消化するには時間が要る
「でも、きみの育ちを見るとわかる。最小、レグノさんは本当にこころの支えできみを客……と言ってるけど、弟子として育とうとするんだな、と」
「そう……ですね。いつも客だ客だ言ってるけど、いまさらウチが1人で彼から離れてもいけるところもないですし」
「あらあ」
彼女は口を隠した。いまさらなにに驚いているかぜんぜんわからない。
「だからウチの立場でも、旦那さんや他のひとと喋れるように、仕事が貰えるようになれるのは大事だ。だから賢くなっていきたいと思ってます」
「それはいいことだ。きみはまだ幼いけど、いい立場になったとして止まるのはそれもおすすめできない」
そこで、ウチは先から気になったことを奥さんに訊くことにした。そう言っても直接に聞くのはちょっとしたくなかったから……間接的に探った。たぶん、直接に聞いても「なんでそういうことを聞くの」になるような人だから、こういう場合、きっかけさえをもたらすと自分で明かすからだ。
「そうですね。彼もそう言っています。
贅沢なだけではなく、いっぱい勉強をさせてくれて……ウチは客観的に自分がどの状態でいるのかをわからないけど、旦那さんの話ではなかなかもう、職人のように考えてるらしいです」
「そうなのよ。実は私も職人というか、働いてた。今は引退して子育ちと家事をしていくと思うけど、もとは事務所の書記やってたの」
「へえ……そうだったんですか?字が使えるんですね!」
「まあ、そういうこと。だからおっとから聞いた話だけではなくて、レグノさんを見てはいるよ。最近は知らないけどね」
「なるほど」
ウチはてっきり旦那さんの話だけを聞いて判断してる人だったと思ったので、ちょっと反省。
やはり彼女が自分で話すのを待ってよかったと思った。
「なら、あれなのかしら。逆に、もやもやがぜんぜん消えてないけれど……きみが彼を変えたのかしら」
「ウチがですか?」
「実は私が知ってる彼のイメージとおっとから聞くイメージが少しずれてた。だからきみがこう私のわがままみたいにここに来ているのも事実だ。確認したかった。先も言ったけど、ただ仕事相手のひとが人を拾ってそのひとをどう扱うかもまたその人の勝手で、関わる事がないなら知らない事でぜんぜんいい」
わたしは彼女の正直すぎる性格がちょっとわかる気がして、こっちも素直に笑った。
「でも、娘さんの装飾品を務めるかもしれないことになってますから。
ちなみに、旦那さんが話してることです」
「そうなのよ。だから、私の立場では『おっかしいな!!!それは本当になんか見間違いなのよ、すぐとは言わない。でも私もその子を見る必要がある』とおっとをちょっと虐げた。そうしたら、まあ、互いに話は早いから、『ならあの子はいまあれこれするけど、いつ見る事にするか、お前の判断によって調整するよ』と言ったけれど。
それが~~~完全にひどい状態で!レグノさんを待ってると言うじゃない。そういうのは私は本当にしたくなくて家出してて今ここにいるのと同然だから、『そのこを明日連れてくること』にして、今になったんだ」
「なるほど」
つまり、家族から束縛されることからどうしても脱出をした人だったらしい。
「でも今も、きみはうちの事情で問題ない限りは、ここでちょっとは面倒を見ながらレグノさんたちが帰るのを待った方がいいと思ってるの」
「食事がすごくおいしかったです」
「ふふ」
実はウチはこれから毎日のようにここに行き来する事もそれもそれで凄く大変だと、この人が言う言い方の「子供らしい正直なところ」「嫌」だったけど、ぜんぜんレグノの旦那が準備してた保存食を食べながら本を読んで暮らすのが気が楽でよかったけど……それもウチがインドア派過ぎて、ふだんもレグノの旦那に「そとにちょっと出るのも、人と付き合いがあるのも大事ではあるが……」といぜんの「金髪の外国人さん」事件を思って悩んでいたところ。
そう思うと、今のこの人の付き合いはレグノの旦那がウチにさせたかった「人との会話という勉強」になるんだな、と彼の自動人形としての思考回路の速度にはぜんぜん及ばない、普通にこどもとしてゆっくり考えてそのあと答えた。
「考えてみれば奥さんのこころが本当にありがたいことです。これからウチも業界の方々と行き来して、最小、鳩での連絡をしながら生きなくちゃいけないと思うのに、家で勉強だけしようとしたこともありました」
「いいえ、それも仕方ないでしょう。誘拐されるかもしれない事件があったじゃない」
「それはそうです。だからレグノの旦那のジレンマになってました。そこを旦那さんが良い感じに解して下さったかもしれません」
「やさしいことを言うね」
「そうですか?」
「うん、すごくそう。
その……誘拐のことは、やはり白い子だから?」
ウチは頷いた。
「いったん無関係ではないと思います。この辺の人たちと見た目がぜんぜん違ったんです」
「それは……あれだ。きみになんか怖い事をして『白い子に関する面妖な噂』を試すとするひとだった可能性が高いよね」
「はい。もしそうではない……としたら、考えられる場合が別になかったので、レグノの旦那もいったん外の活動をきわめてなくした方がいいと決めました」
「でも、日差しはそんなに問題はなさそうね、おっとにそのことは言われたよ、日差しは大丈夫だとレグノさんが言ったって」
「はい、ウチはだいじょうぶです」
「それは不思議だ」
彼女は確かに「白い子は肌が弱くて、昼出かけると健康によくない」ということは知ってたようで、ウチの顔を見て頭を傾けた。




