衝撃×きっかけ=ヒーローの背中
拙い文でなおかつ練習用に作成している物語でも見てくださる方が居るのだなと、結構驚いています。
「晴翔、本当に平気か?」
「大丈夫?」
心配そうに僕を見つめる美桜と健太に、僕は「大丈夫」と答える。
体の芯に残る衝撃はまだ消えていなかったけれど、痛いというよりも、何か特別な感触だった。
僕たちはその後も少しだけ公園で遊び、夕暮れ時になるとそれぞれの家路についた。
「また明日な、晴翔!」
「ばいばーい!」
二人の声が遠ざかっていき、僕は一人で歩き出す。
家に着くと、玄関からいい匂いがしてきた。今日の夕飯は、、、この匂いは餃子だ、僕にはわかる、
白米の進む最高のオカズの一つだ。
流石母さん、僕の好みを完璧に把握してくれている、深い愛を感じるね。
そんなくだらない事を考えていると、母親が「晴翔、早くお風呂に入ってきなさい!」と声をかけてきた。
僕は言われた通りに風呂場へ向かい、服を脱ぎ始めた。
汚れた服を脱ぎ、ふと自分の腹部を見ると、そこにはくっきりと赤い円形の跡が残っていた。
(え…何これ…)
あのボールをキャッチした場所だ。想像以上の衝撃だったんだと、改めて思い知らされる。
僕はその赤い跡をじっと見つめ、呆然と立ち尽くしていた。
その時、ガチャリと音を立てて風呂場のドアが開いた。洗濯機を回そうと入ってきた母親が、僕のお腹の赤い跡を見て、目を見開いた。
「晴翔! それ、どうしたの!?」
母親は驚きと心配の入り混じった声で僕に駆け寄ってきた。僕は慌てて今日公園であった出来事を話した。
夕食時、僕は改めて両親に今日の一部始終を話した。
オカズは餃子です、本当にありがとうございました。
話し終えた僕は、餃子で白米をかきこむ作業に戻る。
母親はやはり心配そうな顔をしていたが、父親は笑いながら言った。
「元気いっぱい遊んでる証拠じゃないか! しかし、あの中学生の速い球をよく取れたな。お前、すごいじゃないか!」
父親に褒められるのが嬉しくて、僕は少し照れてしまった。
その夜、ベッドに入って横になった僕は、今日の出来事を思い出していた。
ボールをキャッチした時の衝撃。美桜と健太の心配そうな顔。そして、父親に褒められたこと。
(すごい、か…)
僕は小さく呟く。
「今日はいい夢を見られそう」
そう言って、僕は静かに目を閉じた。
~side美桜~
「ただいまー」
玄関の扉を開けると、カレーの良い匂いがした。今日の夕飯はカレーだ。ママのカレーは大好物だけど、お昼を沢山食べたから、余りお腹は空いてない。
お風呂を終え、夕飯は少しだけにして、私は自室に戻り、ランドセルから宿題を取り出し、机に向かう。
ノートに文字を書きながら、私は今日の出来事を思い出していた。
(晴翔はやっぱりすごい…)
公園で、あの大きなドッジボールが私に向かって飛んできた瞬間、頭は真っ白になって。金縛りあったように動けなかった。
けれど、次の瞬間には、晴翔が私の前に立っていてボールをキャッチしてくれていた。
(いつも、そうだ)
幼稚園の頃、鬼ごっこで転んで膝を擦りむいた時も、小学校の休み時間に意地悪な男の子に泣かされた時も、晴翔はいつも、一番に駆けつけて、私の前に立って守ってくれる。
「大丈夫だよ、美桜。僕がいるから」
そう背中越しにいつも言ってくれる晴翔。
私の憧れの、ヒーローの背中だ。
でも、今日のボールは、いつものドッジボールとは全然違った。
少なくとも私はあんなに速いドッジボールを見た事は無かった。
(あの速い球を、どうして晴翔はキャッチできたんだろう…?)
健太が言っていた「反射的に手が出る」という言葉が頭の中で繰り返される。あれは偶然だったのだろうか?
私は、以前晴翔がゲームセンターのUFOキャッチャーで、見たこともない大きなぬいぐるみをあっさりと取ってくれたことを思い出した。あの時も、晴翔は「運が良かっただけだよ」と笑っていたっけ。
(偶然…なのかな)
私はふと鉛筆が止まっている事に気づいてノートに視線を戻し、再び宿題に集中した。
頭の中の疑問は消えないままだったけれど、
今は目の前の宿題を片付けるのが先決だ。
私は宿題を終わらせるべく鉛筆を握り直した。
餃子は焼き一択、異論は認める。