ブラック・ゴシック・ロリータ/ブラック・ゴシック・パンク③
「私は馬渡ひより。あっちは双子の弟の馬渡ひなたよ」
ひよりは胸に手をあててそう自己紹介をしてみせた。隣のひなたも相変わらず不機嫌そうにはしていたが、僅かに頷く。
「職業は――そうね、旅人、かしら。私たちは人捜しをしながら、もう五年も旅をし続けているの」
そう言って俺を見上げてくるひよりは、これで理解したでしょう、とでも言いたげだ。
確かに思い当たることはあった。彬だ。彬は五年間にわたって旅を続けてきたと言っていた。その彬を追って旅をしていたのなら、彼らの旅も五年に上るはずだ。
彼らは多分、彬を探してこの村へ来たのだろう。だが、俺は警戒してすぐには彬の名前を
出さなかった。彼らがどういう意図で彬を追っていたのかが気になったのだ。
五年間も諦めずに追っていたということは、ただ単に知り合いだった彬のことが心配だったから、というだけではないのだろう。そこにはとてもとても大きな感情が乗っているはずだった。それが何なのかを知りたかった。
(さて、鬼が出るか蛇が出るか……)
俺がそう考えながら黙っていると、ひよりは仕方ないといった風情で説明を続ける。
「今ね、あなたの家を探しているところだったの。でもここで会えたのは嬉しい誤算だったわ。旅の目的を果たすためとは言え、急にお宅にお邪魔するのは不躾だものね」
「………………」
それでも何も言わない俺に、ひなたがしびれを切らせたように口を挟む。
「察しが悪ぃヤローだな。彬がこの村……いや、クサカベクラマ、てめーの家にいるってことはもう割れてんだよ」
彼らの言葉は、俺にとってさして意外というわけでもなかった。彬がこの村にきたこと、俺の家に住んでいることは、大々的に広告しているわけでもないが隠していることでもない。村の人間なら知っている者もいるし口止めしているわけでもないのだから、外部の人間だとしても簡単な聞き込みや調査をすればすぐに解ることだ。
それにしても腹を探り合うようなこの状況で迂闊に彬の名前を出したところをみると、ひなたはあまり物事を深く考えるたちではないのだろうか。
だが、続けて黙り続けるこちらに対してひよりがふと伏し目がちになりながらゆったりと口にした言葉に、俺は内心どきりとさせられる。
「クサカベクラマ、あなたはそれなりに賢明な人だと思うわ。でも、だったら解るでしょう。彬はあなたと一緒にいるべきじゃないのよ」
「……どういうことだ」
俺は努めて冷静を装いながら、しかし先ほどまで自分の考えていたことと奇妙に符合する彼女の言葉に焦りを覚えていた。そして俺のその感情を知ってか知らずか、ひよりはクッと喉で笑うと自信たっぷりに目を細め悠然と言ってのけたのだ。
「だって彬の本当の恋人は私たちだもの」




