フロム トゥ ロスト ホワイトスキン フォア ジェノサイド
君に似ている瞳をしているね。
君は誰だ。君こそ誰なんだ。君は何も知っちゃいないさ。
君の瞳に通う血の流れには、きっと数々の苦難が溶け込んでいる。
僕はそれを鼻で笑う。
昼にしか生きられない吸血鬼のように。
満月の下でしか人でいられない狼男のように。
腕を伸ばしたら塵になるキョンシーのように。
42度のお風呂が好きな雪女のように生きる。
死は身近ですか? そんな訳ない。
死が身近なら、死ぬのが怖いはずがないじゃないか。
怖いものは皆、身近じゃないから怖いんだ。
まぁ確かに、ありふれた蜘蛛が怖いっていうのも分かる。
けれど、ありふれた死に意味なんてないんだよ。
人の価値観は人によって定められる。
自らもまた然り。
変態的な妄想を以てして、綺麗な顔の彼は電車に轢かれる。
鶏の首を加えた烏に罪はあるだろうか? 知恵のない罪は罪じゃないのか?
君だってそうじゃないか。
知恵のない罪。罪。意識を持たない罪。ひとり歩きする罪。
又は、欲。理性を伴わない欲。月に踊らされる欲。
君の香りはとても目障りだ。
僕の世界はとてもちっぽけだ。弱い。なにより、狭い。
その狭さが心地いいと思っている時点で、僕は終わりなんだよ。
君はどうだい。君の世界は心地いいかな。
ぬるま湯が心地いいのは、きっと悪魔の所為だよ。
お湯が熱いのは、きっと神様の所為だ。
そよ風が心地いいのは、きっと悪魔の所為。
台風が息苦しいのは、きっと神様の所為だ。
君の瞳が綺麗なのは、きっと僕の所為なんだろうな。