素直な気持ち③
「俺たちは、いわば利害の一致で一緒にいるだけの似たもの同士。俺は彬に、彬は俺に依存することでやっと立っていられる、そんな関係だ。こんなの良くない、歪んでるって思ってた。でもそれでも彬と一緒にいる時間は楽しくて仕方なくて、この関係が永遠に続けばいいのにとも思ってたんだ」
鞍馬の口調は過ぎ去った思い出を語るように穏やかだ。だがすぐに表情を引き攣らせて胸の前に固く握った拳を置く。
「だけど、そこにあの双子が現れた。彼らの主張は自分本位なものだろうけれど、その分二人が本気で彬を愛しているのはよく解った。彬は『自分は誰にも必要とされていない』、『この世界に居場所がない』って言ってたけれどさ、やっぱりそんなことはなかったんだ。……でも、俺はそのことが嬉しいだなんて思えなかった」
そう言って、鞍馬は自分で自分の身をかき抱くと、唸り声みたいな低い声で訴えた。
「だって、俺には彬以外なんていない。彬に依存させてもらえなかったら、代わりなんかいない。再び依存することを覚えてしまった俺は、一人で生きることもできない……っ!」
限界まで見開かれた鞍馬の瞳は昏い絶望に染まっていた。最後には駆け込むような早口で言い切ると、口元を歪めて自嘲の薄ら笑いを浮かべる。そして、力なく首を横に振った。
「彬があの双子についていってしまうと思うと、気が狂いそうになるんだ。だから、そうなる前に、俺は死んでしまおうと思った」
「………………」
鞍馬の苦しげな告白。その態度や言葉の端々から、鞍馬が俺を失いたくないと思っていてくれたのだということは伝わってくる。それは素直に嬉しかった。
だけど、ならどうして彼は俺をすぐに諦めて死という究極とも言える逃げに走ろうとしたのだろうか。
「なんで……、なんで死のうと思うくらいなら、全力で引き留めてくれなかったんだ……」
その場にひんやりと響く俺の恨み言。どうして鞍馬はそんなに簡単に、俺のことも生きることも諦めてしまったのだろうか。
戸惑う俺の表情を見て、鞍馬はほんの少しだけ迷うように言葉を探していたけれど、すぐに曖昧な、優しい表情で微笑んでみせた。
「だって、俺と一緒にいても、彬は幸せにはなれないから……」
それはまるで諦めを体現したかのように穏やかな表情だった。




