やりたいこと
「しかも、わたくしが思うのはラファエル氏のその『盗み聞きをしたということ』自体がハッタリではないか、ということだ。それはけっこう高度のわざだと思うよ。めちゃくちゃ複雑だよ」
「そうですか」
わたしは今日の筋トレのノルマや、まあ、ギルドにはいかないとしても出かけると思ってるので別にブイオさまを「動くマント」にはしてなかった。朝はいいのだよ。そんなにネクラではないから。
「平凡の風を耳で受けその意味をわかって組み立てするのが人の子の言語だ。音声言語で、それと意味自体がミクロ・アマウロスでできてる共通の霊属性のエーテルのようなものが繋がってなんとか考えたり行動したりするのが人だ」
「そうですね」
クララとしては本当になんの意味かわからんけど、わたしは半分深紅の悪魔の成れの果てなのでなんとなくわかる。それはわたしの「クララ式エーテル操作」が頑張って人の考えて動く事を掴もうとしたのと同じく、深紅の悪魔の「見えないエーテル」や人の言葉そのものを魔術理論のように説明したことなのだ。
「彼女はアリアの大魔術師として、まあ言うと『風のドラゴン』みたいな人だと言えるけど」
「ドラゴンの例え、良いですね。シンプルだし」
「そのような能力を持っていても、結局人の子は平凡の生き物。その自分の普通の生活音などと共に、把握してるアリアのエーテルのスフィアをいっぱい張って、その中の全ての平凡の音の中でおまえの声をいちいち探してそれだけを聞く事は非常に……浪費だ」
「それは確かに」
「だからわたくしはそれ自体が彼女がおまえを制御するための嘘だと言う可能性もちょっと思っている」
「まあ、そうかも知れません。けっこう効率的な戦略です。アリアは情報を扱うのですから。古代魔術・風も多分そんな感じだったから」
「ふむ」
「でも、ブイオさまの言葉通り色彩技はけっこう色々ができるもので、ウヌスは個人の意思が大事だ。できることだけではなくて、『やりたいこと』がまた大事なんです。それを祈りと言ってウルトだと言いますね。学術語で言うと神がそれを望まれると同じ言葉だからだ」
「そうだな」
「だからその望み、願い、祈り。それらもまた個人のヒストリカル・アイデアを非常に引き出す、凄い原因になると思われますが、この場合彼女のアストラさんへの何気に気持ちいい執着を見ると、十分できる事です。わたしは見た目年齢として自分と似たような年で、なぜかアストラさんと名前まで被っている。自分は別に占星術師ではないから話題とか被らないし」
「だからその嫉妬や危機感のようなもので聞いていたと?」
「はい。そして、それがブイオさまの仰るとおりけっこう無理した感じではあったから、完全に聞いたわけでもなくてわたしの位置がだいたい把握できるところに限られていたのでしょう。『エンブリオくんがアリアのスフィアが感じれるから』家にいる時は試してなかったという言葉も多分まことだと思いますよ。なぜならアリアはもともとそんなに深く考えない人だからです。それはわたしはクララとしては別に風のマギアの素質があるとかそういうもんではぜんぜんないけど、そのわたしの半分と言うか、非凡のものとしての本質である深紅の悪魔の方のわたしが焔流累颯の颯に通ってるから。そういう感じの人は別に大事なことにも嘘を仕掛けない」
「言いたい事はわかった」
「そして、聞いたところ桜のドルイドのステラ・ロサさんはけっこう充実に平凡の薬師をしてるに見える。別にこの機会にアストラ・ネロの権力のようなものをちょっとお借りして自分が物質の利益を得ようとしないと、なんも考えてないと思えたのでわたし本人にも言ったのです」
「利益はちゃんとあったが。欠片のことを調べてただろう。そういうのは人の子はすべてを見て聞くから『興味ある方だな』くらいは隠せないのだ」
「それはそうだと思いますが。
それもそれで別にわたしが結婚詐欺をしてエンブリオくんを利用してギルドになんとかするとか、アストラさんの遺産を狙って心を奪おうとするとか、そんな感じの利益ではなくて、神秘的な関心事だから『ほへードルイドはやはり神秘的な感じなんだね』という範囲に入ったのです」
「ふむ、まあ、確かにそうかも」
「だからわたしもわたしなりにラファエル・ムジカ殿の『轟』本当に素敵だと思ったし、感心したし。彼女のことが好きになったので、別にこれからの関係に問題はないと思いますよ。
いちばん残念なのが『これからそれに乗る事はないだろう』ということであるくらいなんです」
「うむ、そのわざは本当に強力だった……攻撃魔術だけではなくて移動にも使えるのは汎用性が凄い。この世界で、わたくしがいくらチカラ、質量が戻るとしてもそれを上回ることは難しいだろう」
「それくらいですか?確かに鳥も避けて超距離の超高速移動ができちゃうのはチートだとは思いましたけど」
「しかもおまえとアストラ氏を安全快適に運ぶこともできたじゃないか。そういうのはドラゴンも無理だろう」
「いや、ドラゴンもやると思うとできるのです。深紅の悪魔も別にエーテルで甲殻を守るから高速飛行ができることで、それが働かないとケガすると思うので」
「そうだな。能力は十分にあるだろうな。やはり『やりたいこと』が大事か」
「それが人が生きるにはとても大事なことなんでしょう」




