草木のベヒモス
「そういう、魔力のようなチカラを失うとこのように、普通になりますが、これはわたしが直接あの怪物の残骸から取ったものですね。このビルのサイズの巨木でした」
「そうですか!」
やはりここはちょっとギルドのお仕事をフォローしたくて、わたしは頷いて、話を続いた。
「民譚に妖精の話があるでしょう。山森に住んだり、神秘的な湖でナニカの宝物をくれたり、冬も咲く謎のくさから得た魔法の果実や種が凄まじいチカラをくれるようなあれ」
「そうですね。みんな憧れてるあれ」
「そういうナニカだったんです」
「妖精が実存したんですか!?!?!?それを討伐した???」
あ、まいった。アストラさんがこっちをジト目で見てる。(そしてスープをすすってる)
「いやいやいや、妖精の話『のような』感じの、『流れ星』からの呪いのようなものを受けた化け物、ですね。わたしも妖精さんがいたらぜひとも会ってみたいと思ってるところですが……ただ理解しやすい例えでですね。それに近い、怪獣だったんです」
「あら」
「わたしは薬師として異国の花や薬草、樹皮などがどこでどう取れるか……薬用でどのような効能を持って使われるかなどを結構学んでいて……いまここに揃っているものの半分以上は言えます。あなたも知ってるはずです」
「はい、蔦やどんぐりみたいなものもありますね」
「でも、これ全部がその化け物の残骸一頭から剥ぎ出したものだ。
わたしが直接やったのです」
流石に「このそれぞれの植物が全部いちから取ったものだ」という言葉は彼女の注意を引いたのか、やっと珍しい反応が出た。
「力持ち!そして本当に変です!
でも、他の人がやってもよかったんじゃないですか?ステラさんの役目はアストラさんの、薬師で……私たちの代わりのちょっとの補助だったはず。この魔力素材を取るのは現地のギルドの方々がやってもよかったはずです」
わたしはその言葉に頷いた。
「はい、その通り、その場には他のチカラ持ちの人や、魔術で似たようなことができるマギアさんたちがいっぱいいましたが、ネロさまが見てる間、他の干渉がないまま取るのがまた大事でして」
「へえ」
「その残骸は険しくて敏感なもの。だから『水の堂』もわたしたち、ギルド長たちが来るのを待ちました。
他のマギアもだめ、務めてる方々も土の堂の工事現場で働く人たちもダメだった。その結果、いつもネロさまのこのような占星術のことを聞いているわたしが務めることになったのです。
そして、だからこそいっぱいではない……少しのサンプルだけを取ってきたので、このようにしょぼく見える。
でも、わたしの常識で見ると、凄く衝撃的なものなのです」
本心だ。
「そうですか!」
「このあとは機密ですが、凄くて恐ろしいものなんです」
そうやって、なんかフォローをしたつもりだったが、そしてちょっとは「確かに薬師さんがそう言うなら大変だったんだな」となってる彼女も……今日の寝るとこ辺りは多分「いや……でも流石にしょぼいな……あの人と金を入れてか……」になって、もやもやと眠るはずだ。
食事を終えてまた2人きりになったアストラさんは、そのことを言った。
「平凡の人は本当に良い意味でも悪い意味でも非凡のお仕事に興味がないんだよ。
稀にいるけど、逆にそういう人は平凡でありながら非凡の素質みたいなものを持ってるのと同じことだ」
わたしは食事のあと、本とメモをまた見やすく書きやすく配置をしながら呟いた。
「そりゃあ、どっかの白い娘のようだ」
「まあ……何回も言ってたね、ステラちゃん」
うん、多分このページであってるはず。完璧じゃ。
「わたしはですね、実際のところ、自分がいつ命を絶えるか知らないから、日差しの下走ることもできないから……ただそういう話が楽しかった。『白神女だと言われる呪術師』の話が魅力的だったのです。だからハマったわけだ」
「そういうのはこの世界の白い子なら、みんなそうかも知れないね」
「はい、これも何回も言ってるけど、別にフラマのマギアが全部そうではないとしても、みんなちょっとは最強のミカエル・グエラ学長のことを思って誇りをもらったり、自慢……ではないけど、ちょっとは似たようなものができるのと同じです」
「ふふ」
「それ以外は支えも誇りもなくて利得も特にないけど。本人がいちばん知ってますね。幻ですと」
「うん」
「赤い目はただ視力が弱いだけ。肌は光のせいか、いつも痒くて辛くてなんか原因だけあると喉は辛いし咳が止まらない。
そういうのは、どの病者も同じくて……年取るとみんな背負うことだろうけど」
「こいつ」
めっちゃ年取ってるアストラさんが、ちょっと笑った。
「でも、そう生まれてるから仕方がないです。非凡使いとして生まれた人ともそこは似たようなものです。非凡の固有魔力などは全然ないとしても『白神女とやらと似てる』と言うデメリットばかりの珍しさはあるから。
あんまわたしも昔のことを一々鮮明に覚えてるわけではなくて、今の自分は昔と違うような人だと看做して生きてますが、そっちは確かに心のそこに消えてない」
先から全然姿勢を変えてなかった(彼女はめっちゃばあちゃんだ)アストラさんは、ちょっと背を伸ばして目を閉じた。




