愛と執着の非独立記念日⑤
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一年前、双子は彬を追ってこの村にやってきた。自分たちこそが彬の本当の恋人だと主張して彼を強引に連れ去ろうとしたのだ。俺は一度は双子の口車に乗って彬と、自分が生きることまでもを諦めかけた。だけど彬はそんな俺を本気で叱咤して救ってくれた。
あの日、オレンジゲイブルズから朝帰りした俺たちは家で待ち構えていた双子に深々と頭を下げて自分たちの行動を詫びた。彬は学生時代にその気もないのに恋人になることを了承してしまったこと、そして家族を亡くした後に何も言わずに消えて五年もの間二人に心配をかけたことを。俺は一度は彬のことを諦めるような素振りを見せてしまったことを。
そして俺と彬は改めて固く深く手を繋いで小さく顔を見合わせる。
「俺は鞍馬を愛してる。俺の恋人は後にも先にも鞍馬一人だけなんだ」
「俺も彬を愛してる。諦めることなんかできるはずがない」
決して付け入る隙を見せないように、俺たちは毅然とした態度で双子に語った。
双子はしばらくの間ぽかんと大きく口を開けて俺たちを見ていた。まるで全く話が理解できないといった風情で立ち竦む。
だが少しずつ理解が進むにつれ二人の様子は目まぐるしく変わっていった。
ひよりはゆっくりと俯き、その細い肩をぶるぶると大きく震わせはじめた。一方でひなたは姉のその様子に気付き慌てて落ち着かせようとしたのだろうか。ひよりの肩に手を添えようとする。しかしひなたの手が震える肩に触れようとしたその時、ひよりは爆発するように大声を上げたのだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
ふんわりとしたスカートの生地を両手できつく掴みながら大きな声で泣き喚くその様子は、まるで小さな子供の癇癪のようだった。それは成人した女性の振るまいとしてはいささか異様であるように思えて、今度はこちらが呆気にとられてしまう。
ただ何もできずにいる俺たちとは対照的に、一人ひなただけがひよりを必死に宥めようとしていた。
「ひ、ひより! 落ち着けって!」
ひなたはひよりの両肩に手を置いて揺すり、正気づけようとする。だが彼の行動も虚しく、ひよりはわんわんと泣き続けた。
その酷く興奮して手が付けられない状態がどれほど続いただろうか。それまで思うさま声を上げて泣き続けていたひよりは、ようやく泣き疲れた様子でひなたの肩に寄りかかりぐずぐずと鼻を鳴らす。手にしたレースのハンカチで口元を隠した彼女は何か言いたげに俺たちを見上げてくるが、その口からは嗚咽を堪えるようなくぐもった唸りが漏れるだけだ。
ひなたはそのひよりの肩を無言でしっかりと抱きかかえると、未だ何も言えずにいる俺たちをじろりと睨むように見つめる。まるで「殺してやる」とでも言いそうな眼光だ。
だが次の瞬間にひなたが口にした言葉は思いも寄らないものだった。




