第6話:【悲報】ワイ、化け物だった件
ワイ、なんj民。今美少女と2人っきりでナノダ村に向かってマッスル。どうも1日歩くとなると必然的に訪れるものがありますよね。そうです。会話の空白です。あまり人と喋ってこなかったせいで話題とか会話の切り口みたいなのが全くわからないンゴね。そもそも2人きりというだけでもちょっと気まずいのに、歳の離れた異種族でしかも美少女ときたら緊張するのも致し方なしってもんですよね。年頃のロリと一体どんな会話をすればいいのかさっぱりわからん。
(ワイ、頑張って話題を捻り出すんや!)
ワイはうーんと考えながら歩く。
(そうや!ダゼ村でどう過ごしてたか聞くのは…いやあかんな。あのカスドラゴンのせいで楽しい思い出ないって言ってたし)
さてどうしたものか。デリカシーのないワイ、無神経なことを聞いて地雷を踏んで嫌われたくないでござんす。どうもワイは言わなくていいことを言ってしまうっぽいので最新の注意を払いたいところである。とは言っても語彙力はそこそこあれども、対人経験の乏しいネット弁慶にはとんでもない難題だ。こういう時陽キャ様はどうしているのか。今なら靴でも舐めて土下座するので是非教えて欲しいところである。
ワイはジュラの横顔をチラチラ見る。あまりにも見すぎて「お前さっき私が歩いてる時チラチラ見てただろ」って言われかねない。
そーれにしても横顔も造形が素晴らしい。もう骨格から違いますよね。圧倒的な美形。ワイとは大違いである。元いた世界でこの美貌だったらきっと人生はイージーなのだろうな。まぁ日元人に生まれたらその時点で結構詰みであるのだが。そう考えたらだまこの世界の方がマシなのかもしれないな。
「私の顔に何かついてるの?」
ワイがジロジロ見てたせいでジュラにバレてしまった。ワイは慌ててフォローする。
「いやぁ前々から美少女だと思ってたけど横顔も美しいなって思って」
バカ正直に話すワイ。
「ほ、褒めても何も出ないから!」
ジュラは真っ白な頬を染めて照れくさそうにする。
案外褒められ慣れてないのかもしれない。
「俺事実を言っただけなんだけどなぁ。さぞモテることだろう。実に羨ましいね!」
なんj民ワイ嫉妬します。
「も、モテませんから!ほんとに!」
ジュラさーん、敬語戻ってますよ。
「そーう?この世界は厳しンゴねぇ」
このレベルがモテないとは、ここは相当面食いなのかもしれない。それとも美観が違うのか。
「からかわないでよ。もぅ」
ジュラは頬を赤くしながらぷくぅっと頬を膨らませる。
餅みたいでかわいいっすね。
「ごめんごめん。ジュラの反応が可愛かったからつい」
ワイは謝りついでにジュラの頭を撫でる。
実にサラサラふわっふわ。素晴らしい。
「さ、触んな!」
ワイの手は振り解かれる。「キシャーッ」って聞こえてきそうな威嚇っぷりである。
触ったのキモかったかぁ。ワイとしたことが、距離感をミスってしまったようだ。
ワイはショックで露骨に凹んでしまう。
しょぼんぬ。
「ちょ、冗談だからそんな顔しないでよもぅ。ほら、耳触る?」
少し申し訳なさそうにジュラは頭と耳を差し出してくる。
キモかったわけではないようだ。よかった。
照れ隠しならそう言って欲しいものだ。
じゃあ遠慮なくーってことでワイは耳を触る。
うーん何度触っても素晴らしい。これはこれは、人類の至宝ですよ。パクッと食べてしまいたい。
「ぐへへ。素晴らしいケモ耳っすよジュラたん」
ワイはむにむにジュラの耳を触る。我ながら実にキモい。童貞丸出しである。
「んーーーー言い方キモい」
ジュラはくすぐったそうに文句を言う。
キモいのはワイもそう思います。さーせん。
でも嫌がっているわけではなさそうなので安心である。
調子に乗ったワイはさらにサワサワと耳の根本を触った。
「も、もうお終い!」
ジュラは両耳をおさえてぴょんぴょん跳ねて後退する。
ワイが名残惜しそうな顔をしていると、「そんな顔してもダメ!」と逃げられてしまった。
耳が弱いのだろうか。そうとわかってしまったらもっとやりたくなるのが人の性というものだ。
両手を前に突き出してワキワキさせていたら「キシャーッ」っと威嚇されてしまった。そしてそのままかわいい尻尾をフリフリしながら先に進んで行ってしまう。
まったくもってかわいいにゃんこである。
できればこのケモロリ様ともっとスキンシップを堪能したいところであるのだが、こんなことをずっとしていたらいつまで経ってもナノダ村には到着しないだろう。
ワイもジュラを追って歩みを進める。
「待ってくれよぉジュラ氏ぃ」
「変な呼び方すんな!」
ワイは怒られてしまった。
そんな怒らなくてもいいのに。
「ゆ、許してクレメンス」
「前から思ってたんだけど」
ジュラが何か言いたげに口を開く。
「なんでしょうかジュラ氏」
「そのクレメンスってなに?」
(ギクぅ。ワイが元いた世界のネットスラングですとか言えないンゴね)
「俺が勝手に言ってるだけの語尾みたいなもんだよ。ほら、かわいいっしょ?」
ワイは誤魔化すためでたらめなことを言う。
「全然かわいくない!意味わかんない!」
正直だねジュラさん。流石のワイも泣いちゃうよ?
でもなんだろう。このメスガキ感。たまらん。
「そんなこと言うなよぉ。まぁジュラの方がかわいいけどw」
「知らない!」
ジュラは照れたのかそっぽを向いてしまう。
このメスガキ、案外ちょろいかもしれない。
おっといかんいかん。調子に乗ったら嫌われてしまうかもしれない。反省反省。
それにしてもワイも随分と慣れてきたものだ。
ここに来る前はリアルでは誰とも喋らずなんjばっかりやって顔のわからない誰かとレスバしながらニート生活を送っていたなんてな。
今ではリアルの女の子とこんな親密なやり取りまでできるようになっている。
ワイちゃん意外とコミュ力あるのかもしれない。
なんていうのは冗談だが、ジュラと関わってなかったらワイはきっと腐ったネットの海で生涯を終えていただろう。
あと気を使わなくていいというのも大きい。かなり歳下の女の子なら保護者のような視点で接することができる。同年代の女の子だったらきっとワイは緊張しまくってどもりまくっていたことだろう。
そんなロリに興奮してたなんて口が裂けても言えませんがね。
そんなスキンシップを交えつつ半日も歩けば流石に体力の限界を迎えてお互い完全に無口になってしまった。
ジュラは「もう無理ー」っと言ってその場に座り込んでしまう。
ピザ豚陰キャワイもこんなに歩いたことはなかったので疲れ果て一緒に座り込んだ。
日も傾いてきているからここが潮時だろう。
ワイはリュックを下ろし中から火打石を取り出す。
だがここで気づいた。
(あ、燃やすものないやんけ)
ワイとしたことが何も考えてなかった。
アホ丸出しである。
そういえばここは湿度は低いが地面はやや湿っており、木は水分をたっぷり含んだ苔に覆われているので乾いた枯れ木や乾いた木の皮が取りずらい。
完全に忘れていた。盲点である。
だが幸い気候的には暑くも寒くもない。魔獣もいないというし火はいらないかもしれない。
ワイは早々に諦め火打石をリュックにしまう。
代わりに村長からもらったパンと干し肉、水筒を取り出してジュラに渡した。
「ほいジュラ。食べてクレメンス」
ジュラは不思議そうな顔をして受け取った。
「いいの?村長からもらったものなんじゃ…」
確かにそうなんだが、ワイは今お腹が空いていないのである。
130キロのデブだった頃は毎日爆食していたがこの体になってからあまり食欲を感じない。ここの環境に順応するために気を使いすぎて食欲が減っているのだろうか。
とりあえずそういうことなので育ち盛りのジュラに渡して食べていただこうという算段である。
「俺今お腹空いてないんだ。ジュラが食べてクレメンス」
「そういうことなら貰うね。ありがとう」
実に素直な子である。
ジュラはお礼を言うと小さな口でパンをパクリと齧る。
小動物みたいで実に可愛い。
あまりにもかわいいのでワイはジュラの頭をよしよし撫でる。
「むー撫でるなぁ」
ジュラは頬を膨らまして抗議の声を上げる。
「おっと、かわいくてつい」
「かわいくないし!」
「そうか〜そういうことにしておこう」
「なによそれー」
ワイは構わず撫で続けてみる。
ジュラは諦めたのか振り払う様子もなくパンをもぐもぐ咀嚼し続けていた。
ついでに耳を触るとジュラはビクッとして距離を置かれてしまった。
どうやら本当に耳が弱いらしい。
ケモ耳もっと触りたいんだけどな。
「すぐ耳触るんだから!もぅ」
ジュラは耳を擦ってプルプル体を震わせる。
よほどくすぐったかったらしい。
「やっぱくすぐったい?」
「くすぐったいよ!」
ジュラは耳を抑えながら答える。
「そうかー。そういうことなら仕方ないね」
ワイは腕を下ろして残念そうな顔をした。
「しゃんぼりしてもダメだから!」
ジュラは先に牽制してくる。
どうやらワイのしょんぼり同情作戦は見抜かれていたようだ。君のような勘のいいガキは嫌いだよ。
ワイは早々に耳を触るのを諦め暗くなりかかった空を眺める。
相変わらず美しい星々が瞬き始めている。
ワイがいた世界で見る夜空とは全然違うが美しいことに変わりはない。
完全に夜になるともっと美しくなるだろう。
なんか、こうやってゆっくり空を眺めるのは10年以上やってなかった気がする。snsや掲示板をやっていたら外なんて出なかった。
1日に受け取る情報がほとんどない今やることなんてそんなにない。せいぜい今後どうするかくらいの考え事だけである。そんな心の余裕ができた今だからこそ再び世界の美しさを実感したのであろう。
夜空を見ていたらなんか眠くなってきた。
ワイは目を閉じる。
心安らかなり。
ジュラの心地よい咀嚼音だけが聞こえてくる。
そしていつのまにかワイは眠りについていた。
えーおはようございます。
いい朝ですね。
ワイの股間のテントも「おはよう兄弟!」って言ってる気がします。
なんと朝起きたら足が痺れて全く動きません!
それもそのはず。ジュラがワイの足を枕にしてすやすや眠っていたのですから。
いや、いいんよ全然。かわいいからそのままにしておこうかなって思ったんですけど流石に足の痺れが限界っす。
ワイはとりあえずジュラの頭を撫でてついでに耳をさわさわ触る。
うんうん。実に素晴らしい。ロリケモ耳最高!
さて、堪能したしとりあえずどいていただこう。
「ジュラさんや。起きてくんなまし。足が死にそうですわよ」
ワイはジュラに優しく声をかける。
「んー無理ぃ」
左様ですか。
このメスガキ。起きないつもりだ。
ならばここは心を鬼にしてセクハラで対抗しよう。
「おっぱい触るぞー」
(どうや?)
「変態スケベエロナンジェーミン」
(いや起きとんのかい)
「起きとんのかい!足が痺れて死にそうだからどいてクレメンス!」
ジュラは不服そうに体を起こそうとしたが、再び頭をワイの足に下ろす。
「おい。なんの真似だねジュラ氏」
ジュラは少しクスッと笑って思いっきり頭を足に擦り付けた。
「いててててて!やめんかい!」
ワイは痛みで叫ぶ。
ジュラはようやく体を起こしてどいてくれた。
「おはようナンジェーミン」
イタズラっぽい笑顔を向けて微笑む美少女。
くそ!顔が綺麗すぎて怒りが湧かない。
「お、おはようジュラ」
ワイは痺れる足をさすって曲げ伸ばしする。
「おーいてて。しばらく動けんなこれは」
「ふーん、動けないんだ」
なんですかジュラさん。そのいたずらっ子みたいな笑顔が不気味ですわよ。
ジュラは足をさするワイの顔に自分の顔を近づける。
(ちけーよ!なんだよ!)
ワイは美少女の顔が近づいてきたためキョドってしまう。
するとジュラはさらに顔を近づけてワイのほっぺにチューをした。
何をされたのか一瞬理解できずフリーズするワイ。
「ほぉおえ!?なにやつ!?」
ワイは素っ頓狂な声をあげる。
「あはは!昨日の仕返し♡」
自分の唇を人差し指で抑えながらかわいい笑みを浮かべるジュラ。
ワイは顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。
「ほら行くよー!」
ジュラはそう言うとナノダ村方面に進んでいく。
「ちょ、ちょっと待って!」
ワイはすっかり痺れがなくなった足を奮い立たせるとリュックを背負ってジュラを追いかける。
「仕返しでチューするやつがいるか!待て!」
「やーだ。早くこっちおいで」
なんというメスガキ。この短時間でどんな心境の変化があったのかわからないが、明らかにメスガキレベルが上がっている。仕返しって言ってたけどワイなんかしましたか?
ワイは足早にジュラを追いかける。
「待ってよぉジュラ氏ぃ〜」
「だからジュラ氏ってなによ!変な呼び方するな!」
「オタク用語だよ。気にすんなって」
「はぁ?何それ」
あ、やっべ。
「何かに打ち込んでるやつのことをオタクって言うんだよ。たぶんきっとおそらくメイビィ」
「ふーん。ナンジェーミンってわけわからないことよく言うよね」
「まぁガガイノガイですからね。あそーれなんつってな」
「頭がおかしいってことね!わかった!」
ジュラさんそれ罵倒してませんか。
間違ってないけど。
「なんだこいつみたいな顔しないでもろて」
「そりゃこんな顔になるでしょ。今に始まったことじゃないけど」
その頭がおかしいやつを見下すような目たまんねぇっす。ドMじゃないのに目覚めそうっすね。
「さてと、冗談はこの辺にして歩きながら今後の計画をジュラに話すよ」
10年経過したというがナノダ村に続く道はそこまで荒れ果ててはいなかった。途中木々が倒れたり、草木に覆われたりしていたが全くの無問題である。
体感で6時間くらい歩いた頃だろうか、畑らしきものが見えてきた。
どうやら10年で村が滅んだわけではなさそうだ。
ンゴンゴが各村々を支配していてダゼ村は壊滅的な被害を受けてはいたがなんとか生き残っていた。
ナノダ村も無事では済まないだろうが、なんとか耐えていたのであろう。
村の入り口付近の畑を眺めてみるとダゼ村とはあまり大差なかった。収穫された後の小麦畑がありその横の畑は芋の蔓のような葉っぱが地面を覆っていた。
なんとも異世界っぽい風景である。
ワイとジュラは村につながる道を歩いていく。
「村残ってたね。よかった」
ワイは普通の感想を漏らす。
「本当だね。村のみんな、あのドラゴンが死んだって知ったらきっと喜ぶと思うよ」
ジュラもワイの呟きに答える。
まぁドラゴンは勝手に死んだんですけどね。
それにしても本当に残っててよかった。
もしなかったらきた道を戻らないといけなかった。なにもないところからさらに1週間も歩いてズンダモッティまで歩くのは正気の沙汰ではない。
ひとまずは安心である。
この村で体をゆっくり休めたいものだ。
少し歩くと建物が見えてきた。
ワイは少しワクワクする。新しい場所を訪れるのはなぜか心が躍るものだ。
そんな心がるんるんなワイは自分の本当の姿を知らなかった。
この後発せられる言葉を聞くまでは。
「ば、化け物!!!!!」
ワイは20メートルほど前に村人らしき老婆がいるのを確認した。
老婆は尻餅をついてワイを指差してこう言った。
「化け物じゃあああああああああ」
どうも作者のカミト改です。
文章は6000文字から7000文字を目途に書いていく予定です。少し長いかもしれませんが付き合っていただけると幸いです。Twitterのアカウントを作成しましたので応援していただけると泣いて喜びます。
旧Twitter/X:@nanj_min114514




