金の縛りのこと、カオス・シード編
そう。考えてみれば私が名前の話を出した理由も結局、フィレンツェで受け入れた依頼だからかも知れなかった。チーム長はその点を突く。いや、彼は勝手にそのあたりの話をしているだけで、私が勝手に刺激されることだった。
「あの人、ノヴェッラ聖堂のファサードも作ってますから。知らない人も多いと思うけど、結構フィレンツェの人たちはみんな彼の作品の前を通ったことがある、ということになります」
「そう。なんか美術の話も音楽の話も書いたと聞く」
「器用だな」
そう。そのファサードの辺りが、わたくしがリソくんを拾ったところだ。後で調べたら教皇庁からの人が来てなんらかの調査をしたとか情報があったけれど、そこは詳しくない。ともかく、静かな夜で、
平凡の人の目と耳ではとても安らかに休める12月の星空と、
非凡の目と耳が開いたものには、狂いそうな非凡の流れ星がめちゃくちゃ降っていた1472年のことだった。
それは最近私がリソくんの言葉に回路を支配されてそこそこ調べてるわざ……「鋼の秘術」を触る時も思うことだが。同じようなものでも、平凡のものと非凡のものはその性質が違って、非凡の……違う属性のものの中でもその特徴が其々あって、非凡の流れ星は、たぶんその原因になってる何かの理由で出てきた平凡の方の流れ星より、もっと早かったり遅かったりしていて……それが「一年くらい遅れてきた」のが昨年、リソくんを拾った時の夜だった。
その、夜空が騒ぐこととも別に、サンタマリア・ノヴェッラ聖堂の広場はとても静かで。「なんか静かですな」と思いながらいつものように来年の始業を準備したり、以前のスペイン王国で使ってた名義は破棄してもいいんだな、とかを思いながら……私はその少女に出会ったわけだ。
リソくんのことは今も理解ができない。これからも、私をどう破滅させるかも知らない子だけど……その時の私は、本当に白神女と神獣さんに学んだ「学ぶということ自体」が結局どんな意味がありますか、などの、怪力乱神としては非凡の死とも等しい弱いメンタルのオートマトンとして、
白髪で金色の瞳をした少女に出会ったのだ。
最近その「鋼の秘術」のことを探究しながら感じたのは、彼女の「白い子」としての平凡の人としての身体特徴では、やはり金色の目は珍しいということで。「もし、『白虎』だとも言われる『鋼系』という人の化身がいるのなら、リソくんのような容貌ではないだろうか」とも思っていて、今もそんな感覚があるのだが、彼女は普通の白い子より随分できることが多いということを除いて、別に金の属性のエーテルが使える非凡使いではないのだ。むしろ、見えないエーテルを扱うという点で、霊媒に近いと感じる。
ともかく、私は彼女を拾っていったん手伝いをして飯を食わせないといけないから、以前は適当だった家事も料理も活性化することになって……もちろん、私がただの器用な大男だったのなら、口だけでちょっとやるフリだけをして「すまん、疲れちゃって」くらいのことになったかも知れないけれど、あいにく私は自他が言える「平凡の、全能」だと言える人だから。いったん今も建築協会の人に彼女のことを少し頼んでる状態で、頭のそこには帰ったころの季節の味のこととかを考えているくらいの、その子は普通の人の子だ。
でも、その「霊媒みたいに」見えないエーテルを扱うことがおかしい。
そう、「普通の非凡高い」ではないのだ。
多分それも彼女が普通の白い子で家族に捨てられてそのあまりの衝撃で心が空いていたところに、「非凡の流れ星」のなんかわからない夜空のものとしての心が入って合体をした結果なのではないかと疑っているが。実は、本人にももう言ってるが(「それは…カッコいいかも」と気に入ってた。単純な客だ)その時混ざったチカラで、今回「祟り」だと魔術ギルドの占星術師……そのうるさい人がより声が大きい自分の孫娘のような人をどうかよくも見つけて、先爆音を出しながらもう一回飛んで去ったけど。薬師のステラ・ロサ氏も共に行っちゃったけど……ここにあった非凡の出来事による「非凡の毒液」の残響が触れたのも、元々リソくんのチカラがその時の夜空から来ている、同じオリジンからのチカラだからできるのではないか。そして、それが彼女が普通は人の子の血液が通って赤く見える瞳ではなくて、金色の目を持ってる理由でもないだろうかと、状況証拠としては随分だと、ちょっと思うのだ。
「実は、先も言ったわたくしの客という子は女の子でね。まだ決めてないけど寂しいのではないかという気持ちも含めて、専用の道具や装飾品、おもちゃ……どっちになるんだろうか?そういうのも作らなきゃいけないという、とても平凡な仕事もあるよ」
「そういうの悩みますね。でもやはり宝石がシンプルでよくないですか?」
「女の子だから?」
「換金性が高いから」
「それはそうだ……」
思ったよりなんの浪漫もない返答が返ってきた。




