ただそれが世界なんだが
今の会話で考えたものが、「もともと普通の星は人格を持たなくて同然だ」ということだった。
子供の頃から、ドルイドのばあちゃんに御伽噺を聞きすぎていて、「お星さまくらいになると、もともと喋る力があるだろう」と思ったけど、それも、又の、何かの固定観念だったらしい。
今の会話で考えたのは、それとちょっと違ったのだ。
わたしの―――平凡の民間の御伽噺の権威者、クララの生まれ変わりとして、違和感が生じたものだ。
考えましょう。わたしの専門の「木」からだ。「古代魔術「木」」の対象の、草木を思いましょう。
平凡の木は意思など持たない。ただその種に充実に芽生えて、性に合う形に育つ。合わないと死ぬ。(穀物などは山森の草に比べると、なお弱いのだ)そして、茎や葉、花と果実、根と樹皮、また種などが、物語性を持つ、素として働くのだ。
これはドルイドの呪術の素材になったり、触媒になったり、平凡の技術で小麦粉になってパンになってスープになって、馬車と船に乗り、経済の根本になったりするけれど、木の立場ではそういう意味の性質など、もともとないわ。ただそれを利用する術師の立場だ。術師が与えた意味だ。
その術師というものは主体で、そのものの本質は、まあ、物語性があれば、平凡の人の子になっても、非凡の意識を持つ使い魔になっても同じだ。
どっちも混ざっている
半端物になってもね。
桜のドルイド、ステラ・ロサになっても、それは同じなのだ。
術師が求める目的性があるからこそ、質量を持つ行為が成り立つ。必要とするから、必要性が出るから故に、草木は「木のエーテル」の意味を持つのだ。
そして、御伽噺と言えば、やはり「木の精霊」とかも欠けない。めっちゃ好き。専門だ。ちな
そういう存在は、非凡として生じることも同然だと思うし、実際にいっぱいいるらしいけど、
考えてみれば「木の妖精の使い魔」とそのものはあまり変わらない、どっちも「木」属性のエーテルを持つ非凡のものだ。なら、前のものの―――もともと居る非凡の術師の(これを全般的に魔力生物と呼ぶらしい)中には、二種類があるということね。
①本当にもともといるもの、②「そういうのは居て同然だ」で、強い物語性を持って存在するもの。
そして、ブイオ様の話に戻ると、ブイオ様が「深紅の悪魔が生きる星」だった時は、特に狼でも無くて言葉も喋って無かったと思うけど、「兵士の国」の人は「狼の星」を規定してるから、もともと持っている星の質量に「狼の星ならそれくらいできるだろう」という物語性が宿ることになって、あれこれあって、この世界まで届くことになったという事だ。
「うん、わたくしはただの星だよ」
狼さまはそう言った。正確には、わたしのマントに宿り、色を暗くする影はそう言ったのだ。
「ふん、なら、「兵士の国」の時に意識が生まれたとも言えるのでしょうか」
「最小、おまえとこう「狼の星」として喋ってるわたくしはそんな感じだ」
「なるほど、これからは姉ちゃんと呼んで下さい」
「なにゆえに」
「わたしはその前の生まれの「悪魔」との混ざりですもの」
「もちろんの事だが、断る」
「冗談です。すみません」
わたしはただの10歳の女の子で(身長は150㎝あるけど)、チート知識がちょっとあるだけの、ただ広場で焼かれるのが嫌すぎるだけの平民だ。お星さまの姉貴など、そんなになりたくないわ。
「そういう扱いよりは、「深紅の悪魔の土地の神様」の方がマシだな。そのものたちにはそんな概念など無かったけれど」
本当に「深紅の悪魔」とやらは自然を敬愛する心とかが無いのか。だからみんな絶滅したんじゃないか。
「まあ、最小、そのひとりの半分くらいはあるんじゃないでしょうか」
わたしに混ざるその亡霊がどの思いをしてるかわたしは知らない。
「やれやれだ。世の中は、世の外は本当に何がどうなるかわからないものだな」
「それもまた絶対結果で、型物理性の理でしょう」
「それはそう」




