【プロローグ:Nine Divines Quest】 ーその9ー
お互い無言のまま、しばらく歩き続けた。しかし、その時間に気まずさはなく、むしろなんとなく心地よさすら感じる時間だった。
「あ、ここです!」
不意にエステルが声を挙げた。
エステルが指差した先にあったのは、瓦礫に埋もれた古めかしい石扉だった。見るからに朽ち果てている上に、瓦礫が扉を半分ほど埋め尽くしている。
「これ──開くのか?」
どう見ても、これは扉としての機能を失って久しいように思える。思わず漏れた俺の呟きを、耳聡く聴き拾ったエステルは胸を張り、大丈夫ですと言わんばかりに扉の前に立った。
なにやらもにょもにょと口の中で唱えたと思ったら、扉の前を占領していた瓦礫たちは音もなく消え去り、扉が光と共に開いた。
おぉ、と今まで見たこともないギミックに気圧されていると、エステルに手を取られ、
「ではシロさん、参りましょう!」
と引っ張られるように、扉の中へと連れていかれた。俺とエステルは、扉の中で光に包まれた。眩しくて目が開けていられない。目を瞑っていると段々と光量が落ちていき、目を開けると今度は草原のど真ん中にいた。
「あそこに見えるのが“命令神:絶対命令”の支配する都市『シルクドール』です」
エステルの指差す方に目をやると、城壁に囲まれたいかにも物々しい都市が見えた。
──あそこに『同郷の“神”』がいるのか。
じっと城壁を見つめる俺の足元で、青々と茂る草花を吹き渡る風が小さく撫でた。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
これにてプロローグは終了となります。
良ければ感想など頂けると嬉しいです。
作品のことでも、投稿間隔などのことでも、何かしら頂ければありがたく頂戴させていただきますので。