第三話 朝廷
ここが朝廷か。
なんとなく覚えている。ここで一族を根絶やしにされたのを。父と、母以外は。
「そこの女、名を申せ」
いきなり襲ってきた憎悪。
復讐ーしてやる。
「仙華…徐 仙華でございます」
「徐?」
利彗はなぜここにいる、とでも言いたげに徐?、と答えた。
「徐一族は余が根絶やしにしたはずだ。気に食わぬならと。なぜそんなところで突っ立っていられる…」
玉座から睨んでいるのがなんとなくわかる。
早く出たい、こんなところ。
「わかりません」
「わからない?」
「主上」
ふたりの争いを、颯鵠が止めてくれる。元はといえば利彗が始めたものなのだが。
「すまない…。感情的になっていた」
「いえ、とんでも」
「それでは仙華を連れていきますので、失礼いたします」
颯鵠が頭を垂らすと、仙華を連れていく。
なぜこんなことになったのかわからないけれど、自分が悪いのは充分わかっている。
全ての元凶は自分なのだから。
◆◆◆
「なぜあんなことをした!」
「申し訳ありま…」
颯鵠にいきなり抱きしめられる。もう何がなんだがわからなくて、頭がこんがらがりそうだ。
「君は悪くない、何も。元はといえば私が悪い。だって、私が君をここに呼び出したのだから。でもこれだけは知っておいてほしい。君がどんなに敵扱いされても、私だけは味方なのだかから」
(えっ…?私はみんなの敵になる前提?!)
なぜそうなる、と突っ込みたくなる。
自分はそんなに馬鹿ではないので、上手くやっていくつもりだ。
だからなんの心配もいらない。
「何も心配なさらないで。上手くやります。でも、何かあったらあなたに助けを求めるかも」
照れくささを隠しきれず、つい赤面してしまう。
「あ、ああ…。では行っておいで。先輩は優しいから、安心して仕事ができるだろう」
「ありがとう存じます」
仙華はぺこりと頭を垂らし、その場を去った。
◆◆◆
(最っっっ高だー!!!!!可愛い、可愛い、可愛い、可愛いー!!なんて愛らしいんだ?林樹は幸せ者だなぁ。こんな可愛らしい者を妻…いや、婚約者にできるなんて!!)
心の奥底で現実だったら声が出なくなるような声で叫ぶ。
現実だったら危ないところだった…
「颯鵠さま、なりません。その緩んだ顔は隠さねば」
「うっさい!」
注意してくれるのはありがたい。でも、抑えきれないのだ。あの者が可愛すぎて。
「陛下にお仕えするお方。恋慕など無礼に当たります。充分お気をつけを」
「…わかっている」
「俺にはわかりません。なぜ颯鵠さまが、あの女だけに執着なさるか、全く理解できない」
あの女に執着する理由、それは昔助けてもらったからだ。
彼女は知らない。けれど自分にとって、あれは運命だった。ただの偶然かもしれない。けれどあれは自分にとって運命の出逢い。
絶対に手離したくないのだ。あの者だけは、なんとしても、絶対に。
「君も知っているだろう?私がどうして、あのお方だけを執着しているのか」
「わかりませ…もしかして!」
颯鵠の護衛を務めてくれているのは官吏を多数出している蒼家三男、蒼閣である。
数少ない信頼できる者であり、蒼閣は颯鵠のそばを離れることはない。
「ああ、あのときだよ。蒼閣」
「舞…ですね」
すると、颯鵠は愛おしそうな顔をする。
濡れ衣を着せられ、危うく命を奪われるところに彼女が現れた。
当時舞手だった除 仙華が現れたのである。
彼女は生きる希望をくれた。最後まで生きる希望を。
彼女は園庭で、たったひとりで舞っていた。
当時十四だとは思えない舞をたったひとりで踊ってたのだ。
囚人だった自分は話しかけれなかったが、あの舞で自分はなんとか生きれた。
次は自分の番だ。あのとき偶然また舞のおかげで自分は命を奪われることなく終わった。
抵抗できたのだ、自分は無罪だと、証明できたのだ。
あの舞が、自分の守りになったから。
次は自分と思うと、なんだか胸が暖かくなった。
お久しぶりです!
大変長らくお待たせ致しました:( ;´꒳`;):
これからも見て頂けたら嬉しいです!
それではまたお会いできますよいたに…!