オレンジゲイブルズの一夜④
「馬鹿。俺がどれだけ待ち望んでたと思ってるんだ。……そりゃあ、初めてだし全く怖くないと言えば嘘になるけれど。でも、こちらはもう覚悟を決めているんだから、全力でぶつかってこい!」
胸を張ってそんな放言をする俺を鞍馬はしばらく呆然と見つめていた。しん、とした静寂が耳に痛かった。思わず赤面しそうになる。
だが、不意に鞍馬の唇の端は引きつるように引き上げられた。
「ふ……はは、あははははっ!」
肩を揺すり、可笑しそうに笑う鞍馬。その様子はどこか狂気を宿していて少しばかり恐ろしく感じられた。しかし俺はその恐怖を奥歯で噛み殺すと、彼の目を覗き込むように見つめ続ける。
「そんなかっこいいこと言われたら、俺ももう引き下がれないぞ?」
笑いすぎたのか、それとも感極まったのか。鞍馬は涙の浮かんだ目を細めてその俺を見つめ返して確かめるような言葉を紡ぐ。
だけど、俺の答えは決まっていた。
「――望むところだ」
なるべく毅然とした態度で言ってやるつもりだったけれど、きゅんと甘く痛んだ下腹に耐えかねた俺の声には、はしたないくらいの色が乗っていた。
もじもじと内股を擦り合わせながらそんな風にさえずる俺を見て、鞍馬は一瞬怒っているのかと思うくらいに目を見開き気色ばんだ。俺の手を握り押さえ付ける手にも痛いくらいに力が入っている。
だけど俺はその瞳の奥にちろちろと燃え燻る欲情の種火を見ていた。ふぅと風を送ってやれば、それはにわかに燃え上がるだろう。
だから、俺は息を吹きかけるようにそうっと、彼の耳元に囁いた。
「受け止めてやるから早く……お前の全部をくれよ……」
「っ……! 煽るようなこと言ってくれるなぁ。……後悔するなよ?」
言うが早いか、今度は鞍馬が俺の唇に噛み付くように唇を合わせた。それは貪るように激しく深くなっていく。だがまだ足りない。俺は渇きを癒やすように、もっともっとと更に深い繋がりを求める。
鞍馬も同じ感覚を味わっているのだろう。彼もまた、必死に俺の唇を吸う。
俺たちのその欲望と渇きはとどまるところを知らない。底の見えない深い欲望と渇きに恐ろしさすら感じる。しかし俺たちはその恐怖に必要以上に囚われることはなかった。
それもそのはずだ。だって俺たちは今からもっと深く熱く激しく愛し合い、一つになることができると確信していたのだから。
俺たちは互いにうわごとのように愛を囁き合いながら、その行為に溺れていった。




