マグノリア
マグノリアには憧れてやまない遠縁のおじがいた。その人物はマグナ・マールで権力を持つ企業たちを取りまとめる、実質的な街の支配者だった。その男の名前はルカ。暗闇の帝王と呼ばれる男でもあった。
「ねえ、ダンテ。あなたに会わせたい人がいるの」
マグノリアは初めて会った時からダンテに興味を抱いていた。憧れの人に目が似ている。一目会った瞬間にそれを感じた。周囲への言葉遣いや態度は紳士的だが、その実何か一つの目標を達成することにしか興味がない。そんな所も似ている気がした。
「それは……誰だい?」
ダンテはその日も教室で勉学に励みながらマグノリアの話に受け答えした。
「私、今はおじ様のところでお世話になってるっていったじゃない?」
「うん、そうだったね」
マグノリアの出身はマグナ・マールの街から遠く離れた別の街だった。少しでも憧れの人の近くにいたいと思った彼女は、猛勉強の末に両親を説得し今の環境を勝ち取ることに成功した。
「実はおじ様にあなたのことを話した時があったの」
「僕のこと?それはまた、どうして?」
「だって最近の……なんて言ったら失礼ね。最初からあなたは素晴らしいわ。でも、最近のあなたは本当に素晴らしいと思うわ。ときどき、怖いと思う時があるくらいに」
このところダンテの成績はぐんぐんと伸びてきていた。人の3倍基礎を学び、徹底的にその学びを吸収していた。その堅実な努力は実を結び、少年の夢の芽が少しだけ出始めていたころだった。
「それでね、あなたのことをおじ様に話したの。そしたらおじ様ったら、あなたに興味が湧いたみたいで、会わせてほしいって」
「僕なんかで良ければ、いつでもいいよ。あ、でも火曜日と土曜日はダメなんだ。それ以外の日なら」
ダンテはいつもマグノリアたちにそうされているように、自分もそうした。
「じゃあ、今度の日曜日にしましょう?お迎えの車が行く場所を決めましょう」
こうして、少年の運命の歯車がゆっくりと回り始めた。