帰宅③
そんな情けない様子の俺を、彼らはふと優しく微笑んで二人揃って抱きしめる。そしてその耳元で甘く囁いた。
「でも、私たちも悪かったわ。貴方が家族を亡くして悲しんでいるのは理解していたのに、どう接していいのか解らなくて貴方を一人にしてしまったんだもの」
「俺たち、反省したんだ。もう二度とお前を一人になんてさせない。だから……!」
そこまで言うと、二人はすっと目を細め、揃ってとても美しく微笑んで見せる。
「「さあ、一緒に帰ろう?」」
そう言って俺の手を引こうとした二人の声や態度には、容易には逆らえない、逆らわせないような強引さが伴っていた。先日までの俺だったら、もしかするとその圧力に屈して頷き、二人の手を取ってしまっていたかも知れない。
だけど俺は軽く唇を咬んで俯いてから、ひよりとひなたの後に続くようにようやく運転席から降りてきて、他人事みたいにぼんやりとしながら俺たち三人を眺めている鞍馬に視線を向けた。
「……鞍馬」
俺が名前を呼ぶと、ひよりとひなたも鞍馬を振り返る。
俺たちの視線を受けて、彼ははっとしたように幾度か瞬きをした。その視線はふらふらと辺りをさまよった挙げ句にようやく俺を見て、ぎこちなく笑う。
「やっぱり、おまえのことを必要としてくれる人はいたんだな。……よかった」
「!!」
その言葉を聞いた瞬間、ぶわりと全身に鳥肌が立つのを感じた。目を見開き、ぎりと歯を食いしばる。ざわざわと胸の奥が波打つように騒いだのを、親指を握り込んで拳を作ることでようやく抑え込んだ。
だけど鞍馬はその俺から無理矢理のように視線を逸らすと、わざとらしくあくびをしながら真横を通り過ぎていく。そうしてからこちらをちらりとだけ振り返ると、穏やかな顔で呟いた。
「せっかく再会出来たんだ。狭いけれど、今日はうちの居間を使って話してくれて構わない。俺は疲れたからもう寝るよ。……おやすみ」
「………………」
結局、何も言えなかった。鞍馬も俺が何かを言い出す前に玄関からさっさと家の中に入っていってしまう。もうすでに見えなくなった彼の背を追うように見つめるばかりの俺の腰に、ひよりとひなたはにこにことして手を回していた。
「さ、積もる話は中でしようぜ」
「そうね、ここは寒いわ。中に入りましょう」
まるで自分の家のことのように気軽に言う二人。その二人に引きずられるままに家の中へと戻りながら、俺は祈るようにそっと目を瞑った。




