◆高校三年の春◆
私
宮下恵美は
当時、女子高に通う高校三年生だった―
『えみチャン先輩!!
起きて下さいー!!
もぉ~また寝てるぅ~』
『んぁ……?』
調理科を専門にしていたその高校は
普通の授業は中学程度の優しい内容だった。
今更、中学の勉強などアホらしくてやってられないと
毎日寝ていた。
しかし
校内模試は三年間1位―
そう。絵に書いたようなアホ高校だった……
その
模試で目立ってたのか
男顔だったからなのか?
何故か私にはファン倶楽部があった
『もぉ~!!起きて下さいよ!!今回の目玉決まったんですよ!!』
彼女は一年生のさやか。
ファン倶楽部の副会長?らしかった
『目玉ぁ……?
次の実習‥目玉焼き‥?』
『もぉ!違いますよ!!
次の夏休み企画の目玉ですよ!!』
『……ああ。何するん?』
さやかは毎月
ファン倶楽部の会報を作っていた。
毎月くじびきで当たった人と写真を取る、
というダルい事をさせられていて
写真の中の私はいつもひきつり笑いだった。
一度
調子に乗って頬にキスしたら
された本人は嬉し泣き、
周りは叫び泣きと阿鼻叫喚。
先生が「なんの騒ぎだ!?」と走ってきて
走って逃げたら
泣きながら皆がついてきて
さらに騒ぎが大きくなってしまった……
『いつもは写真だけど
今回はくじびきで当たった人の家に泊まりに行くんです!!』
さやか……鼻息荒いよ……
内心そう思いながら
『……えー‥?泊まる‥て。それって嬉しいん?』
さやかは目をキラキラ輝かせてさらに続ける
『嬉しいに決まってるじゃないですか!!』
『……う、うん』
さやかがあまりにも嬉しそうに話すから
その時は何も言えなかった
―泊まりて……
何が面白いんだ?
彼女達は一体、何を期待してるんだ???
私には当時
別の高校に彼氏がいた。
ファンと言って懐いてきてくれる子は可愛いとは思っていたが、女の子は恋愛の対象ではなかった。
『かすみ!!』
私は同じクラスの
ファン倶楽部会長の【かすみ】を呼び
小声で言った……
『‥なんかさ。
さやかがとんでもない事言っとんやけど、
どーにかならん?』
『大丈夫!まかせといて!』
かすみは別に私のファンという訳ではないが
一年の時から何故か金魚のフンみたいに
ついてくるから、
一緒にいるのが当たり前になっていたやつだ
ファン倶楽部とやらもこのかすみが作った。
一年と二年が模試発表の紙の前で私の事を噂してるのを見て『それなら一緒にファン倶楽部作ろうよ!』と声をかけたとか。
しかし
人数を集めただけ。
活動自体は一年のさやかが仕切っていて
かすみは何もしていない……
何もしていないかすみの【大丈夫】には
一抹の不安があったが
ま、いっか……
面倒臭いし。
もう考えるのを止め、
また次の退屈な授業が始まる……と、
寝る準備に入ろうとした。
『もぉ!会報に載せるえみちゃん先輩の写真、寝てるやつばっかりじゃないですか!起きて下さいよぉ!』
さやかが耳元で何か言ってるが、
私にはどうでも良かった……
そう……
ファン倶楽部とやらも退屈な学校生活のひとつの遊びで私はただのおもちゃに過ぎない……
しかし、まぁ、
私も退屈だし
遊ばれてやろう‥と。
ただ、
ダルい毎日をなんとなく過ごしていた、この時。
まさか、さやかの企画で
私の人生を揺るがす様な出会いがあるとは
想像すらしていなかった……




