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わたしはウヌスだ

フィレンツェは基本的に地帯が高いらしい。だから防御しやすくて川も利用できる今の地域が都市として発達したとわたしの親愛するエンブリオ少年は熱気をもって話していたが(別に市内の出身じゃなかったのでは?)わたしは確かにそこそこの山が多くて、この中でわたしの村を探すのは大変だなと、改めて思った。


「いつか見つかるかも知れないけど、その時はもし生きていたとしても両親も弟も他の村人ももう老人になってるかも知れないです」


「会う気はなかったのではないのか」


「半々です。クララとして懐かしいけど、白い子としての自分と決別したし、死んでたし、大きくなりすぎてよくわからないピンク色の服と妖精のマントで身を纏うものになった。わたしの立場でも半分会いたくて、半分戻れないのがわたしの現状」


「そうだな。変わり過ぎた。今のおまえは多分おまえの話のドルイドのばあちゃんもわからないくらいだろう」


「まあそれはばあちゃんはわたしに木属性の素質がないのは確実に知っていたから。属性が完全にありえなく違うと、別人なんでしょう」


「そう。たぶん非凡使いの間はよりそうだ」


「わたしもそう思うのです」


非凡使いは自分の属性が明瞭(めいりょう)ではなくてただの「見て聞く」才能がある人からも、その属性や、持つ物語性によってもともと雰囲気が違うらしい。少年が言う、同じ元素魔術の使い手だとしてもそのそれぞれのウヌスのマギアがちょっと違う場合も、「あ、この人の魔術」というのがわかるらしいのだ。だからエーテルのことを見る人から見て、なんらかのエーテルの才があったかも知れないけど体が病弱美少女すぎてなんもできなくて、低い視力とずっと来る耳鳴りでエーテルの適性を発展するか発見することもできなかったわたしだとしても、クララはいったん「木属性の素質」はなかった。それはわたしがエンブリオ少年に木属性の才がないのをわかるのと同じだ。自分の属性は、わかるのね。

そこでもし少年がそのちょっと言葉を当てる才能とわたしへの愛と熱意を入れて何百年かけて木属性の才能を目覚めるとしよう。(もちろん彼は普通に人として生きると思うので、これはただの戯言だ)彼のことを知る人ならその「木属性としての面」を見ると、まあ、似た顔の他人か、とか思うかもしれないのだ。わたしクララのことが正にそうだ。


「わたくしは普通にくららちゃんは霊術師として存在してたのでクララとしてのおまえの本当の才能は霊属性ではなかったかなという考えもちょっとするが、まあこの旅をしてから今までそんなになんもやってないまま過ぎたのではないので、普通におまえもわたくしも木属性の使い手としての経験を積み過ぎた。もともと深紅の悪魔の成れの果てとしての質量を提供して消える予定だったくららちゃんは、その意味では今は残ってないんだな。それはわたくしはおまえにとってはちょっと奇妙な気分になると思う」


「そうですね。確かにそう。先言ってた『わたしは完全に変わったから』もそういう自分が自分を見る認識、感覚、経験が積んでいるものだからです。これが平凡の絶対結果(アブソリザルト)。もし、深紅の悪魔としてのわたしがなんらかの理由でその姿やチカラを戻すことがあるとしても、わたしがブイオさまに出会った出来事はウヌスなので、わたしの今のわたしはここの1人しかいないということです。霊術師のステラ・ロサさんはいない」


「ワンちゃんになってなかったからな。もしかするとクララの見た目の体をしたワンちゃんが、その体の霊属性の素質に合うからこそもう一人のおまえとして生きていけたかも知れないな」


「そういう可能性もあったか」


わたしは深紅の悪魔としてはちょっとそれも存在の消滅だったけど、もともとわたしはこの世界のどっかで生者と死者に感染して風邪の症状と戯言を強いる病気としてずっと存在している灰色の呪いの唯一な意思ぽいものなので、呑気な感覚だった。確かにわたしが操作しながらサンタマリアノヴェッラ聖堂まで来てた「くらら」ちゃんがその存在を維持する事が限界で、それでも彼女の平凡の人としての体の物体が残っているのを星のワンちゃんが新しいこの世界の体を作りながら再活用をすると、それもそれで「クララのように行動するからクララである」なんだろうか?

それは確かにエンブリオ少年の話通り、深紅の悪魔としてのわたしよりもクララの精神が化け物の感じがあったかもしれない。


「いや、普通にフィレンツェのクララ(1462年生まれ)の精神が化け物だろう。おまえは深紅の悪魔としては別に最強無敵の心得を持ってるからこの世界まで来れたのではなかった筈だ」


「むう」


それは事実だけど、でもわたしも自分が怖すぎて記憶をぜんぜん消しているなんらかの時期を、なんとか頑張って生きていた気がするので、その評価にはちょっと反論したい気持ちがあった。


「でも実際そうだろう。賢者の国の代表が縛った条件をなんとなく通ったから行動ができたのではないか」


「それはそうですけれども」

最後のくだりは作家が直前の会社でけっこう不快だった面談を使って再構成したものです。ブイオさまもステラ・ロサさんも別にプロレスはやっても完全に関係が終わっちゃうほど戦ったりはしません。

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