やっと奇怪巨木の大魔術から解放されたステラ・ロサさん
「それでは今日はエンブリオくんの家族に相談をしに来たこととして、そんな感じにしましょう」
「そうですね」
「楽しく話ができて嬉しかった」
「はい、良い夜を」
わたしは食堂前で、ミカエル学長とバイバイをし、ただの24時間くらいだけど……なぜか凄く長く感じた出場をやっと終えた感じがして、肩からチカラが溶けた。
「ふへ」
「お疲れ様です」
「はいおつかれさまです。アストラ・ネロ様の専属薬師のステラ・ロサです。今日は普段と逆に、今帰りますね」
門番さんはわたしの出場やその帰りなどはわからないはずだ。ギルド長の動向は把握してると思うが、その場合もアストラさんの同行までは伝わってるかも知れないが、わたしはその下だからだ。でも、確かに今日は「入る」ではなくて「出る」んだな、とちょっと面白そうな顔をした。
「そうですね。大魔術の関連のお仕事が忙しかったんでしょう。それでは、おやすみなさい」
そして彼は察しがいいので、まあ、変な理由があるわけがなくて、「大魔術」でみんな地獄だから、この人も今まで引っ張られてお仕事をしたんだろう、と普通にわたしを通す。
「ありがとうございます。それではまた」
昨日のパレードはまるで嘘みたいな感じに、ギルドの前はすーんとしてた。
そしてわたしとエンブリオくんの家に戻っても別にすやすや寝てる少年も、夜まで本を読む少年もいない。
静かな夜で、そのあいだ意外と非凡のものとしての経験をいっぱいしてたわたしは、いったん頭を冷やしに今日はちょっとだけ体だけを解すか、そのあとに家に帰っても十分のはずだ……と大門を出た。
「魔術ギルドの身分ですね。確認しました。
ギルドの人は夜も忙しいですね」
「個人の用事ですが。ありがとうございます」
わたしは本当にこのフィレンツェという都市国家のチカラではないけど、ここに本部があるからこそ、ほぼここの機関になってる魔術ギルドは凄い組織ではあるな、と思って門番を通って……
やっとブイオさまは話せるようになった。
「ぷは」
「なんか久しぶりの気がします、ブイオさま」
「それは、ただの一日だとしても色々経験しすぎてるからだ」
「そうですね」
大門からちょっとだけ出ても人の気配はぜんぜんなくなる。有料道路とそこを見張る番がいるこの道を賊が行き来して襲撃したりもあんまりしない。(見た事はあったけど……思ったよりはまったくなかった)
わたしの意思を感じ取ったブイオさまはマントの影から、もう周りぜんぶが暗闇の夜の暗さから……大きい狼の姿に化けて、そのままわたしを乗せた。
「うわっ」
「わたくしは別に星の思念だし、平凡のけものではないが、今夜は走りたい気分ではあるね」
「それでは、いつもの川辺に行きますか」
「うん」
ブイオさまが走り出して、これはほんとうに凄い経験だ。
「気持ちいい」
***
偶然見つかった筋トレにちょうどいいところ。人が住むには水が汚くて、隠れ里を作るには微妙に道から近いところだ。
わたしはいつもの通り、ただ明日の昼あたりにもすぐ同じくノルマを稼ぎたいと思うので……今は軽く、兵士の国の杖道の鍛錬をする。
特に今日多く使った手首に気を付けて、上半身をストレッチだ。
「そう言えば、平凡の手書きは関節を削るので、素振りは無理しない方がいいかもだ」
「そうですか?確かにそうかも知れない。
わたしは完璧な体を持ってるけど、その『ずっとデスクワークをしてた』ことが変に働いて、手で杖を持つ姿勢や気持ちが変になるかもしれないですね」
「そうそう」
「理解しました」
股関節に足首を伸ばして、薬師としてぜんぜん自慢できない平凡の光る髪を夜空の下に随分と自慢する。
うん~~~快感だ。エーテルを浪費する快感。
「エーテルの浪費……」
別にいいでしょう。
「確かに、ただ丸一日すぎてるだけなのに、ちょっと体の感覚がへんです。これは気を付けてコンディションを戻さないとですね」
「その、『キメラ・プラントの主』に干渉された時も、ミカエルくんに驚いた時もストレスがあったんだ。その時おまえのなかのおまえの粉々がけっこう疲れていたんだ。そして、普通に平凡の人のステラさんとしても働いてるし」
「確かにな」
わたしは念のために、自分の右手をいっぱい振って、「花びら」をふわふわと出し、それを自分の偶像としての体に通してもし「崩れるガラスのような部分がないか」を検証して、ほんとうにあった何個かを修復した。
つまり、その、なんだ、桜のドルイドの呪術の「再回」だ。
アストラさんの部屋にあるなんかわからんおもちゃのようなものと似たような揺れる音がする。
「わたくしはおまえにエーテルの勢いをくれるだけで、もともと『ステラ・ロサという真名』以外は別にできることもなくて気の通路で意思を伝える事もできないから。
特に人の子の女の子のことは本当にわからないから、それはクララくんが頑張って理想の自分を維持するしかないということだ」
「え~~~」
「『星のワンちゃん』や『深紅の悪魔』などのように、確かな感覚をわたくしが持っていけばこうではないんだな、とおまえが落ちた爪を付ける時にちょっと思ったんだ」
「それですか、術師と使い魔のこと」
「そう、ステラ・ロサさんはそれが半分だけできてる感じだから」




