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ストーリーゼロ1(孤独のノイズ)

初めまして、作者です! 本作を開いていただき、誠にありがとうございます。

この物語は、孤独な怨霊となった男と、世界一臆病な男が、ひょんなことから異世界に転生し、カオスで最強な仲間たちと出会う物語です。 無表情な主人公の無双バトル、聖女のフライパン無双、そして少し笑えるギャグをお楽しみください!

少しでも「面白いな」と思っていただけたら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(星・いいね)】で応援していただけると、執筆の大きな励みになります! それでは、異世界転生ファンタジー『怨霊転生』をお楽しみください!


「自分は何でカッコ良くないんだろう。センスも才能も、取り柄も一つもない。せめて夢のような運でもあれば……俺は、何のために生きてるんだろう」

いい歳の大人が、子供の頃と同じことを思ってしまう。口に出せば、同じ穴のむじなのくせに見下し、笑われるから誰も言わないだけだ。まるでババ抜きだ。全員の手元に一度はジョーカーが巡ってきたくせに、最後にそれを持っていた者だけを敗者にして勝ち誇る。胸糞が悪い。

まあ、それが「普通の人間の世界」なのだろう。そんな俺でも世間からドロップアウトするわけではなく、嫌な会社を辞めもせず、普通の仕事をこなし、普通の給料をもらい、中流とも下流ともつかない、他と大差ない生活を送ってきた。

あれから、もう一年が経つ。

結婚して三年目、新しい家を建てた。その頃は、俺にも人並みの幸せがあるのだと、地味ながらしみじみと思ったものだ。だが、家を建ててから妻との仲が上手くいかなくなり、修復できないまま一年前、離婚に至った。 俺が家を出た。ローンの問題もあり、向こうが親と同居して残りを払うという話になった。男として情けない部分もあるが、男一人、何とでもなると思って身一つで家を出た。

不動産屋を回り、相場よりかなり安い古いマンションの一室を見つけた。担当の良心的なおじいちゃんは、そこが「事故物件」であることを包み隠さず話してくれた。 自分でも調べてみると、それは少し前に世間を騒がせた事件だった。事件性ははっきりせず、病死か事故死か、とにかく住人が「不審死」を遂げた部屋。 亡くなったのは俺と同じ三十代の男性で、死因は餓死。両足のすねを複雑骨折しており、激痛で身動きが取れないまま、誰にも看取られず衰弱死したらしい。凄惨な最期だった。

気味は悪かったが、家賃は半額。嫌ならまた引っ越せばいいと、ビビりでヘタレな俺はその部屋を借りることにした。霊感なんて一度も感じたことはなかったからだ。

それよりも、三十代で家を建て、一年そこらで離婚し、哀愁漂う1DKで一人暮らし。元に戻っただけだと言い聞かせたが、胸にどっと押し寄せたのは、これまでに経験したことのない泥濘ぬめりのような「孤独感」だった。

仕事から帰っても何もやる気が起きない。テレビを見る気にもならないが、静寂に耐えられず、ただテレビのボリュームを上げて孤独のノイズで部屋を満たした。夜中にトイレに起きると、静まり返った部屋で意味もなく落ち込んだ。

そんな時だった。住み始めて一ヶ月ほど経った夜中、外で猫の鳴き声がした。玄関のすぐ前だ。

昔から猫は苦手だった。見る分には可愛いが、子供の頃、親戚の猫を撫でようとして毛を逆立てられ、爪を立てられ、首筋に噛みつかれそうになったトラウマがある。俺と猫は相性が悪い。

だがその夜は違った。底なしの孤独に押しつぶされそうになっていた俺は、藁をも掴む思いでその声にすがりたくなった。なぜか俺の部屋の前だけで鳴くのだ。 ドアを開けて中に入ってこられるのは怖かったので、踏み台を持ってきて玄関横の小窓から覗いてみた。すると、小さな子猫が一生懸命鳴いていた。 家の中にあった魚肉ソーセージをそっと放り投げた。子猫の頭に当たってしまい、びくりと震えて怯えさせてしまったが、しばらくすると警戒しながらも、それを食べ始めた。

愛らしかった。大袈裟ではなく、救われたと思った。

次の日、仕事帰りにキャットフードを買っている自分がいた。その晩も子猫はやってきた。思い切って玄関を開けると、子猫は静かに部屋に入り、嬉しそうに餌を食べ、食べ終わるとまたどこかへ消えていった。 そんな日々が一ヶ月ほど続いた頃、ぱったりと子猫が姿を見せなくなった。一週間が経ち、日曜の休みにただぼんやりと子猫を待っていると、不意に玄関のチャイムが鳴った。

セールスだろうと居留守を使うつもりだったが、人と関わりたい寂しさからドアを開けた。 そこに立っていたのは、二十歳そこそこの見知らぬ若い女性だった。

淡いピンクのワンピースに控えめなフリル、幅広の白い帽子に日傘。古風で、どこか浮世離れした清楚な雰囲気の女性。

「あのう、突然お伺いしてすみません……」彼女は俯きながら言った。「わたし、以前この部屋に住んでいたもので、雪村と申します」

聞けば、あの餓死事件の前にこの部屋に住んでいたのだという。

「実は……猫をお知りになりませんか? 見かけなかったでしょうか」

驚いた。あの子猫は、彼女が住んでいた頃からこの部屋に来ていたのだ。彼女が父親の看病で実家に帰る際、子猫を引き取ろうと探したが、見つからず、その後にあの凄惨な不審死事件が起きて部屋は空き室に。最近になり、意を決してここを訪ねてきたのだという。

子猫の安否を気遣う彼女に、俺は最近の様子を話し、今度子猫が現れたら連絡する約束をした。お互いのスマートフォンを取り出し、LINEを交換することになった。

「あのう、わたし、やり方があまり分からなくて」

彼女が小さな手でスマホを小刻みに振り始めた。まさか……今どき。 「えっ、『ふるふる』ですか?」 「大学の友達に教えてもらって、これしかやったことがないんです」

彼女はスマホを振りながら、小声で「ふるふる」と呟いた。友達に騙されているのだろうが、それがたまらなく愛らしく、吹き出しそうになるのを我慢した。彼女は何も気づかず、にこっと無邪気に微笑んだ。

彼女が帰ったあと、俺の部屋から、あの底冷えするような孤独感は綺麗に消え失せていた。


記念すべき第1話、いかがでしたでしょうか!何も持たない主人公・キョムが、異世界でどんな不条理を巻き起こすのか。楽しんでいただけたら、ぜひブクマや評価をお願いします!


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