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怨霊転生(グランドフィナーレ:永遠の凪、光の子供たち)

北海道の深緑:新居の視察と、高マッハのペガサス

東京の高級マンションを引き払い、キョムと歩花は、新たなる「終の棲家ついのすみか」を求めて、新婚旅行を兼ねた視察へと訪れていた。  行き先は、地平線まで続く広大な緑の絨毯――北海道の大規模牧場跡地。

「……ここなら、おばあちゃんも思いっきり走り回れますね、キョムさん!」

歩花が、澄み切った北の大地の空気を胸いっぱいに吸い込み、満面の笑みを浮かべた。  歩花の言葉通り、日本へと帰還後、霊体であったおばあちゃんは、この清浄な世界の魔素(瘴気が消え去った純粋な大気)に触れたことで、なんと再び**「実体化した聖なるペガサス」**へと完全復活を果たしていたのだ。

実体化したおばあちゃんペガサス(純白の巨体)を飼育するには、東京の高級マンションではあまりにも手狭。巨大な馬小屋と、彼女が羽ばたくための広大な土地が、物理的に必要不可欠であった。

おばあちゃんと言えば、実体化後はさらにパワーアップしており、現代の最新鋭戦闘機すら追いつけない**「高マッハ速度」で世界中の上空を飛び回り、果ては高度数百キロの「宇宙空間」**にまで到達。危うく国際宇宙ステーション(ISS)のカメラにバッチリ映り込み、世界中で「謎の白い未確認飛行物体(UFO)」としてニュースになりそうになっていた。

『はっはっは! この世界の空気は、実に美味いねぇ! 宇宙の果てまでひとっ飛びさ!』

遠くの丘の上で、おばあちゃんペガサスが豪快にいななき、純白の翼を羽ばたかせて、北の大地を風のように駆け抜けている。


膝枕の誓い:孤独の終わり、光の予感

視察に訪れた牧場の、誰もいない静かな草原。  キョムと歩花は、柔らかな草の上に座り込み、おばあちゃんの雄姿を眺めていた。

ふと、歩花が顔を真っ赤にして、隣に座るキョムを見つめた。  そして、照れくさそうに、自分の膝をポンポンと手で叩く。

「……キョムさん。あの、もしよかったら、どうぞ」

膝枕の提案。キョムは無表情のまま、少しだけ驚いたように目を細め、ぎこちない動作で頭を歩花の柔らかな膝の上へと乗せた。

歩花の膝から伝わる、温かくて、桜のような、優しい匂い。  キョムは歩花の顔を見上げ、彼女の様子を伺いながら、前世の孤独な怨霊時代から、そしてこの異世界への旅を通じて、ずっと胸の奥底に秘めていた「たいたかった言葉」を、たどたどしく口にした。

「……歩花」

「はい、キョムさん?」  歩花が、赤い顔をさらに赤くして、優しく微笑む。

「……あのさ。実は、一人で……孤独な時が、あまりにも長かったから」

キョムは、自分の右手を見つめ、静かに言葉を紡いだ。

「……子供は、できるだけ、多くほしいんだ」

孤独の果てに何もない虚無となった男が、初めて口にした、人間としての、剥き出しの「生の渇望」。

「……多く、ですか?」  歩花が、目を丸くして、赤い顔をさらに真っ赤に染めて聞き返した。

キョムは無言で、コクリと頷いた。

草原に、穏やかな風が吹き抜け、二人の間に静かで、温かい沈黙が流れる。  多く、の子供たち。それは、キョムの孤独を埋めるための存在ではなく、彼らがこの世界で生きた証、そして、歩花との愛の結晶。


永遠の凪:光の循環、普通の男

やがて、北の大地の穏やかな日差しに誘われて、キョムは心地よい眠りに落ちた。  前世のあのカビ臭いアパートでも、異世界の戦場でも味わえなかった、泥のような、だが何よりも安らかな、魂の休息。

「ニャァウ(猫も眠いのだ)」

キョムの懐手には、いつの間にか白猫のニャメが丸くなり、ゴロゴロと喉を鳴らして眠っていた。  今では普通の猫の姿に戻ったニャメだが、心地よい眠りの中、その純白の尻尾が、パカっと音を立てて**「二つ」**に分かれる。神獣としての本性は、この平和な世界でも、キョムの側で静かに息づいていた。

「子供、たくさん……。ふふ、賑やかになりますね……」

歩花もいつしか、キョムの頭を撫でながら、うとうとと心地よい眠りに落ち、幸せそうな寝言をつぶやいた。

北の大地の地平線へ、夕陽が静かに沈んでいく。  キョムを枕にして眠る歩花、懐のニャメ、丘の上を駆けるおばあちゃんペガサス。

その穏やかな眠りの中、キョム自身も気付かないまま。  孤独な怨霊の証であった、彼の体内の広大なブラックホール(虚無)が、歩花の温もり、ニャメの気配、そしておばあちゃんの嘶き、この世界への愛という、目に見えない**「温かい光」**によって、少しずつ、少しずつ、音もなく埋められていく。

虚無が光で埋まった時、キョムは本当の「普通の男」に戻る。  何もない孤独な男が、すべてを手に入れた、ただの幸せな男に。


『怨霊転生』、これにて堂々の完結となります! 最後までお付き合いいただき、本当に、本当にありがとうございました……!

孤独だったキョムが、歩花やニャメ、おばあちゃんと共に、温かい北海道での幸せな「普通の男の日常」を手に入れ、 ビビろうが異世界でまさかの大出世を果たし、コンタが新たな魔王を目指す――。 それぞれが自分たちの選んだ道で幸せになる、最高のハッピーエンドを描くことができました。

読者の皆様の温かい応援があったからこそ、この不条理で愛おしいキャラクターたちの旅を最後まで走り抜けることができました。

もしよろしければ、読後のご感想や、完結記念の【星評価】などをポチッと押していただけますと、作者が画面の前でコンタのように飛び跳ねて喜びます!

またどこかの物語でお会いしましょう。本当にありがとうございました!


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