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土煙が本当にそのように活躍するとは

目にゴミを入れる魔術(まじゅつ)。名前は元素魔術・土の「土煙(つちけむり)」だ。もちろん人はみんなカッコをつけようとするから、流石に「目にゴミを入れる呪術(じゅじゅつ)」が正式名称なわけがないけれど、先目次を(さわ)ったところ、「もぐら」という魔術は本当に「もぐら」だったので、その基準がよくわからん。(それは別に平凡のもぐらを使役(しえき)して使い魔として操るとか、もぐらのようなカタチの土のエーテルの使い魔を作り出すとかそういうもんじゃなくて、ただ「もぐらが地面から出てくるように」地面に衝撃を伝えてひっくり返す魔術らしい)


「基本は握って土を主にした平凡の土壌を材料にする。『起点(オリジン)』として認識してる大きさ、油濃さなどの性質に合わせて多量の土、埃を作り出して……それを吹かせる色彩技か。

いや、吹かせるのではないな。元素魔術は物語性(ヒストリカル・アイデア)がそれぞれの属性に分離されているから、平凡の風で『吹かせる』のではなくて、地面を『蹴っ飛ばす』イマジナリアで働くものなんだ」


「ふむふむ」


なんでこれが凄い魔術になったんだ?


地面は水を吸収して濃くなる。暗くなるのだ。そしてその適切に水を(ふく)んだ状態の土は草木が気力を得るために必要なものだ。種類に合う土地の質と水の状況、日差し、寒さと暑さ。それは農耕の基本で、だからこそ農園に土と水のマギアの需要があるのだ。

そして、ウリエル教授はそのギルドの穀物の生産及び流通関連のお仕事もぜんぶやっている子だと聞く。彼は「地面は、水を吸い取る」というその話に着目(ちゃくもく)して、「巨大な化け物が()らしている雨も、凄く土を飛ばすと止めることが出来るかも知れない」と強く信じて、それを実行したということか。


「そ~れは、土の領域を超えてるな」


「?」


わたしはもう室内なので、(はず)しておいたわたしのマントを適当にカタチづけて、そこをブイオさまがなにかの布のぬいぐるみのように喋れるようにした。人は対象がないと独り言でもその寂しさ、(つら)さが出てくるもの。わたしもこうしないと自分の影とずっと喋ることになるし、それはわたしのメンタルにあまりよくないことだからだ。

マントは喋る。


「その性質は正しいけど、多少……()ってる。

もちろん元素魔術はぜんぶがそれぞれちょっとは盛ってる。平凡のお水がアクアの人たちのエーテル操作のように素早く思うままに動けるはずがなくて、平凡の風がただ『(つるぎ)を振り下ろす時に風の音が出るから』って、(つるぎ)剣裁(けんさば)きのような『(かぜ)(やいば)』というわざができるのもおかしいのだ」


わたしは「まあ、そうだな……」という感覚でしずかに頭を、ちょっとだけ(かたむ)けた。

風刃(ふうじん)。そう。そういうのは想像がつかないから、わたしはクララとして妄想の「森の姫様」の技を考えた時、「木の葉の突風」などを思ったのだ。ぜんぜん「だから、()る」という考えがなかったからだ……だから、今もわたしの「ノヴァ・スクリミア」もそれの延長で「花びら」をいっぱい飛ばす補助の飛び道具としての役割だったが。風の堂の人たちにはその攻撃魔術は使い過ぎているわざなので、どうぜんのものらしい。もう(ことわり)()っているんだ。


つまり、千年の歴史を誇る魔術史(マジック・ヒストリー)は、それ自体が詰めているマギアたちの大きすぎる型物理性(アイディア・ヒストリア)のようなもので、「その中でどうぜんだと思われる魔法効果(マジック・エフェクト)」が働く。それをどうぜんだと思ってるマギアたちのエーテルが少しずつウヌスのスフィアも越えてギルドの色んなシステマを動かせるように、マギアたち一人一人がその認識が薄くても、システマはちゃんと動くように……水の堂の構造が葡萄汁などが腐らないように回していることも、その「盛った魔術」は個人のマギアを()えて機能(きのう)するからなのだ。

そういうのが体系を持つ秘術の強みだ。


「ウリエル学長は、平凡の土の性質を強く持つ土と埃の煙を拡張させて、沼地の全体を囲んだ」


「そう。だから、それが普通のデュラの『土煙』だったら、本当に『その煙を蹴って』当てた敵軍の兵士の目に入れて、視野を奪う事ができたら本望(ほんもう)。それくらいのわざだ。けど、ウリエルくんは凄い素質(ギフト)で、その範囲を拡大解釈(かくだいかいしゃく)してね。『地面に雨が落ちるようなこと』を毒の雨にさせた。それは土のエーテルだけではできない、立場(たちば)を超えたわざだったのだ。だから色が変わった」


「ううん……」


ブイオさまはこの世界の人としては今まる一年もなってない新入り。赤ん坊のようなものだ。


「ちがうよ」


だけど、彼の「型物理性から得れる過去の話」や「狼の星として持ってる夜空の知識」はすごいもので、彼の解釈ではウリエル・モルテは少し「土の魔術師としての同然の魔力の運用」を離れてる。


「まあ、大魔術師は凄いということだ」


わたしは少し「触れてはいけないこと」に触った気がして、今日の読書は終わりだという勢いで本を閉じた。

それは、ウリエル・モルテが個人にやってたそのエーテルの色が、わたしがいちばん心配する「黄金のエーテル」とはもしかするとあまり関係ないかも知れない、彼の「型物理性のデメリット」を(もよお)す行いだったかも知れないことを、ちょっと触れたから怖くなっちゃったのだ。

これは……エンブリオくんにはどう話せばいいのだろう。

大魔術の土煙は、作家が好きな「モモ」という小説のイマジナリアで書いたのです。ぜんぶ止まった世界は、塵も空気の分子もぜんぶ止まるから、人が動こうとするとずたずたバラバラになるんじゃない?とずっと、今も思っている。桜桃蜉蝣ではその辺りをミクロ・ヒストリアがちょっと都合よく働いてくれるので問題ない方です。

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