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カラーコート  作者: 真紗
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自己紹介×きっかけ=晴翔の才能

日付を跨いでしまった、お腹が空いて夜食を求める前に寝なければ、、、練習練習

そう言って、山本さんは僕たちの目の前に来て続けた。

「はじめまして。僕は山本孝史やまもとたかしって言うんだ。よろしくね」

その自己紹介を聞き、何かを続けて言おうとする山本さんに、僕は興奮した様子で問いかけた。

「山本投手ですよね?!ね?!」

普段と違う僕の様子に、美桜と健太は驚いた顔で僕を見つめる。少し戸惑った様子の山本さんは、

「随分前に引退したのによくわかったね」と笑った。

そして、「今はここでドッジボールを教えているんだ」と教えてくれた。


山本さんは僕に向き直り、穏やかな表情で言った。

「君が琉惺の球を取ろうとしているところを少し見させてもらったんだけど」

続けて、

「うん、まず膝をついても痛くないようにサポーターをつけよう。そして僕が少しだけアドバイスをするから、もう一度だけ琉惺の球に挑戦してみないかい?」

僕は少し自信をなくしかけていて不安になりながらも、山本さんに尋ねた。

「本当に、僕に取れますか…?」

しかし、山本さんは即答で「取れる」と確信を持って言った。


その言葉に僕が驚いていると、山本さんはいくつか質問を投げかけてきた。

「君は球の回転を、と言うよりも、おそらく予想にはなるけど、投げられた球がどこに来るのか?どんな回転か?はっきりと見えているよね?」

続けて、「そしてここが一番重要なんだけど、“君はボールを見て、それらを判断してから動いてる”よね?」

僕はえっ?見ないとわからないし判断出来ないじゃん、思い戸惑う。

その僕の様子に、健太と美桜も驚きを隠せない様子だ。

山本さんだけは「やっぱり」と一人納得して

頷いている。


「晴翔、普通、球をそんなにしっかり見てから動いたら、確実に間に合わない、俺にはそんな事とても無理だ」

健太が焦ったように言うと、美桜も続けて、

「少なくとも晴翔、私には速いすごい球としか見えていないよ」

驚く僕に、山本さんは続けた。

「君はおそらく、空間把握能力と動体視力が他の人よりも高いんだと思う」

続けて話す山本さんは言葉に力を込めた。

「技術も無いのに、琉惺や優悟の球がどこに来るのかわかるのは、空間把握能力は相当なレベルだと思う。おそらく、自分の届く範囲かどうかを君は認識できているはずだ」

僕はそれが普通のことだと思っているため、いまいちピンとこない。


「まあいい」と山本さんは言って、僕にサポーターを貸してくれた。

「これを付けて、僕のアドバイスを3つだけ守ってみてくれ」


* 1つ、必ず手を下から出してボールを体で包み込む。絶対に上から手を出して押さえつけない。


* 2つ、必ずボールの正面に入る、入れない球は取らないし、触れない、そのまま後ろに抜かせばいい。


* 3つ、低く来た球は、後ろに少し下がるイメージでお腹あたりでキャッチする。この時、両膝をついても片膝をついても大丈夫。

そうアドバイスを送り、山本さんはにっこり笑った。

「軽めに僕が投げるから、2~3球取ってみなさい」


そう言って投手の完成形と言われた山本さんは肩を回し始めた。


「じゃあいくよ」

山本さんが放ったボールは、先ほどの琉惺の球とは違い、優しい球だった。

しっかりと球を捉えることができる。

山本さんのアドバイスが頭をよぎる。

「手を下から出して、体でボールを包み込む」――。僕は言われた通りに腰を落とし、ボールの正面に入り、両手でボールを下から受け止めた。

「ドンッ!」

キャッチの際に着いた膝から少し鈍い音が体育館に響く。

サポーターをしている為衝撃が少し来る程度で痛みは無い。

「すごい!取れた!」

僕は思わず声を上げた。こんなにしっかりとボールをキャッチできたのは初めてだった。自分の手の中に収まっているボールの感触が、今まで感じたことのない確かな喜びを僕に教えてくれた。


「すごいじゃないか!ハルト!」

健太が駆け寄ってきて、僕の肩を叩いてくれた。美桜も嬉しそうな顔で頷いている。

山本さんは僕の成功をにこやかに見守り、続けて2球目を投げてくれた。今度は少しだけ速く、そして僕の体から少し外れた位置に飛んできた。

「大丈夫、焦らなくていい。届かなければ見送ればいい」

山本さんの声が聞こえる。

僕はアドバイスを思い出してボールを見る、

「これなら、行ける!!」

そう判断して無理に手を伸ばすのではなく、体をボールの正面に入れるように動いた。

そして、またしても完璧にキャッチすることができた。

「すごい…本当に取れてる…」

美桜が本当に驚いている表情で呟く。

「よし、じゃあ次が最後だ」

山本さんが構えに入ると、先ほどまでと少し違う雰囲気を放ち始めた。投げる前から感じる、気迫。それはまるで、プロ野球のマウンドに立っていた頃の山本さんを彷彿とさせるような、そんな雰囲気だった。


投げられたボールは先程よりも明らかに速く僕の左膝辺りを狙ったコースで投げられていた、

(これは取るのは難しいか?)

そんなふうに見えた僕は身体を右側に避けボールを後ろにそらした。


山本さんは笑いながら言った。

「さっきの球は少し無理をすれば取れたかもね」とそして続けて言った


「さぁ取れる準備は出来た、琉惺」と

琉惺君を呼ぶ。

「彼にもう一度アタックを打ってみなさい、」

「わかりましたが、本当に大丈夫なんですか?」

と琉惺君は、山本さんに確認している、

それはそうだ、先程までボールを取れていない奴に投げるのだ、戸惑うのも無理は無い。

しかし山本さんはこう続けた

「いや、先程よりも強くでいい、本気でOUTを取りに行く球を打ちなさい」と続けた。

僕と琉惺君2人の「えっ!?」という声が体育館に響いたのだった。

カップ焼きそばを買いに行こう、そうしよう、異論は認める

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