仮入部×日曜日の朝=苦手?な自己紹介
夜勤ですが休憩時間に何とか仕上げられたのであげます、今日は2本、出せたらいいなぁ、、、
母さんの準備も終わり、さあ行くぞ、と二人で玄関を出た時だった。
「ピンポーン」
タイミングよくチャイムが鳴る。母さんと顔を見合わせ、二人で戸締まりをして玄関を開けると、そこには美桜と健太、そして二人のお母さんがいた。
「おはよう」
軽く挨拶を交わし、僕たちは学校の体育館へ向かう。
いつも登校で歩いている道だけど、日曜日の朝早くということもあって、雰囲気が全然違う。犬の散歩をしている人や、ジョギングをしている人。普段は見かけない人や景色が新鮮で、なんだか気分も明るくなる。
「二人とも、よく寝られた?」
何となく尋ねてみると、美桜は「準備だけして早めに寝たよ」と、健太は「……少しは」と答えた。
美桜も健太も相変わらずで、僕はなんだか安心した。
「そういう晴翔は寝られたのか?」
「眠れたかも気になるけど、筋肉痛は大丈夫なの?」
二人に立て続けに聞かれて、僕は胸を張って答える。
「コウネまで食べたから大丈夫!もう治ってる!」
すると、二人は「相変わらずで安心した」と言って、少し呆れたような顔をした。
なんでだ?僕が食べ物の話をした時、どうして二人はいつも呆れるんだろう?
そんな他愛のない会話を続けていると、学校が近づいてきた。登校の時と同じように、学校も鳥の鳴き声が聞こえるくらい静かだ。僕たちは体育館の方へと移動していく。
体育館の前には、すでにドッジボール部の皆が集まっていた。どうやらちょうど入り口を開けるタイミングだったらしい。僕たちに気づいた6年生のお兄さんが、
「おはようございます!」
と、はきはきとした声で挨拶をしてくれた。それに続くように、他の部員たちからも次々と「おはようございます!」と挨拶が飛んでくる。
僕たちが少し気圧されていると、後ろから「おはよう」と穏やかな声が聞こえてきた。
振り返ると、山本さんがいた。
僕たちも「おはようございます!」と挨拶を返す。
「今日は来てくれてありがとう。まずは体育館に入って準備をしようか」
山本さんの言葉に、体育館の入り口が開かれた。選手たち、そして保護者の人たちが順番に入っていく。
僕たちもそれに続いて入ろうとした時、健太が感心したように声を上げた。
「晴翔、すげえな。靴が綺麗に揃えられてる」
確かに、体育館の入り口の端の方に、選手も保護者の靴も含めて、ピシッと綺麗に並べられている。
部員たちの気持ちの入り方が伝わってくるような光景に、僕たちは思わず背筋を伸ばした。
こういう細かいところから、良いチームの空気は作られていくのかもしれない。僕たちもそれに倣って、靴を揃えて上履きに履き替えてから体育館の中へと入った。
体育館に入ると、授業で見慣れた風景に少しホッとする。
選手達がボールが沢山入ったコロ付きの入れ物を倉庫から出したり、保護者の人が大きいタイマーを用具入れから出したりと慌ただしく動いていた、普段は開いていないから見られないけど、用具入れの中には過去の試合の写真やトロフィーが飾られていて、このチームの歴史を感じた。
事前に話を聞いていたのだろう、琉惺くんが僕たちに「荷物はあっちにまとめて置くから後で一緒に行こう、水筒は出してステージ上に並べておくんだ、」と教えてくれた。
言われた通りに準備を終え、選手が整列するのに合わせて僕たちも一緒に並ぶ。
前に立った山本さんは改めて皆に挨拶をした後、僕たち3人を呼んだ。
「山岡晴翔君、稲村美桜さん、木下健太君。前に出てきてくれ」
呼ばれた僕たちは、緊張しながらも前に出る。周りの視線が突き刺さるようで、心臓がバクバクする。
「さて、挨拶もしただろうからみんな知ってるとは思うけど、今日から仮入部する子達が居ます」
山本さんの言葉に、チームの皆がじっと僕たちを見つめる。
「軽く自己紹介を頼めるかな?名前だけでいいから」
この言葉に、僕は心底ホッとした。得意なことも苦手なことも言わなくていい。ただ、名前を言うだけでいいんだ。
「山岡晴翔です!」
まずは僕が声を張り上げる。少し震えてしまったけど、ちゃんと聞こえただろうか。
「稲村美桜です!」
美桜はいつもの明るい笑顔で、はっきりと自己紹介をした。
「木下健太です!」
健太は少し緊張しているようだけど、堂々としていた。
名前だけの自己紹介に安堵している僕に、山本さん…いや、山本監督がこう言った。
「ようこそ、庚午コスモドリフターズへ!」
その言葉に続いて、チーム全員が一斉に拍手をしてくれた。温かくて力強い拍手に包まれて、僕の心臓のバクバクは、少しずつ高揚感に変わっていった。
いよいよ、あの日の取れなかったボールの続きが始まるんだ、そう思う、けど今度はひとりじゃない、いつもの3人で、僕達が当たり前に過ごしていた時間にドッジボールという新しい日常が加わった。
コウネは作者も好きです、後は牛タン、でも普段は鶏胸肉、、、仕方ないね、筋肉は鶏胸肉だからね。異論は認めない。