超える数だ。一個の都市の人口に匹敵する数の敵がこれから押し寄せてくる。そう考えると流石にマルコの背筋にも冷たいものが這い上がってきた。

 しかしそれも杞憂に過ぎなかった。


「航空隊、攻撃を開始せよ」


 オーガたちがまさに総集結したそのタイミングでルフト司令官が命令を下した。するとそれまで上空を旋回していた77式が2つの四角型の隊列で急降下してきて、オーガの群れに向かって機関砲をぶっ放した。機関砲弾を浴びたオーガたちがバラバラに吹き飛ばされて、緑色の血しぶきが上がる。

 一度の掃射で千匹以上のオーガが肉片に変わった。掃射を終えた77式の編隊はぐるりと弧を描いて、再び機銃掃射の体勢に入る。

 オーガたちは慌ててこちらに向けて駈け出し始めた。そこに容赦なく77式の機銃掃射が襲いかかる。オーガたちの群れが広がったこともあって、先ほどのような効果は得られなかったが、それでも数百匹のオーガが肉片になる。


「77だけで充分だったんじゃないかな?」


 隣りにいるユリアンのそんな呟きが聞こえた。マルコもまったく同意だった。

 77式の機銃掃射に追い立てられるように走ってきたオーガたちが、方陣前方の部隊の射程距離に入る。


「射撃開始!」


 容赦なくルフト司令官が命じ、再び兵士たちによる射撃が始まった。しかしオーガの群れは大きく、方陣前方の射程外からも後方に向けて回りこんでくる。


「そら、俺たちの出番だ」


「射撃開始して!」


 デボラ少尉の命令が下って、マルコたちも射撃を開始した。炸裂弾によって土煙が上がる中を、死体の山を踏み越えて次々とオーガが接近してくる。


「連中、恐れってものを知らないのか!?」


 デニスが軽機関銃を撃ちまくりながら叫んだ。死体の山を踏み越えようとしたしたオーガが銃弾を食らって、山の一部となる。そんな様子を見ていれば、誰だって同じことを思うだろう。

 屍山血河を築きながら、その山を遮蔽壁としてオーガたちは徐々に方陣に近づきつつあった。しかしそれが彼らの精一杯でもあった。エーテルによって無尽蔵に生成される銃弾と、砲身を自動的に冷やす冷却機能のおかげで、マルコたちの射撃が止まることはない。

 1時間にも満たない時間でオーガたちの攻勢は終わり、残ったわずかなオーガは撤退を開始した。


「追撃するぞ! 各小隊ごとに攻め込め。集落は焼き払うんだ」


 ルフト司令官の命令のもと方陣は解かれ、オーガへの追撃戦が始まった。

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異世界転移ものの新作を始めました。
ゲーム化した現代日本と、別のゲーム世界とを行き来できるようになった主人公が女の子とイチャイチャしたり、お仕事したり、冒険したり、イチャイチャする話です。
1話1000~2000文字の気軽に読める異世界ファンタジー作品となっております。
どうぞよろしくお願いいたします。

異世界現代あっちこっち
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