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コトバあそび(童話パロディ系)  作者: ひまうさ
【未完】ラプンツェル・ラプソディー
5/17

ほ) ほう、それが正体か

 言っておくけど、ウチはビラビラひらひらチャラチャラした服が嫌いだ。

 自分でもシンプルでカジュアルな服の方が似合っていると思うし、そっちのほうが格好良い気がする。

 可愛いとか言われるのは両親から散々言われているし、外でまでもお世辞を言われたくはない。


「マジ、これ着るの……?」


 そんなウチの信念を悉く打ち破るような、ヒラヒラとしたレースで飾られ、ビラビラしたなっがいドレスを前に泣きたくなる。

 こんなものを着た自分を想像するだけで寒気がする。

 別に趣味が悪いとは言わない。

 結婚式場のショーケースに入っていそうで、全然下品な感じはないし、むしろ本当にどこかのお姫様が着ていそうな気さえしてくる。


 雑誌に載るようなモデルさんが着るなら別に良いと思う。

 だけど、ウチはいわゆる幼児体型というやつで、胸なんて哀しいぐらいにぺったんこだ。

 友達にかなり良い体型の子がいるので、体育なんかの時は見比べて、流石に哀しくなる。


 片手でドレスをつまみ上げ、ため息をつく。


 どう逆立ちしたって、ウチに似合うわけないじゃん。

 何考えてんだ、あのバカ。

 それとも、これがここん家の主人の趣味ってやつなのか。

 だとしたら、アレを雇っているのも頷けてしまって、がっくりと床に手をついた。


 ノックの音にふらふらとドアまで行く。


「なんですかー」


 まだ何かあるんですかと身構えていると、ドアが開き、使用人姿の女性が三人も入ってきた。


「お着替えの手伝いに参りました」


 これが噂に聞く、メイドさんですか。

 もういいよ、そんなのいいんだよ。

 いらないんだよ。


「いりません。

 一人で着られます」


 にっこり笑顔で断ったが、もう無理やりに部屋へと侵入された。

 ウチの意思なんて関係ないんでしょう、あんたら。

 つか、上にいるのがおそらくあのうさんくさい怪しい男なんだから、もう使用人が有無を言わせず仕事しようが何だろうが当然といってしまっていいかもしれない。


 いや、やっぱりそういう偏見は良くないかもしれない。

 だって、この人たちだって好きであの男の下についてるわけじゃないだろうし、けっこうここって給料良さそうだし。

 有無を言わさず、服を脱がせようとする使用人らに抵抗するのを諦めて、大人しくされるがままに着替える。


「ねー、ここって給料良いの?」


 彼女らはただ黙々と仕事していて、答えてくれる様子はまったくない。


「あのさっきの男は何?」

「彼は」

「しっ、余計なことを言わないのっ」


 裾を調整していた女性が何かをいう前に、私の後ろにいた女性が制止する。

 あのさー、別になんでここにいるのか聞いているだけなんだしいーじゃん。

 別に。


 アンティークな鏡台の前の、これまらアンティークな時価いくらだと疑いたくなるような年季の入った椅子に座らせられ、今度は髪をブラシで梳かれる。

 普段ウチが使っているような物とは違い、以前母とショッピングに出かけたときに見たような馬の毛で出来ているという高級そうなブラシだ。

 それで髪を梳かれるのは結構気持ちが良くて、自然と目蓋が重くなってくる。


 そういえば、昨日の夜も遅くまでパーティーの準備していたんだっけ。

 久しぶりの母の帰還だから、父とどんなサプライズをあげようかとか話してて、てなんでそれで朝早くに起きられるのか。

 普段はなかなか起きないっていうのに。


「……様」

「んあ?」


 何か呼ばれたような気がして、慌てて返事をしたら、変な声が出てきた。

 クスクス笑いに苦笑を零しながら鏡と向かい合う。

 その向こうには眠っている間に化粧まで施されたウチがいて、まるで別人とまではいかないがそれなりに見れるようにはなっている。

 しかも、思ったよりこのドレスが似合う。

 動きにくくさえなければ、別にたまに両親の前で着てあげてもかまわないのだけど、どう見てもこれで歩いたらウチも転びそうだし、何より周りのものをなぎ倒しそうだ。


「あれ、他の人は?」


 鏡越しに見える使用人が一人だけなのに気が付いて辺りを見回せば、そこには本当にたった一人しか残っていない。


「先程出て行かれました。

 私もすぐに行かなければ」


 そわそわした落ち着かない様子で彼女が何かを取り出す。

 それはどこにでもあるようなアーミーナイフで、彼女は大切そうにそれを両手で手渡してくれる。


「え、なに?」

「私にできることはこれしかないんです。

 申し訳ありません」

「いや、だから」

「何もお聞きにならないで。

 お答えできないのです」


 答えられないって、こんな物騒なもの渡して、なんなのさ。

 彼女はウチが何かを問う前にさっさと部屋を出て行ってしまった。


 残されたウチはというと渡された少し手に余るような大きさのアーミーナイフをひとつひとつ取り出してみる。

 ナイフと缶切りと爪切りと、このクルクルしたのはよく母が瓶を開けるのに使っている気がする。

 えーっと、ワインのコルクを抜くヤツ、なんて言ったっけ。


 栓抜きは違うし、コルク抜きなんて単純な名前だったかもわからない。

 でも、なんっか違う気がする。


「えーっと、なんとかナイフだったような」


 考えつつ、ドレスのポケットに仕舞っておく。


 ワインナイフは絶対違った気がするし、えーっとなにかワインに関係するような職業じゃなかったかな。

 シェフは料理人だし、ウェイターもウェイトレスも違う。

 他に関係している職業あったかな。

 いや、そもそも職業がつくんでいいのか。


「大沢のお嬢様?」

「なんだっけ、あのワインのコルクを開けるやつ」

「ソムリエナイフのことですカー?」

「あーそれそれ。

 ありがとう!!」


 分かった瞬間の喜びに任せて相手を強く叩くと、その姿があっさりと倒れた。

 そんな強くしたつもりはないんだけど、ずいぶんとオーバーアクションな人だ。

 ウチは学年一腕力も握力もないっていうのに。

 それとも知らないうちにそれだけの力がついていたってことなのだろうか。


 じっと手を見つめていると、がしっと掴まれた。


「よくお似合いですね」


 何のことか考え込んでいる間に立ち上がった男に手を引かれて、強引に立たされる。

 上から下までじっくりとウチをみる男は満足そうに頷いている。


 てことは、このビラビラヒラヒラしたドレスはこいつの趣味か。

 うさんくさいとは思っていたが、それが正体か。


 今さらつっこんでも仕方のないことなので、はぁと息を吐いて、男の目をまっすぐに見据える。

 といって、ウチの身長じゃ背伸びをしたって見上げることにしかならないのだが。


「それで、今度は何ですか?」


 男はにやりと口端をあげて笑ったように見える。


「ハイ。

 夕食のお時間です」


 そういえば、と思って時計を見る。

 とたんに強く腹が空腹を訴えてきたので、ウチも相手に苦笑いで返したのでした。


 なんでも構わないけど、まともな食事がとれるといいなぁ。

 と、そんな暢気なことを考えながら。

待ってないかもしれないけど、お待たせしました。

でも、まだラプンツェルの「ラ」も出ません(きっぱり。

とにかくこの屋敷を抜け出さないとどうにもならないのですが。

次は、大問題の夕食会。

 ……会?

(06/06/19 17:39)

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