ウチは静かに真名を探る
その、始の時代の魂である……まだ火/水/土/風の四属性だけのエンブリオさんが見たのは、もちろんウチの縛られた社会に潜む仮の姿であるリソくんである。神話生物のウヌスとしての質量を持たないウチは、仕方なくクララというこの死に際の娘になって、クララになることに全てのリソースを使った……しかも、なのに、ウチの微量のクブスの偉さではどうにもわからない……なんかその直後、不思議な出来事まであって今に至ったのだ。ここのアイディア・ヒストリアではウチのことを「星のワンちゃん」だと呼んでいる気がする。(ウチは真名を嗅いで探ることが上手い種族だから、小麦粉一粒くらいでもそれくらいはわかるのだ)
「ふん、やはり外は苦手だ。ウチはインドアを好むがね。大事な『全能』のアルベルトさまが遠征を赴くと言うのだから、ちょっとこの目で見たくなったんだよな」
「子供らしく言いなさい」
そこでウチと一緒にいたのは、建築協会から来た職員の人だった。レグノの旦那、アルベルト・レグノによると……たぶん、お嫁さんが宝石のことが好きで、彼がウチによって脳みそを破壊し「やはり新機種の開発……には、平凡の社会に混ざる心の言葉の媒体が必要だ。それに相応しい素材は、やはり宝石が流行り物だな。それは私が僕だった時期からそうだった」とか古びた老人機械みてえなことを言った原因にも、だから「自動人形の6体の後継機」を作り出すために……土の堂のウリエル・モルテさんから報酬を貰うため、今回の大魔術とやらに参加する動因にもなってるから。間接的にこの人のお嫁さんはこの宇宙にだいぶ大きい影響を及んだとも言える。
だけど、ウチもクララ的には記憶喪失であるからあまり社会の常識に詳しくないが、アルベルト・レグノの英才教育を受けてなんでもやればできる系の人間だ。その、宝石の「ピカピカする」「固くて透明な」性質はウチも何気に気に入ってる。同然みんな好物になる鉱物ということだ。あはは。
うん……多分オリジナルと区分ができて、ウヌスとして成立できるように、精密に作られるはずだ。
「仕方ないです。ウチは将来金属職人になると決めたから。アルベルトさまからその為のさまざまな技術を学んでいるのです。厳しい幼少期を送っている美少女なんです。だから彼のような言い方が移るしかない」
おじさんは頷いた。彼の帽子が動くのがわかる。
「それはそうか。きみのことは聞いたことがあるよ。昨年の夜に、あっちの聖堂前で拾ったって」
「はいそうです」
「彼が以前より食事を気にしたり、より協会のお仕事に積極的になったのも、気使うお客さんができたからだ。それは私や他の技術者たちにもいいことだから、肯定的に思ってるな」
「そうですか」
彼はウチの白髪を見て訊いた。
「体は大丈夫か?聞くには、きみのような白い子は体が弱くて……視野が曇るとか、日差しが当たるとすぐ調子を崩すと言ったけれど、いったん私から見るには大丈夫そうだ」
「はい。それが、ウチは大丈夫な方らしくて。自分自身もあまりわからないけど、たぶんもし元は悪かったとしても、アルベルトさまの客としていいもの食って生活してたから、よくなったとも思われます」
「なるほどね」
「確かにあまり出ませんが……外に出ないのは、ただ白い子だからですね。ここフィレンツェは魔術ギルドの人が多いから平凡の白い子くらいそんなに珍しいカラーでもないし、治安もいいです。でも、彼は完璧主義者だから、心配するようです」
「レグノさんの仕事を思うと……うん、確かにそうだ。大変なんだね」
「いえ、ウチもインドア派なので、それは別にいいです。やることもいっぱいだし」
「そう」
実は彼、レグノの旦那がウチがあまり外に出てほしくなくなったのは、いつか現れた不思議な金髪の外国人の人の影響だ。その正体が未知のままだから控えめに隠すのだ。今日のように逆に人が多すぎる時ではないと、いつ同じような人が接近するかわからないだって。(確かに彼は彼の連絡が届く「協会」の人はなかなか信頼するらしい)だけど、そんな非凡のことは別に平凡の技術者さんにやっても仕方がなくて、今の話題にも合ってなかった。
「ウチの金属工房への先行学習として、彼は今回、魔術ギルドから魔術用の宝石を少し貰うことになってるらしいです」
「そうらしいな」
「彼に負担になってないか、ちょっと申し訳ない気持ちもあるけど、ウチが将来恩返しがちゃんとできたらそれでいいものだと言われました」
「そう、そういうものが子供と大人だよ。元気に続いたら、私の子供の結婚の時はお仕事を頼めるかも知れないな」
「あらあ」
「レグノ氏から1から学んで、他の工房で極めると、それはいい職人になるに違いないから」
「うん、やはり『全能』への信頼度が半端ないですね」
「そうなんだ。彼、本当に設計から力仕事、アフターケアまで自分でできるから。たぶん体が7個くらいあるのではないかと思えるくらいだ。でも、人は1人で生きるのではないから。私たちの協会といろんな事務所と連携してやっているね」
やはりこの世界を何千年も生きたまであるようで、アルベルトの旦那の評判は凄いものだった。
チェンソーマンのレゼ編を見たら、負けたくなくなったリソくんが急に発言権を奪取しました。心の流れで書かれてる小説だな。




