勝利宣言
「そうだね。いったん、状況はこうだ。
❶毒液事変は本当に解決!……できたと思われる。
❷あたしが制圧した乾燥した木材がこちら。非凡のものだから、あとの調査が済んだら廃棄した方がいい。
❸そして、ウリエルくんが持つ『沼地の全ての毒』だ。これがたぶん奇怪巨木の亡骸に接近したらこいつ、復活ができます。だから破棄した方がいい」
「自分のチカラの源ですからね」
引率のせんせいの言葉に、あたしは頷いた。
「はい、だからわたくしは本体の亡骸はアストラ・ネロさんやギルド長が見るとしても、あの『泥』は魔力素材として利用しようとかは諦めた方がいいと思います。危険ですよ」
ほかの戦闘マギアも同意した。今のピリピリしたみんなのスフィアはずっと維持できるものではない。本当にそれが解けてるあいだ、残った沼の水がこの亡骸に触れると、本当に先までの戦いのラウンド2だ。
「そう。だからぼくも別に『夜空のもの』にずっと触れるのはごめんだから、上手く処理したいんだ」
あたしは手をあげてみんなに見せた。
「物事は順番だ、『土の堂。』いったん勝利宣言からして、その残業としてあたしたちがチカラをいっぱい入れて、きみが持ってるその泥を浄化する。そしてあたしがきみに残ってるかも知れない邪の魔法効果を解けます。水の堂は今回の前半の締めをそう示します」
「『浄化』が先がよくないか?準備に時間が要るのなら、地面に埋めておく手もある」
「いや、これが水の堂のやり方だ。そして、きみの『封印』よりコストが安くて、きみは今無理をしすぎている」
「うん、正直今維持してるのがいちばん安定してる感じがするんだ。ほかのデュラたちが触ることすらよくない。このまま無くしたい」
「わかった。フラマとアリアはどうでしょうか?」
2人はあたしの話に答えた。
「残ったカスを焼いて煙も納めたら、うちらフラマは本当に帰るまで皆様の護衛……ほとんど温熱係になると思います。任務完了です」
「似たように。煙を晴らして皆様が『後半』の間、風邪引かないようにスフィアを管理します。平凡の普段の納期よりあり得ないくらい短いですから」
「なら予定通りで問題ナッシングだ。ウリエルくんはどう?」
「問題ないよ」
「はい、ではその感じでお願いします」
「はい」
ニコっと微笑みながら、中央堂のせんせいはワンドを備えて頷く。
「そう、話をいったん終えるのが大事ですよね」
「その通り」
「『宣言する!大魔術の、沼地の奇怪巨木は倒された!魔術ギルドの水の堂、ガブリエル・ブリナ、土の堂、ウリエル・モルテ、そして四属性を含めた戦闘マギアのギルド員たちにより、邪の毒の草木の魔物は倒された!みんなの勝利である!!!』『魔術ギルドの各員は、周りの他の毒草の魔物がいるかもう一回ダブルチェックしながら、司令部のところに集まること!アクアのマギアによる浄化魔術を行う予定だ!水の堂の各員は浄化魔術を準備せよ』」
「うむうむ」
「ぼくはいったんやること全部終えてから『終わったよ』宣言した方がいいと思うけど。まあ、それもデュラの性格かな」
「そうですね。考え方の差です。私たちフラマは両方の考え方がわかるから言えるけど、『処理を確実にしてから』次に行くのは例外処理が容易い。そして『いったん閉めて、残りもやり直し』は勢いがいいのです」
「アリアの考え方はどちらでもないけど。魔法生物の制圧が行われてる以上、平凡の工事を始めながら跡形を片付けて、同時にギルド長も非凡科の責任者もここに呼んで盛大に大魔術の終結を宣言するのがいちばん早くて熱いと思います」
「盛りすぎます……」
「まあ、そういう考え方の違いがぼくたちマギアの魔力そのものだ」
「そうですね」
「お疲れ様でした」
「外から見れました!『フロスト・ノヴァ』さすがです!」
「ありがとー」
「土の堂のウヌス・マギアはなんだったんでしょうか?ああ!まだ毒が残ってる、なるほど!邪魔しました!」
「お疲れ様でした」
「あいよ」
それぞれの堂の生徒とまとめ役のギルド員たちが集まる間、あたしも「野菜スープが飲みたい」と猛烈に思っているウリエルくんに同感して、話をかけた。
「先はどうだった?変なものに触れたんでしょう。そういうのをあたしはずっと見て読んでいるのだよ」
そして、彼は結構安易く認める。
「そうだな。本当に奇妙な感覚だった。遠くて……魔術理論の常識が溶けるような。きみがずっとワインを飲むのも納得した」
「葡萄汁は普通においしいし」
「そうだな」
「お疲れ様でした、学長」
茶髪の髪からは先までの魔力の扱いから残った群青が少し見えつつ、本当かわいいな〜といつも思っているあたしの助教さん。話をかけてきた。
「うんうん。今ウリエルくんが持ってる『土煙』全部を浄化しようと思うの。みんなをまとめよう」
「はい、わかりました。本当に大きいですね」
「今野菜スープのことしか考えてない」
「それわかりますー」
とほほ、と辛そうな笑みを見せる。彼女もそういう苦労を知っているからだ。
あたしたちは集まってるアクアたちに指示して、本当にアクアのお仕事が「おまえを信じてワインを飲んだのにこのザマだ」になるかも知れなかったこの本当に邪魔な魔法生物。その最後の毒を仕留めようとした。




