表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カラーコート  作者: 真紗
13/74

幼なじみ×体育館=2人の勇気

書け!!書くんだ!!兎に角書いて書く事になれるんだ俺!筋トレと一緒や!!

短めなのはご容赦ください。

~side美桜~

昨日のことを思い出しながら、私はベッドから身を起こした。結局、帰りが遅くなってしまい、お母さんに叱られてしまった。幸い、今日は土曜日で学校が休みだった事、遅くなったとはいえ、晴翔と健太が送り届けてくれ事で、すぐに許して貰えたけれど、あまり心配はかけるような事はしては駄目だな、と反省した。

(でも…)

昨日の体育館での出来事が、頭から離れない。晴翔が、あのすごいボールに向かっていった姿。あの真剣な眼差し。

私は、晴翔が本気で何かに夢中になっている時の空気感をよく知っていた。何年も幼馴染をやっているのだそれくらいはわかる、

食べ物の事以外で見たのは私は初めてだが、、、

とっ兎に角、昨日の晴翔はまさにそれだった。

おそらく、晴翔は山本さんが監督をしているドッジボールチームに入るだろう。ほぼ確信に近い予感があった。

晴翔が入るなら、私も。

そう思った瞬間、胸にチクリと痛みが走る。

昔、健太に「ガリ勉ちゃん」なんて言われたことがある私は、晴翔と同じくらい、いやそれ以上に、運動が苦手なのだ。でも昨日の晴翔の姿を見て、そんな言い訳はしたくない。


あぁそうだ。昨日の晴翔と、そして琉惺君がボールを投げる姿を見て、私はかっこいいと思ってしまった。

私もあんなふうにキャッチしてみたい、あんなふうに投げてみたいと、強く願ったのだ。できるかどうかはわからない。

でも、一歩目を踏み出さなければ、何も始まらない。晴翔は昨日、キッカケがあったとはいえ踏み出して見せた、それなら私にだって踏み出せるはずだ。


私は、随分前に学校で配られたドッジボールクラブのメンバー募集のチラシを手に取った。たまたま取っておいて良かったと思ったのは内緒だ、

チラシを見ると土日も練習があると書かれている。一人で行くには、まだ少し勇気が出ない。だから、晴翔を誘って行こう。

そうと決まれば行動あるのみ、私は、晴翔の家へと向かった。


チャイムを鳴らすと、インターホン越しに晴翔のお母さんの声がする。「晴翔くん、いますか?」と要件を伝えると、お母さんは少し困ったような声で「あー、ちょっと待ってね」と言い、インターホンを切った。

(都合の悪い時に来ちゃったかな?)

そう思っていると、玄関が開き、晴翔のお母さんが出迎えてくれた。その後ろには、寝間着姿で壁に手を付きながら、まるで生まれたての子鹿のように足がプルプルしている晴翔の姿が見える。

「えっと、晴翔?どうしたの?」

呆気に取られていたがすぐに我に返り尋ねると、晴翔は気まずそうな顔で「きっ、筋肉痛で…」と蚊の鳴くような声で言った。昨日の体育館でのかっこいい姿とは程遠いその様子に、思わず「そんなに動いたっけ?」と言ってしまった。私の言葉に晴翔のお母さんは笑いを堪えている。

「ふ、普段使わない筋肉を使ったからだよ、たぶん…」

自信なさげに言う晴翔に、つい笑ってしまった。そして「そういえば何か用事? ついさっき健太も来たんだけど…」と晴翔が聞いてきたのだが。そんな小鹿のような状態でまともに動けるはずがない。私は「また今度にするね」と言って、晴翔の家を後にした。

健太も、ついさっき来た?健太も晴翔に何か用事があったのだろうか。それとも、何処かに遊びに行くつもりだったのだろうか?考えても答えは出ないので、私は覚悟を決めて、一人で体育館へと向かうことにした。

学校に到着し、いざ体育館への道を進もうとするが、あと一歩の勇気が出ない。非常にゆっくりと歩いていると、体育館への道の途中で見慣れた人物を見つけた。

「健太? なんでここに?」

「いや、あの、えっと…」

しどろもどろに答える健太の手にも、私が持っているのと同じチラシが握られている。

(結局、考えることは同じか…)

私は健太に尋ねる、「健太もドッジボールを見に来たの?」と。

しばしの無言の後、健太は小さく「あぁ」と答えた。「晴翔も誘おうと思ったんだけど、あれじゃあなぁ」と言い、二人で顔を見合わせて笑った。


しばらく笑った後、「でも、昨日の晴翔はかっこよかったよな」と健太は言った。私は頷く。

「俺はあんな風には出来ないだろうけど、それでもやっぱりやってみたいって思ったんだ。だから…」

健太の言葉に、私は改めて、自分たち三人は似た者同士なのだと感じた。本当なら三人で来たかったが、一人は昨日たくさん頑張ってお休み中だ。だから、今日は私たち二人が勇気を振り絞る番。

憧れて見ているだけじゃない。彼の、晴翔の隣に、私達はいたいのだ。

そう思いながら、二人は大きな声が聞こえる体育館の中へと足を踏み入れた。


今日は汁なし坦々麺、夜勤明けの身体に染み渡る〜。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ