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彷徨のレギンレイヴ  作者: 二上たいら
第一部 第四章 ゴルニ=クリポス

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第四話 浮遊遺物とは

 観測所はこれまでに見たどの部屋とも違っていた。

 俺がこれまでに見てきた部屋の中でもっとも近いものを上げるとしたら、長椅子の並ぶ教会だろうか。

 無数の椅子とデスクが整然と並んでいて、全てが奥の壁に向いている。

 俺が入ってきた扉は部屋の中でも中央で、他の場所より幾分か高い位置にあり、その先には椅子と、真っ黒いデスクがあった。


「司令官、お席へどうぞ」


「分かりました」


 その先にあった椅子に腰掛ける。

 大人用の椅子のため、俺の身長ではデスクがやや見づらい。


「では観測装置を停滞状態から復帰させたいと思います。司令官、許可を」


「ええと、許可します」


 次の瞬間、部屋中がぱぁっと明るくなった。

 灯りが強くなったのではない。

 これまで壁だと思っていた場所や、デスクが一斉に光り出し、なにかを描き出しているのだ。


『これは、空図――?』


 壁に描かれていくその図形は、俺の記憶が正しければエルネ=デル=スニア周辺を含む空図で間違いないはずだ。

 それ以外にも無数の図形が表示されているが、理解できそうなのはそれだけだ。

 その空図も表示される範囲が広くなるにしたがってどんどんと小さくなっていき、今ではエルネ=デル=スニアがどこにあるのかも分からなくなってしまった。


「司令本部とのデータリンク確立できませんでした。他観測基地ともデータリンク不能。衛星もすべて停滞状態と推測されます。外宇宙探査機群からの|ビーコン確認。稼働率17%、上昇中。信号はすべて緑色」


「つまりどういうことですか?」


「今のところは問題はないということです。惑星の角度のために受信できないビーコンの分はなんとも言えません」


 じりじりと上がっていくメーターがある。

 あれがおそらく外宇宙探査機群とやらからのビーコン受信率を示しているのだろう。と、思ってみたが、自分でも何を言ってるのかよく分からない。

 そもそもビーコンってなんだ?


(ビーコンとは無線標識のことです)


 その無線標識ってのも分からないんだよなあ。


(一種の狼煙のようなものです。緑色は正常であることを示します)


 そう言えばアインホルンの計器も緑色は正常の範囲であることを示していたっけ。

 つまり赤色になったら不味いのだろう。


(その認識で間違いありません)


 ところで俺は今、エルネ=デル=スニアの言語で物事を考えているんだけど、どうしてレギンレイヴは返答できるんだ?


(思考そのものを認識しているため、言語には左右されません)


 つまりこうやって王国の言葉で考えても理解できるってこと?


(はい。理解可能です)


 すごいな、レギンレイヴは。

 俺なんてひとつの言語を習得するのに何ヶ月もかかったのに、レギンレイヴはその必要すらないのだ。

 じゃあ、ここの言語で俺が詰まるようなことがあったらレギンレイヴは手助けできるってことかな?


(必要とあればそうさせていただきます)


 それじゃあその時はよろしく頼む。

 俺とレギンレイヴがそんなやり取りをしている間にも、空図の範囲は拡張されていき、ビーコンの受信率も徐々にではあるが上がっている。


「えっと、管理者さん、私はいつまでここにいればいいですか?」


「観測が完了、あるいは問題が発生した場合はすぐにお知らせします。司令官はご自由にして頂いて結構です」


「自由、自由ですか」


 そう言われても冬の間はここに閉じ込められていることになる。


(どうしてですか?)


 そりゃ冬の間は七塔都市に向かうにしても雪の山岳地帯を突っ切ることになるからだ。

 その危険性はもう嫌というほど思い知った。

 ここで安全に春になるのを待つことができるのならそれに越したことはない。


(そうとも限りません。この基地にはいくつもの移動手段があります。陸地を行くのが危険なのであれば空を飛べばいいのではないでしょうか?)


 空! 浮遊船がここにはあるのか!?


(浮遊船とは異なりますが、浮遊船の基礎になっている浮遊遺物とお考えになっているものなら、いくつも存在します)


 浮遊遺物だって!?

 浮遊遺物ってお前たちからしたらなんなんだ?


(その認識をひとまとめにするのは難しいですが、エーテル上で浮遊するよう設定されたまま停滞状態に置かれた装置群というべきでしょうか。乗り物として使用する際、お1人でしたら多目的戦闘機をおすすめします)


 それを使えば空を飛んでいけるってことか。


(はい。しかし操縦には訓練を要します。基地内にはシミュレーターがありますので、その利用をおすすめします)


 分かった。案内してくれ。


「管理者さん。私は多目的戦闘機の訓練をしようと思います」


「承知しました。案内は――レギンレイヴがするようですね。ご健闘を」


「ありがとうございます」


(それではご案内致します。視覚に直接経路を表示します)


 レギンレイヴがそう言った途端、目の前に半透明の矢印が浮かんだ。

 床に表示される青いラインではない。

 空中に矢印が生まれたのだ。


(どうぞ、案内に従ってください)


 もう大抵のことでは驚かない。

 こんなこともあるんだろう、くらいの気持ちだ。

 俺は矢印に従って観測室を後にし、基地内をしばらく歩いた。

 やがてある部屋に矢印は向かい、俺はその部屋に入る。

 部屋の中にはいくつもの四角い箱が並んでいる。

 そのうちのひとつが音を立てて開いた。


(中にどうぞ)


 箱の中には座席があって、無数のスイッチやボタンがある。

 俺が座席に座ると、箱は閉まり、内部が明るくなる。


(それでは訓練を始めます。まずはすべての計器とスイッチ、その役割を覚えてください)


 マジかよ。

 マジだった。

第五話の投稿は7月14日18時となります。

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異世界転移ものの新作を始めました。
ゲーム化した現代日本と、別のゲーム世界とを行き来できるようになった主人公が女の子とイチャイチャしたり、お仕事したり、冒険したり、イチャイチャする話です。
1話1000~2000文字の気軽に読める異世界ファンタジー作品となっております。
どうぞよろしくお願いいたします。

異世界現代あっちこっち
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