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ファントム

「でも、亡霊(ぼうれい)はなんで触れないのでしょう」


「急だな」


深紅(しんく)悪魔(あくま)の亡霊に()いた田舎娘(いなかむすめ)の亡霊が星の亡霊に(ひろ)われた物語がわたしの世界で

夢と希望(きぼう)(きずな)が「(もり)姫様(ひめさま)」に届く御伽噺(おとぎばなし)だ(届くかはわからないけど)

それが世界の人々を怪物から助け、(ひそ)かに旅をつづくドルイドの娘だとしたら、けっこう謙虚(けんきょ)でまじめだった。

まじめな会話が晒されて文献に残ってもぜんぜんあり得ると思うけど、それはわたしが人見知りだから叶わない。

そして、わたしの本質(ほんしつ)の半分は、謙虚な生活の理由は自分が亡霊(ファントム)であることが世の人々に気付かれたくないから

討伐(とうばつ)されるのが(こわ)いから逃げているわたしである。


「わたしも一応 非凡(エキストラ・オーディナリー)(ことわり)に慣れてきて。亡霊の性質を持つ身だとしても、「名前」や「話」がある時はちゃんと質量があるということをわかってます。ただ、ふだん触れないのはなんの為かな、と思って」


「ただそんな属性だからそうだと言うしかー」


「え」


「?」


「亡霊って属性と違う、「性質」でしょう」


これはなん㎞も旅をしてからも、何十回も筋トレをやってからの新たな説だった。設定(せってい)新設(しんせつ)だったのだ。


「新設も新説も。わたくしはもともと「霊」属性だったが」


「???」


「おまえも「少年」も言ったじゃないか。「火水土風」だけが属性で、「木」が認めないのはおかしいだと。同じことだ。わたくしは「霊」属性なんだよ」


「いやいや」


「いやいやもなにも」


「でも、あれじゃあないですか。なんか呪術も、魔術も、「周りの触媒」や「目的」があってからこそ術や魔力生物(まりょくせいぶつ)として成立して、それが「自然」や「四元素」に当たる、時々領域が(かぶ)るものがあるのが世の中で、「亡霊」はそんなもんじゃない。それはブイオさまは「星」のエーテルですと」


「星のエーテルであってるけど、それは「霊」属性の星のエーテルなのだ」


「幽霊は触媒として働きません。そして「目的性が合う物語性」とかありますか」


幽霊や亡霊は、後で少年にもう一回聞くことになるだろうけど、この社会、フィレンツェのイケてる国の常識で考えると、死した人の残りがちょっと見えるだけで、だいたい煉獄や深淵に行けずに(まれ)に見えたりするだけだ。死者は死ぬとそれなので、今の社会の観念はシンプルなのだ。ものに触れたり目的性を持って動いたり、いっぱんのものと一緒にするのは余りにもおかしいと思うのだ。


「「目的性?」あるに決まってる。わたくしは粉々になってるじぶんを復興したい」


「まあそれを助けてますね。「座標の衛星」です」


「そうだ。おまえもだ」


「まあ、わたしも確かに人の子の亡霊ではありますが」


「わたくしが「星化(スターライズ)」を施す前は、「(れい)」のエーテルに満ちていて動いて、うん、これは■■■として終わってんな、どういうことか?と思ったよ」


「なんですって?」


「深紅の悪魔として終わってたと」

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