表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
603/611

累(かさね):キメラ・プラント討伐の夜

そこで、ウリエルくんは皿を整理して上がる気だった。


「そうだ。結構休めたし、ぼくはここで失礼して明日からの工事を少し準備して寝ようと思います」


「えー」


「野菜スープもいっぱい飲めたしね」


「それはそう」


彼の生徒でもあるエンブリオが、ウリエルくんを心配して言った。


「そんなに休んでないです」


「逆だ、エンブリオくん。いま済ませないと寝れないのだ」


「それはそうですね」


引率のせんせいは彼の性格やデュラの方針はよく分かるけど、「流石に今日くらいは」と思って、エンブリオくんに密かに問う。


「どう言う事なの?」


「デュラは早寝早起き朝飯はやねはやおきあさめしの一族なんです。いったん今の体系の土の堂はそうです。今日の仕事を終えて、次の自分たちに任せる。その硬さからデュラの長点が発揮される」


「それは知ってるけど、私が知るには工事の序盤は予定とそんなに変わってない」


「でも、結局『沼地の平凡の毒液』『土煙を弾いた時の地面』などが変わりました。もう違う現場なんです」


「それはそうか……」


あたしはその言葉を聞きながら「へーなるほど。土のマギアの感覚でも感じるのか?」とちょっと思った。


「はい。だから、他の属性のせんせいなら徹夜で何々を決めて進む……ような真似をしても全然いいです。寝不足になってもその後寝るから。ちょっとは戻るし、マギアは普段魔術を使う時に1日くらいの徹夜は割とできるからです。

でも、デュラはそうすると寝不足による平凡の物体の事故の危険性が非常に上がるのです」


「まあそうだな」


「それは土のマギアとしてはずっと警戒すべきことなんです」


ウリエルくんは2人の会話をちょっと補った。


「まあ、実際この大魔術の設計をした時は平凡の技術者さんとけっこう遅くまでやってたけど。明日からの『後半』は平凡の岩を動かす大きいお仕事です。厳密に行かないといけない」


引率のせんせいは疑問が晴れたようだった。


「なるほど。他の属性ならそれくらいは本当はパフォーマンスに影響を及びません。『あ、今はなし』『おれがカバーする』『大丈夫、スフィアが被ってた』のように済むこともできるから。でも、同じ非凡の仕事だとしても、平凡のものとしての土と石、岩を動かすデュラはミスすると大変なことになるのですね」


ウリエルくんは頷いた。


「はい、人が潰されます。その後の『今はなし』はないですから」


「理解しました。お疲れ様です」


「はい、失礼します」


「なら〜〜〜あたしはもうちょい食べて寝るよ」


「わかった。いつものことで悪いけど、先に去る。いい夜になることを祈るよ」


「うーん」


あたしは手をフリフリして、今夜は引率のせんせいの言葉通り、いっぱい食べて寝ようと思った。明日からは、あたしたちアクアたちもここの工事現場で必要な物品……主にお水を運ぶことに頑張らないといけないから。水の操作のような魔力は、普通に体力のように回復してないとダメなんだ。


「貴女様はきっと大きくなります」


助教さんの話に適当に返事した。


「当たり前だあたくしは人が大きいからね」


「ふふ」


そう言いながらステーキをもう一皿貰った。うーんあたしの「フロスト・ノヴァ」は最強だった。


薪が焼いている。


焚き火の音が心を穏やかにし、マギアたちが触った木材はそれがとんだ怪力乱神(かいりきらんしん)の体だったとしても、どんな奇妙でよくわからないチカラを得て毒の紫色を持ったものだとしても、普通に使えるものにした。平等に。平穏に落ちて焼かれる音を出す。その音を静かに聞いて……

(わたくし)は強者の接近を感じ取った。ウリエル・モルテ氏だ。


▶︎土の大魔術師、ウリエル・モルテ◀︎

今の魔術ギルド、強すぎていないか?


「大魔術師さんですね」


「おや本当だ」


私たちは平凡の技術者。この後の沼地を整頓して、元の農地に戻して水路や壁、橋などなどを建てる。納期が厳しくて、それでも洗練されてるお仕事だ。ただ、平凡の歴史書には残りそうではないが、ここのものは私が知る限り報酬とプロそしての充実感の方が勝る人間だ。


「祟り」が起きた地域を「あんなことがあったとは、嘘みたいですね」のように直すのが私たちの依頼。数えてみると人の子たちの聖堂の権威とも直結される……なかなか大事なお仕事を持ってここに来た。


「こんにちは、レグノさん。他のチーム長も集めてくれませんか」


「どうも、ウリエル様。失礼ですがどんなご用件でしょうか」


「ぼく含めて、先の戦いで色々やってて。現場の状態が変わったので先に伝えたいと思いました」


「なるほど、わかりました。寝てるものも起こしますか」


ウリエル・モルテは(かぶり)を振った。


「起きてる人で十分です」


「わかりました」


私も責任を取ることになりがちだった「毒液事変」は、先のあの人たちの活躍で終わった。あの「奇怪巨木」とやらが討伐されたのだ。実は、私は同じ森のものとしてなんか刺すような視線をずっと感じるけど……いや、わたくしは平凡の社会に生きるんですよ、話しかけないでくださいという感じで、ずっと無視してる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ