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カラーコート  作者: 真紗
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見学×紅白戦=勇気

何とか今日最後の文出来ました、、、明日は2話が、限界かな、、、文の乱れはご容赦ください。

私は体育館に入ったところで、あることに気がついた。

「……上履き、持ってきてない」

私の小さなつぶやきに、横にいた健太も「あっ…」と小さく声を漏らす。私達は、チラシを握りしめて勢いだけでここまで来てしまったのだ。二人して呆然と立ち尽くしていると、誰かのお母さんだろうか、一人の女性が私たちの存在に気づいて近づいてきてくれた。私たちは慌てて「こんにちは」と挨拶し、ドッジボールの練習を見に来たこと、そして上履きを忘れてしまったことを正直に伝えた。

女性はにこやかに笑いながら、「じゃあ今日は、練習を見学してみる?」と提案してくれた。私達はその言葉に甘え、用意してくれたスリッパに履き替え、改めて体育館の中へ足を踏み入れた。練習の邪魔にならないよう、壁際を移動してステージの上で見学させてもらうことにした。案内してくれた女性は山本さんのところへ行き、何かを話している。すると、山本さんはもう一人の男性に声をかけ、私達のいるステージの方へ歩いてきた。そして、相変わらず穏やかな声で私たちに語りかけた。

「やぁ、昨日ぶりだね」

練習は、高学年を中心としたグループと、低学年を中心としたグループの二つに分かれていた。それぞれの練習メニューをこなす選手達の表情は、皆真剣そのものだ。昨日見た、琉惺くん一人の自主練習とは全く違う、本気の雰囲気に少しだけ気圧されそうになる。

しばらくして休憩時間になったのか、選手たちは練習を止めてステージの上にきれいに並べられた水筒に向かい、喉を潤していた。そのタイミングで、琉惺くんが私達のいるステージまで挨拶に来てくれた。

「昨日のことですごく色々と考えようと思ったよ。ありがとう」

そう言って軽く頭を下げる琉惺くん。ところで、、、と何かを続けて話そうとしているようだったが、休憩時間が終わりを告げる笛が鳴り、彼は慌ただしく練習に戻っていった。

琉惺くんと入れ替わるように、山本さんがやって来た。

「練習を見てみて、どうかな?」

そう問われ、私達はそれぞれ感じたことを伝えた。健太は「みんなパスもキャッチもすごく上手です」と言う。私は「パス回しをしても、内野にいる人たちが一列になり、しっかりと反転しているところがすごいと思いました」と答えた。

「二人とも、本当によく見ているね」

山本さんは感心したように優しく微笑んでくれた。だが、私たちは不安を拭いきれず、二人で顔を見合わせながら言葉を続けた。

「でも、私達は…晴翔みたいにキャッチはできないし、この人たちみたいにうまく投げられないと思います」

そんな私達を見て、山本さんは静かに言った。

「確かに、晴翔くんのキャッチのセンスは光るものがある。けれど、彼が本当にすごいのは、空間把握能力や動体視力、そのどちらでもないんだ」

私たちは「どういうことだろう?」と、意味が分からずに首を傾げた。

山本さんは選手たちに「集合!」と声をかける。大きな声で返事をした選手たちが、彼の周りに集まった。

「今から紅白戦を行う!」

山本さんの言葉の意図をまだ理解できていない私達に、彼は改めて言った。

「まずは、この紅白戦を見てみて。それから、また話そう」

そして、紅白戦が始まった。6年生らしき選手は12人いるけれど、5年生は学校で見たことがある2人だけ。4年生に関しては琉惺くんたった一人だ。後は3年生以下の小さな子たちが4人いるだけで、こうして見ると部員がとても少なく感じた。

バランスよく振り分けられたチームは、Aチームが10人、Bチームが9人。9人のBチームの外野は、先ほど私たちを案内してくれた女性が務めるようだ。山本さんがボールを手にセンターラインに立ち、お互いに「礼!」と言い、中央のサークル内に入っていく。6年生だと思われる、チームの中でも比較的体の大きな二人が入っていくのを見て、私達はルールをほとんど知らないから何が始まるのか分からなかった。しかし、山本さんが「ジャンプボール!」と叫んだことで、「ああ、こうやって試合が始まるんだ」と理解した。5分に設定されたタイマーが鳴り響き、試合が始まった。

一進一退の展開が続き、5対5の同点になったタイミングで、Aチームに良いパスが繋がり、絶好のアタックチャンスが来た。狙われたのは、私達よりも小さい、おそらく低学年の子だ。

(うわっ、怖いだろうな……)

そう思って見ていた私達の目の前で、その子は逃げることなくしっかりと構えた。そのまっすぐな姿は、昨日勇気を出して琉惺くんの豪速球に挑んだ晴翔と重なった。結局、その子はボールに当てられてしまい、そこで試合終了のブザーが鳴った。

昼になり、練習が終わりの時間となった。最後の挨拶を終え、選手たちが帰り始める中、私達は山本さんに「少し時間あるかな?」と声をかけられ、再び話すことになった。

「さっき、晴翔くんのすごいところの話をしたよね。その後の紅白戦を見てみて、どう思った?」

山本さんの質問に、健太は「みんな真剣に、自分の出来ることをやろうとしていました」と答える。

私は「6年生のあんなに速い球に、私より小さい子が逃げずに構えたところがすごいと思いました」と伝えた。

山本さんは満足そうに頷き、「本当に二人とも、よく見ているね」と褒めてくれた。

「そうなんだ。どんな事にも言えるけど、出来る事を一生懸命にすることが、まず一番大事なんだ」

続けて、山本さんは驚くべき事実を教えてくれた。

「あのボールをキャッチしようとした子は、今年3年生になったばかりの子だよ」

「彼は逃げずにしっかりと構えたでしょう?見ていた君たちなら分かると思うけど、恐怖というものは感じる。けれど彼は構えた。それは、取れると自分を信じていたからだし、勝つ為に仲間を信じて頼れるから、勇気を持って立ち向かったんだ。結果として当てられて負けてしまったけどね。でも、その心が大事なんだと私は思うよ。そして、晴翔の一番の才能も、そうだと思う」

ハッとした。ああ、そうだ。晴翔は運動は苦手だし、自信がなくて一歩引いてしまうこともある。けれど、私達が知る中で誰よりも強い芯を持っていて、誰よりも私たちを信じてくれる。そして、仲間の為ならどんな困難にも立ち向かう、一番勇気のある、私達のヒーローだ。

「僕なんかより、君達の方がよく知ってるはずだよ」

山本さんはそう言って、私たちに優しく微笑んだ。そして「また来てね。今度は三人で」と言ってくれた。私たちは元気よく「はい!」と返事をした。

さあ、次は三人で来よう。そう心に誓った、その時だった。

話し終えるのを見計らって、琉惺くんが私達のところに来て、尋ねてきた。

「そう言えば…晴翔君は今日、どうしたの?」

先ほどまでの固い決意も忘れて、私たちは気まずそうに「あー…」と言いながら伝える。

「昨日のキャッチで、筋肉痛になってて動けそうにない、かな…」

琉惺くんは戸惑った様子で「……彼は、ほとんどその場から動いてなかったはずだよね?なんで…?」と呟いた。

先ほどまでの感動的な空気とは違って、なんとも微妙な雰囲気になってしまった。

小鹿晴翔め…鍛え直してやる。

私はそう固く決意した。

夜勤の昼ごはんは普通の坦々麺、日に何回坦々麺食うんや俺、、、

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