魚を見るのも初めてではあるが
「来たか」
「思ったより早かったですね」
そんな感じで、海を嗅ぎ空を想いながら、自分のこれからの新しい技を、修行の計画を描いていたわたしに、桜のドルイドであり社会に属しない悪魔ハンターとも言えるステラ・ロサちゃんに、これからの次の進みが訪れた。
「深紅の悪魔」から助けたお兄ちゃんが家から帰ってきたのである。
「遅くなってすみません。妻とお袋が色々準備してくれた」
結婚してるらしい。
「ええ、待ったのは全然大丈夫です。実はわたし、海は初めてで、素敵な時間を過ごしました」
実際に冬の海の光景で、色々学んだことも多かったと思うのだ。
青年は珍しいもんを見る目で、
「それは楽しいですか。俺はこの都市の生まれ育ちなので、海の良さとかよくわからないです。
でも、本当にこんな冬の外で大丈夫そうで、凄いですね。ドルイドさんは特別だな」
「ふふ」
他のドルイドさんたちにも勝手に変なイメージが生えることになるかもしれないけれど。
「これは先言ったお礼です」
「ありがとうございます」
このお兄ちゃんに「実はもちものが無くて、もしよかったら袋とか食糧とか安いもんを分けてくれると嬉しい」と言ったのだ。今の自分は服、杖、マント以外になんもない。そしてこれらも「星のエーテル」でその存在を維持している。平凡の物質でなっているものでは無くて、わたし自身の四肢みたいなものだ。本当の意味のもちものはなんもないと言っても過言ではない。
煌く不思議ちゃんの星の力で、わたしはステラ・ロサという名前を器としてずっと生きれる植物みたいな身だから、これからもずっと同じ旅をするなら、まあ、別にいいけど、これから強くなるとか、取引ができるようになるとか、ドルイドとして薬の一つでも使えるとか、とりあえず、現代人らしく生活するためには色んな物品が必要な訳で、何もかもがなかったのだ。
彼からのお礼の物は、予想とぜんぜん違う立派な革製のカバンだった。贅沢過ぎる。腰に付けるとちょうどいいか。
「本当に家に余ってるもんで、気にしないで下さい。あなたの服の生地とか考えるとちょっと地味ですが」
エンブリオ少年の言う通り、フィレンツェは結構イケてる国だったようだ。これが地味だとは。
どうやら自分の、クララの村が只なんも無かったから知らなかっただけで、思った以上にも自分が住んでいる土地は豊だったかもしれない。
これで薬草も、果実も、エーテルの触媒になれる他の色んなものも持てるだろう。
わたしはカバンと共に貰った食糧を見た。
「この食べ物は何ですか?」
「それは魚を塩漬けで干からびたものですね。それとパン」
「塩を!食べ物にそんな貴重なものを使うのですか。」
わたしの常識では、塩は基本的に薬用で使うものだ。毎日食うお肉に付けるものではない。
「この里ではそんなに珍しくないですよ。塩はもともと貿易の売り物なので、安いんです。塩漬けをしてると、腐る事無く長く持てるんです」
「そうなんですか!ありがたいことです。そして、魚を食べるのも初めてになりますね。楽しみだ」
「確かに内陸の人ならそうか。いつか、機会があったら炒めたものも食べてみてくださいよ。乾燥食品よりずっと美味しいんです」
「ええ、もし機会があったら。」
わたしは「悪魔と混ざり」である自分の事情などを考えて、都市での生活は考えてないことにしていたけれど、そしてお金も無かったけど、いつか気楽に、贅沢に旅ができる日も来るかも知れないじゃないか。その時は金銭を払って貴族みたいな食事をしてみるのも悪くなかろう。
「あの「悪魔」に襲われた時は本当にどうなるか分からなかったです。命の恩人に、このようなものですみません」
「いいえ、本当にうれしいです。大事にします。
そして、それらと戦うのは、ドルイドとしてもちょっと違う、ハンターともちょっと違う、わたしの特別な使命みたいなものです。無事で何よりですね。」
「本当にありがとう」
もともと、ものを貰うとすぐ発つと言ったので、わたしは場を去る準備を整えた。
「わたしは単身で、仲間もこの獣くらいだ。あの「悪魔」は世界に散らばっていて、そのすべてをわたし一人で倒せるわけではないけれど、この周辺もまた来ると思います。
もし機会があったらまた会うかも知れないですね。それでは、達者で」
「はい、元気でいてください」
カバンを腰に固定したら、父が狩りの道具を持ってたのを思い出した。安定感があった。
「あ、そう言えば、あの都市で塩を作ってるのですか?海水で?」
「そうですね。俺の家系は漁師なので詳しくはないですが、もともと郷の昔からもフィレンツェと貿易していたと聞きます。」
うん?話がちょっと不思議だ。
「フィレンツェと?なら、ここはフィレンツェではないんですか」
「フィレンツェですよ。でも、昔は他の国だったと聞きます。爺ちゃんの幼いころくらいの過去だけど。」
「なるほど」
あんなに贅沢な郷も、大事で国の名前が変わったりするんだ。ちょっと妙な感覚だった。




