最上の職場
「ネロせんせい、お疲れ様です」
「ああ」
その間使用人さんに布団とお茶のさらさらふわふわの処置をされたアストラさんは、3人と戻ってるわたしたちを見た。
「占星術師のせんせいたちはあまり力仕事の人ではないと思いましたので、わたしが勝手にお呼びいたしました。重かったら手伝います」
「そっか」
占星術師さんはわたしの方を見て、「なるほど、鍛えてる奴だ」とも思った様に、
「ありがとうございます。でも大丈夫そうですね」
「そうですか」
そこは先までの怠〜い感じではなくて、ちょっとアクアぽく鋭く、自分たちの、正確に言うと連れてきた大学院生に任せるといいと判断したと思われる。
そうか。慣れているんだ。
占星術師の人は書類自体は普段も扱ってるので、そんなに量はないな、という様子なんだ。まあ、平凡のお偉いさんのサポートを貰い普段も計算手さんを雇って仕事ができる平凡の天文学者とは違って、わりと魔術ギルドでの占星術師は自分たちで色々をやっていく感じで。そう言うもんか……と思った。
そうだね、元々「代わりに見てくれる」という前提ができないんだね、先のアストラさんと同じだ。
それが平凡の仕事と非凡のお仕事の差なのだ。非凡の物事ができるけど、自分でやらないと動かない。
カナリィの変わり者だ。聖堂の権威があるから認められてる「同じ夜空を見て変なものが見える人」……だけではなくて、「それをあえて他に言わないと耐えきれない人」だ。そう、そういう人が非凡の占星術師。人の子がそれぞれの性格を持ってるのと同じく、ウヌスはクロマがそれぞれだ。固有の魔力を持ってるのだ。そのそれぞれのエーテルの適正でものを見るから、同じ状況も属性のスフィアが見れたり全然普通のものからも輝きを見るそういうのが非凡使いだ。だから先のわたしが「輝く木材のゴミ」を見たのもそんなには変なことではない。(こんな些細なものが、類を分けると幻想魔術のいちばん小さいもの、最少の単位みたいなものなのだ。それを人に催すか、勝手にするまで強くした感じだから、別に幻想魔術には決めている属性がないということ)
そう。エーテルが見えて聞こえる人は、見る夜空も聞こえる夜空もそれぞれだ。
アストラ・ネロがもう解釈している夜空を、同等のエーテルを見て聞く能力で見分けることができるけど、星座のことをぜんぜん知らない人が「ええ……なんであれこれを繋ぐのか」になるのと同じく、もしこの人たちの誰かが〇から「非凡の占星術」を書き上げると、それは全然違う夜空でぜんぜん違う解釈になったはずだ。でも、ギルド全体ではないとしても非凡の占星術という、中央堂の天文学部という範疇ではアストラ・ネロという個人は本当に代表なので、原点であり頂点の伝説なので……本人はもう引退してる朽ち零れとか言っちゃうけど。もう引退しててもギルド長の助言役としているお方なので、アストロロギアちゃんたちには尊敬する大先生なのだ。(そしてちょっと嫌なことに、アストラさんは「いやいやそうするのではない」と言いながらもその待遇自体は楽しんでいるのだ)
占星術の教授さんと院生に、アストラさんは口でも説明をした。わたしは今まで何ヶ月も夜空の話をしていてもこのなんとか計算での位置がなんとかすることは本当にわからなくて……
まあまあ計算はできる。話も大好き。でもそれを一緒に扱うのが無理なのだ。やはりわたしは平凡の天文台に雇われても計算手がちょうどいいのだ。
そういうのをずっと思っていたら、大体のプレゼンが終わったようだ。
「……つまり、昨日の戦いで実質の祟りはもう終わったけど、土の堂の工事の納期の期間を上手く調律することが大事だ。人力が空くから」
「わかりました。君たちも覚えてろ」
「はい」
わりと学部の中ではちゃんとしてる人なんだ……というか、先は半眠り状態だった様だ。
「作成は薬師さんも一緒にやったんですか?」
「あ、はい。わたしも手伝いました。見て聞くことはできるので、全体の執筆はネロさまによるものですが、些細な部分を付けて繋ぐのはわたしもやりました」
「なるほど。参考します」
彼女は頷く。それがなんか問題になるんじゃないんだよな。逆に「なら他の非凡使いによる占いではなくて、アストラ・ネロ本人によるものだと見ていいものだ」とかを測っているんだよな、とわたしは少し不安みたいな感情を抱きながら全然平然といた。
なんか……あれを思い出すな。覚えても覚えない75000年前だ。「ムー大陸/賢者の国」での「古代魔術・風」のお仕事もこんな感じだったと思うのだ。師匠の賢者がいちいちやるには難しいものを、わたしが非凡のものとして手伝った覚えがある。まあ、その古代魔術の詳細は全然、ステラ・ロサさんの容量では飲むことができなくて……今の社会に比べるとラファエルギルド長や、もしくはそれ以上の我と廻が要るからな。今はどんなに深紅の悪魔を倒しても、それは知らないし、覚えても覚えれない過去だ。




