魔国Dark Side スナイパー⑧
ナ『青年と少女は服を買いに街へ出ました。灰色の狭い空。灰色の高い建物。少女は暗い気持ちになりました』
妹「なんでこんな暗いの?」
青年「それはここがゴミ溜めだからじゃないかな? あ、ほら帽子かぶって。顔見せちゃだめだよ?」
妹「はい」
青年「僕から離れない。僕以外と話さない。わかった? はぐれても探さないよ? 死んでも知らないからね?」
妹「わかってる」
青年「よし、じゃぁいこう」
ナ『青年は少女の手を取って歩き出しました。はたから見れば、仲の良い兄弟に見えることでしょう。髪を短くし、男物の服を着た少女は少年にしか見えません』
妹「ゴミ溜めって何?」
青年「社会のゴミだよ。生きる価値もないの、僕ら」
妹「……」
青年「犯罪者、金のない浮浪者、親に見捨てられた子供たち。社会から要らないって言われるやつら。僕も含めてね」
妹「なんで?」
青年「受け入れてもらえないから」
妹「なんで?」
青年「んー、少しでも自分と違うものは弾きたくなるもんだよ。あと役立たず。そんなの人間も魔族も変わらないだろう?」
妹「……そうね」
ナ『少女は母から、お前が一番役に立たないと言われて、だからひどい扱いを受けたのを思い出しました』
青年「……さぁて、と、子供服ってどこに売ってるのかな……」
妹「知らないで出てきたの!?」
青年「いや、だって、子供服なんて買わないでしょ?」
妹「そうだろうけど!!」
青年「ま、まぁ、何とかなると思う」
妹「ホントかな!?」
青年「……ツッコみ切れっキレだね!!」
妹「誰のせいなのかな!?」
青年「ごめん僕だわ!!」
妹「だよね!!」
ナ『なんか、場所に似つかないハイテンション&コントですね……』
青年「悪かったね!!」
妹「誰がコントよ!!」
青年&妹「って、何が?」
ナ『ふ、服はなんとかなりました。なんでも屋さんのような怪しい店でいろいろ入手』
妹「……これ、盗品?」
青年「さ、さぁ? さすがに僕でもこんなのわからないや。てか、こんな服くらい盗まれてもそうそう騒がないし……」
妹「なるほど。ま、まぁ、いいや」
青年「……前から思ってたけど、君本当図太いよね……神経?」
妹「前から思ってたけど、デリカシーないよね、お兄さん」
青年「……返しも鋭いし……いい暗殺者になるよ」
妹「関係なくない?」
ナ『そうして帰り道……』
青年「あ、寄るところあるから一緒に行くよ」
妹「はい」
青年「ついでになんか見てこようか」
妹「え?」
青年「僕のもってるのじゃ、きっと君の手に余るでしょ。銃」
妹「……」
青年「いきなり人殺せとか言わないから安心して?」
妹「いつか殺せって言うならどうしても安心できない」
青年「そうだね」
妹「……」
ナ『青年は少女を連れてまたもや怪しげな店へ』
青年「できてる?」
店主「もちろん」
青年「さっすがぁ。で、この子に使えそうなやつとかある?」
店主「あ? なんだ、まだガキじゃねぇか」
青年「そうそう。だからだよ」
店主「ねぇなぁ。魔法道具とかじゃねぇとダメなんじゃねぇ? 腕だって細いし、女みてえじゃねぇか。ちゃんと飯食わせてんのか? 銃使わせんなら……」
青年「分かってるよ! 拾ったのは最近なの。まだ成長途中!」
店主「おぉ、そうかい。だったら成長してからまたきな。今のまんまじゃ腕とぶぞ」
青年「ちぇー」
店主「おら、それ持ってとっとと帰んな!」
青年「おーけー。またよろしくね~」
店主「おうよ」
ナ『青年は黒い銃を受け取って、帰途につきました』
青年「~♪」
妹「楽しそう?」
青年「そう?」
ナ『青年は銃を手の中で弄びながらそう聞き返しました』
青年「そうだね。これは大事なものだから」
妹「ふうん……」
青年「……」
妹「……」
ナ『しばらく無言で歩きました。この街は、狭くて入り組んだ路地ばかりです。大通りなんて無いようでした』
青年「……? ……ぁ……♪」
妹「何? いきなりニヤニヤ度が増したよ?」
青年「ニヤニヤ度ってなに……」
妹「そのまま」
青年「……まぁ、いいよ。こっちおいで」
妹「え? ビルと真逆じゃないの?」
青年「方向感覚イイね。でも、いいからこっち」
ナ『元から路地裏のようだった場所からさらに裏に入り、どんどん奥に進んでいきます』
妹「ちょ、ちょっと!?」
青年「俺さ、暗殺者なんだよね」
妹「え、知ってるよ?」(俺?)
青年「だからね、よぉく、恨まれるんだ。殺してほしいと思われてる、恨まれてるやつを殺したよ? でもね、そんな奴でも敵討ちしてくれる人がよくいるんだよね」
妹「え、えぇ?」
青年「だーかーらー、俺は、命狙われてるのぉ?」
ナ『青年は突然振り向き、銃を撃ちました)
妹「!?」
ばんばんばんっ……どさっ
ナ『なった音は三。そのうちの一つが当たったのか、ビルのガラスがない窓から体が落ちてきました』
妹「っ!?」
青年「あはっ、いちにいさんしぃご、五人か。あ、もう二人?」
ナ『あたりに立ち込め始めた濃密な血の香り。死の予感』
青年「出てきなよ? ばれてるよ?」
ナ『青年はとても楽しそうに、笑って、相手を挑発します』
妹「……」
青年「っ」
ばんばんっ
青年「よわぁ。まぁ、どうでもいいや。うんうん、銃完璧に直ってる♪」
ナ『青年はつまらなさそうに、つぶやいて、少女を振り返りました』
青年「よく叫ばなかったね? きゃーって、叫ぶと思ってた」
ナ『青年の顔はずっと笑顔。崩れることはありません。困ったように歪められても、つまらなそうに眉をひそめても、それでもずっと笑顔でした。殺した時も、冷たいけれど、笑顔でした』
妹「……ぁ……」
青年「あれ? 声が出ないだけ?」
妹「ころ、したの……?」
ナ『見える位置には二人の死体。一つは上から落ちてきたためにぐじゃりとつぶれています』
青年「他に何に見える? 俺……僕凄腕だから、一発で仕留めるよ?」
妹「……っぁ、はぁっ、はぁっ……」
青年「って、またやりすぎた!? ごめん!」
ナ『さっきまでの冷たさはない、普通の笑顔。笑顔を張り付けた普通の顔でした』
妹「……だ、いじょう、ぶ……」
青年「……ほっ……」
妹「……全員、殺してもよかったの?」
青年「え? あ、あぁ!? やっちゃった……でもいいや。依頼主がまたやっても、これくらいじゃ気になんないし」
妹「……」
青年「って、え、あれ? ちょっと?」
妹「…………」ふらぁ
青年「わー!! やっぱ無理なんじゃないかー!!」
妹(最近よく気ぃ失ってるな……)
ナ『と、いうことで、またもや少女は意識を手放しました』




