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こんな夢を観た

こんな夢を観た「逃走する自転車」

作者: 夢野彼方
掲載日:2014/04/29

 繁華街で突然、大声が響いた。

「誰かっ、あの自転車を捕まえてくれっ!」


 振り返ると、この人混みの中を、自転車が猛スピードで逃げていく。後ろ姿なのではっきりしないが、男であることは間違いない。

 周辺はたちまち物々しい雰囲気となり、買い物客も通行人も、一斉に足を止めて様子をうかがっていた。

 どうやら、重大な犯罪をやらかしたらしい。


 その場にいた青年が携帯を耳に当て、緊張した面持ちで何か話している。警察に通報しているようだ。しかし、焦っているせいか、要領を得ない。相手から何度となく、状況の確認を求められているのが見てとれた。

「ですから、逃げていったんです。はい? いえ、そうじゃなく、自転車がです。えっ? 違う違う、自転車の盗難じゃなくてですね……ええ、はい。そうです、犯人です。犯人が、自転車に乗ってですよっ!」


 そこへ30代半ばの男がやって来て、集まっている人に向かって言った。

「あのう、ぼく、非番の郵便配達員なんですが、その逃げていった犯人を捕まえてきますよ。これも郵便局員の仕事だと思いますので」

 たまたま居あわせたバイク屋の店主が、

「なら、うちのバイクを使ってくれ。なぁに、ぶっ壊したってかまわねえ。あんたの心意気に惚れちまったのさ」と申し出る。

 郵便配達員は礼を言うと、ショー・ウィンドウに飾られていた、スズキ・ハヤブサにさっそうとまたがった。彼の目つきがキリッと引き締まる。


 リア・タイヤに白煙を絡ませながら、ハヤブサが店から飛び出してきた。わたしの目の前で停めると、

「乗らないか」と、手を差し伸べる。

「えっ、わたし?」わたしは戸惑いつつも、思わずその手を取って、あっというまにタンデム・シートに乗せられていた。

「つかまってっ!」郵便配達員が言う。

「あ、はいっ」

 ものすごい加速で、ハヤブサは商店街を走り始めた。


 ものの数秒で、逃走する自転車に追いついてしまう。

「おらおらおらっ、待てや、この犯罪者めっ!」郵便配達員の怒号が飛ぶ。反射的に振り返った自転車の男は、真後ろを最速のバイクがぴったりとつけているのに気づき、よほどたまげたと見える。ハンドル操作を誤り、そのまま練り物屋に突っ込んでしまった。

 呆然と座りこんだ男の頭には、はんぺんとこんにゃくがきれいに積み重なっていて、片方の鼻の穴にはごぼう巻きが詰まっている。

 観念したらしく、正座をし、黙ってがんもどきを囓り始めた。

 わたし達はバイクを降り、その場で警察に連絡をした。


「で、あんた、何をやらかしたんだ?」郵便配達員が問いただす。

「手を洗わなかった……」ぼそっと答える。

「は? なんだって?」

「トイレから出た後、手を洗わなかったんだよ」

「それだけか? 他にも隠してるだろう?」と郵便配達員。

「……おれ、寿司屋やってんだけど、トイレ行って、手を洗わなかったんだ。そしたら、客にばれちまってよ。で、逃げたってわけよ」


 郵便配達員は、彼の頭を平手でパンッとはたいた。

「公衆衛生隠匿罪は大罪だぞ、おいっ!」

 わたしも同意し、何度もうんうん、とうなずくのだった。 

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― 新着の感想 ―
[一言] 実際にこのような夢見たんですか? うらやましいです! 僕はアイデアを取り入れようとするだけで心労するくらい、ハチャメチャな夢ばかりなので……。 連携プレイカッコイイ! なぜ郵便の人は『わたし…
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