まあ「たたり」は終わったことでいいのでしょう
「今、ご飯のことよりそのアルマのルーティンをやる気満々だろう」
使用人さんたちに支えながら、階段を登ってアストラさんの研究室まであがる。なんでこういう時に今までふわっと浮いて飛んできた魔術を使ってないのかはちょっとは疑問も生じるけど、理由があるのだろう。とにかく、ギルドの建物の中ではちょっと「他人にかかる魔術」や「結果的に他人に当たることになる魔術」は制限される感じだ。なんでかな。平凡のお偉いさんも来れるから?
ふうん、そか。「いっけなーい、火の使い魔の制御ができなくなった!」として訪問中のお偉いさんが焼肉になったりしちゃうと、そういうのは確かに大変だ。大事なお知らせ案件だ。だから大体の魔術は便利な目的でも自分で使うことになってるのかな。自分が水を汲んだりする時はいいけど、他にはそんなに触れない事。
でも、だからこそ使用人さんたちの雇用も維持できるもんだ。
「そうですね。それがわたしの肌の管理の秘法ですから。ちょっと動かなくなると体が鈍って筋肉痛が酷くなるかもですよ」
「そう」
「薬師さんはその、魔術師ではなくてもエーテルのことをわかってる方なんですね」
「まあ、そうですね。山森を走って草を調べるために体力を付けてる感じです」
「なんかいいな」
「性に合うのは確かです」
最初は互い挨拶もしてなかった使用人さんも、ちょっとは喋れるようになってるのだ。
まあ……嘘つきました。これ、ぜんぜん「不器用な少女」の物語ではない。陽キャの何でも屋のステラ・ロサさんの旅だったんです。
とにかく、使用人さんは話を続く。
「実は、このように魔力お仕事の話ができるといいんです。それがステラさんには些細なことに感じれるかも知れないけど、実は大事。『薬師としてちゃんといる』『魔力お仕事のことがわかって、喋れる』この2つは、それ自体がわりとないのです」
「それもそうですか。いったん、適性が合うとマギアになろうとするのが普通ですし、そうできなかったらあっさりやめるのもまた普通だ」
「そうそう。『知ってる』『聞いたことがある』けど、基本は普通ではない」
「まあわたしはわたしも普通ではないもんで」
わたしはあえて頭を振って、白髪を見せる。
「はは、そうかも。そして……病気などに効く非凡の術もあまりないですからね」
「そうですね。山を割って湖を飛ばすような魔術師や非凡の騎士のような人も、病気になると難しい」
「なんか本に手を乗せて『痛いの痛いの飛んでけ』として本当に万病が治るなどは、伝説の聖人さまくらいですからね」
「確かにな」
もう疲れたように、アストラさんは不満を言い出した。
「いや〜本っ当に年は仕方ないのだ。私は若い時はわりと、アクアの子の中で活発にあっちこっち行って喋る、そういう方だったのに。本当に長旅は今回で終わりかも知れないんだ」
わたしは頭を振って返答した。
「いや、もうちょいできるんじゃないですか」
わたしは流石にそれはまだ歩ける彼女の健康の状態、そして今のように助けられる立場で、大袈裟だと思ったのでツッコむ。
「そう。普通の老人の中では一番あっちこっち行けるのは事実だよ。その面ではいける。特に、ギルド長の魔術なら本当に楽だけど、あのお方は忙しいもので」
その忙しいお方は、先確かに昨夜来てた中央堂の風の教授さんから報告をされるに、もうなくなってる状態だ。その忙しいあいだ、毎回自分がどっか行きたいと感じる時同行するのは出来ないんだな。
恩人で好きなばあちゃんだとしても、立場があるから。忙しい時は仕方がないのだ。
「そうですね。昨日か今日で、今になってやっと『大魔術に行く最後の馬車』がフィレンツェの大門を出てからの丸一日になってるとこなんでしょうか」
「それくらいなりますねー」
「うん。だからそれくらいの短い時間を使って色んなことをやるしかない立場だ。
そういう少しの時間しか使えないのは、本当に会うことも、喋れることも少ないと思いまして。
でも、そういうおさとしての殺人的なスケジュールの中でも、結構ネロさまの心配をしてるのです」
「その話はいい」
「そうですか」
まあ、何回もしてた、ラファエラちゃんかラファエル・ムジカギルド長になるまでの話にもなっちゃうし、今日でここで話すには「実はその人、ずっとわたしを盗聴してたんですよね!」みたいな話を流しちゃうことにもなりそうだから、わたしも適当に他の話題に移ることにした。
「現地はどうでしたか?」
そこで、使用人さんも話を変えてくれる。
「そうですねー
野営地はよく出来ていて、一夜泊まるにはぜんぜん問題がない。ちょっと不足な部分は、マギアさんたちが仮初のものを作ることもできますからね」
「なるほどー
その、『祟り』は解決できたんですよね!」
あ、平凡の人はそれが大事なんだ。
「ああ、そうですそうです。堂の方々がすごく頑張って、化け物を倒したと思います。昨年の『流れ星』をキャッチしたネロさまの功です」
「よかった」
「まあ、わたしは少しの手伝いをしただけで全体的にネロさまの話し相手。その過程のギルド長の風の魔術がとても気持ちよかったです。むしろそっちが印象的でした」
「それはそうだ」
彼女がちょっと笑うのに合わせて、やっとアストラさんの部屋に戻った。
このあとの素材の整理などは使用人さんは離れる。その「祟りそのものの扱い」だと言っても過言ではないので……不気味なことが無理な人には無理だということで、
まったく、エンブリオくんを誘おうと決めた時は思ってもいなかったのにな。




