新しい呪術を作る方法
「まあ、結局こういうのは雑談だけどね」
「そうですね」
特に何かを待つのでもなく、「悪魔」を探すのでもない、わたしの今の状況は、普段の森に帰るために、ゆっくりと狼さまと歩く最中であった。
なんか人気が無い場所を見つけて、今日の適切な筋トレもやったけど、正直走りなどを飛ばした略式のもので、足りない感じ。
たぶんあっちに見える山がフィレンツェじゃないかな、と、わたしは道を確認しながら森を進んで行く。
そう、今はみんなが利用できてできない「有料道路」があるからね。便利だけど、わたしはお金など無いんだ。
そしてさすがに昼に狼さまが見つけられるのもやーだし、わたしは「やはり、方向や地域がわかる術が欲しいな」とか思いながらくっそ遅く。歩いて行ってる。狼さまの背に乗って走ると、方向がわからないから。ずっと道を確認する必要があるんだ。
だから、どうしようもない話を続きながら、3回めの「賢者の国の滅び」を推測してるわたしたちだった。桜のドルイドのステラ・ロサだった。
「古代魔術の中で「方向がわかる術」とかはないのか」
ブイオ様はそう言った。
「ううんn、そうですね。あの国は本当に、「悪魔」の知性にも劣らず非凡の技術が栄えている国だと思いますが、わたしの記憶には重大の障害がございます」
「もともとあれだろう。ただ散り散りになってる一部だろう」
「それもそうでございますが、決定的に、「わたしの悪魔」、「木」属性の古代魔術しか学んでない」
「どういう事だ?」
「えーとですね、あの子は、もともと「深紅の悪魔」としての自意識が薄くて、「瓶」を召喚するとか、頭を開けるとか、やったこともないみたいですよ。
「やったか否か記憶がなくてわからない」ではなくて「やったことがない。できない」感覚があるんです」
「なんか自分の記憶を探るって、地味で微妙だな」
「そうですね。そして、その欠落を埋めるために「古代魔術」を学んだ。だから「悪魔の学生」がそれ一人だけだった。だから、まあ、「古代魔術」以外は、「悪魔としての」常識も、「賢者の国に住む立場の」常識もあまりない感じで」
「うん…なら、使えないということか」
「でも、その「木属性の古代魔術」はまだまだ記憶戻れると思いますが。」
「おまえがその「賢者の国」の術でなんかの呪文やエーテルの使い方がわからない限り、「新しい術」を作るのが早いかもしれない」
「呪文とか、自分で作れるんですか?」
「おまえも言ったろ。自分の「内側」と「廻」をつなげて、いいなりにするための呪文だと。なら、それが適切に動けるような言葉なら、「いいなりにしたい、なにかの目的性」があったら、実はなんでもいい」
「そうですかね。」
まあ、考えてみればわたしが使える呪文の中で「再回」を見ると、もともと古代魔術だったから、よくわからない発音のなにかの言葉だったと思うけど、思い出したら現代語で喋ってる。自分はクララとしてあまり常識が無いから、知らないけれど、この現代語も、時間の流れで、色んな国の時代を過ぎて、色々変わっているはずで、「賢者の国」はもちろん、ちょっと前の社会でも、言葉が同じ意味を持つには限らない。でも、働いた。
「つまり、「エーテルの連結」が大事で、その言葉そのものはなんでもいいという事ですか?そして「属性」に合って、結果を産み出そうとする目的性が確実に立っているのであれば、今作った術も働くと」
「まあ、それが全部ではないんだけど、夢の国の規律とかもあるんだけど。もともとそうだろう。言葉はエーテルを作ってもくれないし、勢いや流れを具体的に一枚一枚触ってくれたりもしない。それをしやすく、分かりやすくしてくれるだけだ」
「ほ。」
「なら、言葉の意味がちょっと違っても、言葉自体が変わっても、適切に合うと合うんだよ」
もちろん「型物理性」に逆らえない限りね。
どうやらそれは、もう定番になっている「便利主義」なんちゃらの言葉で突っ込むにもちょっと違う感じで、本当にそれが呪術の本質だという、そんな言葉だったと感じた。
「ふん、そうですか。なら、「夜にも方向と位置がわかる術」を、自ら作りたいですね」
「そういうのが「木」属性でできるかはわからないけどな。なんかあったらいいけど。」




