セカンド・チャンス
そして、わたし。そう、桜のドルイドのステラ・ロサさんは中央堂の前にそういう話がなってるのを知らなくて、遠征は時間がいっぱいいるもんなんだよな、といつもの通り占星術師のせんせい、アストラ・ネロさんと話してた。
属性は木。でもそれは普段の薬草の見分けにちょっと使うくらいだ。真名に重ねた使命の「座標の衛星」でその偉さの粒、欠片を集める役目を持ち、夜空のものの怪物、深紅の悪魔から頭いい人々を助ける普通の何億歳の女の子だ。
「またの機会があったとは思ってなかったけれど」
「それはどういうことですか」
アストラさんの急な言葉に、わたしは思わずに言った。
「レヴィアタンだよ。そして今のギルドの4人、その前にギルド長のラファエル・ムジカと会ったことだ」
「ああ、その話ですね」
専属薬師としてわたしは大体彼女の話は聞いていて、物語が好きな人間として何回も何回も聞いても飽きなかったので(これは深紅の悪魔のわたしという個体としても、白い子のクララとしてもわたしの特徴だ)その話に適切に合わせた。
「非凡の占星術師はそのまま平凡の占星術師としても働きができるけど難しい。それは、自分が見れるものを見ないこともそれもそれで難しいものだからだ。あえて目を瞑ってものを見るようなことだ」
「そうですね。『あっちゃー星座が見えますね』といっぱい描いて計算したのに、それが平凡の星ではなかったとしたら、普通に働けませんね」
「そうだよ」
「つまり、他のマギアたちよりは逆に安定的に業界ぜんぶがパーになったとしても就職先はあったけれど、自分の色に合わないのも事実。それがミカエル教授とラファエル教授の流れで2回目のチャンスを貰ったと言うことですね」
「そう……ミカエル学長の強さがなかったら元々アルティが解体されるような危機だったが、傭兵集団のようなアイデンティティだけが残ると、それも私たち、非凡の占星術師などの人力はいらなくなるのだ」
「フラマとアクアくらい?」
「そう、フラマとアクアくらいいると、戦闘マギアとしては十分だからな。そして、私たちはアクアからの色を極めない科目になってるので今更戻るのも劣ってたからね」
「でもその分詳しいじゃないですか。わたしはネロさまたちが好きなんです」
「ありがたい言葉」
わたしは彼女の言葉に疑問があったのでそれをちょっと訊くことにした。
「でも、もしその場合になったら、遅くてもアクアに戻るのが平凡の占星術師よりは立場がよくないですか」
「私は戦いが苦手なんだ」
「なるほど」
「きみはなんかあれだろう。家族に狩人がいたから、悪い意味ではなくていい意味でよ、ものの触りなどが普通で慣れてる育ちの人間だけど、私は家系が曖昧に大きかった水のマギアだったから元々魔力お仕事で食っていけるように頑張るのが性だった。でもその道がアストロロギアしかないのを知って、『よくもこんな名前を貰ったもんだ』と当時の水の堂のようなところで思ったよ」
「少女時代にですか」
「うん」
わたしは以前エンブリオくんの本を見ながら「子供の頃からこういう環境で教育を受けたら」とかを思ったことがあったけれど、環境が合ってるけど向いてないのはまたしょうがないんだな、とちょっと、そして偉い立場は考えることが甘いもんだなとも、尖ったことをちょっと思った。
「まあ、ステラという名前を持つ人間もいますよ」
「そうだな」
わたしの冗談に彼女は微笑む。
正確にはわたしの名前、ステラ・ロサは本名ではない。元々深紅の悪魔は名前がなくて、わたしはフィレンツェのクララだからだ。今の姿形になった時に、「星化」の時に赤星、明星のようなイマジナリアを連想して「狼の星」ブイオさまが付いてくれた名前なんだけど、これからもずっとわたしはどっちのアイデンティティとしてもステラ・ロサなので、確かに星が運命みたいになってる。
星に出会って星になった人がわたしだ。
「なら、ネロ家の方々はアクアのマギアが多かったんですね。そしてレヴィアタンですね」
「そう。家系で売れる戦闘マギアが一気に全滅した。死亡か引退だ。だから私は、ミカエル学長が入るまでは大体平凡の占星術のようなことをやりながらちょっとずつ聖堂と、非凡科の下の横くらいの感覚で『あそこ、なんもやってないじゃないですか』『まあ、占いができるじゃないか』をやりながら過ごしたのだ。低燃費なので逆に組織の負担は少ない。でも、それも時間の問題だったと思うよ」
「まあ、わたしはそういうの、偉大だと思ってる派ですから。平和がいちばんですよ」
「うんーそうなんだろうか。とりあえず、私が適当すぎる占いを量産してギルドのそれっぽさを続いたのは事実だから」
「今の大きさになってる今、アクアとしての素質が十分あるけど、夜空が好きでアストロロギア志望のマギアもなかなかいたと聞きましたよ」
「まあそういうのがラファエルギルド長の偉大なところだ。お話を、本物にしてくれるから。だから話の価値が上がるのだ」
確かにその謙遜さもギルド長が貴女様を尊敬する理由なんでしょう、とわたしはちょっと思った。




