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星に願いを

作者: 執行 太樹

どうしてもっと自分に、素直になれないんだろう……。


社会の中で、「自分らしく」なれない由美は、そっと星空を見上げた。

そこに、1つの星が優しく灯っていた。





 その夜は、星が綺麗だった。

 由美は部屋着姿で、ベランダに置かれた小さな椅子に座っていた。開けっ放した戸からは、暖かい夜風が部屋の中へと駆け込んでいる。水色の花柄のレースカーテンが、風になびいていた。

 この部屋で独り暮らしを初めて、2度めの春が近付いていた。ワンルームのこの部屋には、小さなテーブルと、その上に花瓶がひとつ置かれていた。黄色いデイジーの花が1輪、風に撫でられながら咲いていた。


 最近、夜空を見上げることが多くなった。色んな人に流されて、自分が自分じゃないみたい。私、無理してるのかな。そんな事を考えることが増えていた。

 どうしてもっと自分に、素直になれないんだろう……。由美は、夜空に輝く星たちを見つめて、そう問いかけた。

 さっきまで、高校の頃の友だち3人と一緒に、ごはんを食べに行っていた。久しぶりに、いっぱいおしゃべりしたな。みんな、元気そうだった。でも、みんなそれぞれ、悩みがあった。色々あるんだな。私だけじゃないんだ。それでも、みんなと話せて楽しくて、そして嬉しかった。

 由美は再び、月明かりに照らされた星空を見上げた。星空を北に少し見上げると、黄白色に光る北極星があった。由美はその星に人差し指をあてた。そこから西の方へ少し指でなぞると、カシオペア座が見えた。ギリシャ神話の中に出てくる、エチオピア王妃の名に由来する星座だ。その横向きのWの形になった5つの星の中の下から2番目に、オレンジ色に灯る1つの星がある。シェダルという星だ。「むね」の意味を持ち、ちょうどカシオペア王妃の胸の場所に位置している。

 決して目立った星ではないが、優しく温かな光を放っていた。シェダルには「素直な情熱と正直さ」という星言葉があった。由美はその星が好きだった。


 胸の中で、強くはなくとも、それでも優しく温かい光。そんな光を、私は灯し続けたい。


 不意にそっと、夜風が吹いた。風は、由美を包み込んだ。まるで、背中を押してくれているみたいだった。

 由美は、シェダルにそっと願った。



 明日は、素直になれますように。










 おやすみなさい。








お読みくださり、ありがとうございます。


ご感想等ございましたら、よろしくお願いします。

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