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本の少しの話

「そう言えばブイオ様」


「なんだ」


雪のせいか、より鮮明に見える夜空の星々は流石(さすが)にデカくて綺麗で壮大(そうだい)で、

遠くて、キラキラで、ずっと続く。

心の中の些細なことは、「今 ()ってる人が戻って来なかったらどうしようか」とか「いつもの地方に戻る自信がない」「海の水飲んでみると流石のわたしもお腹壊すかな」などの小さな事は溶けて去る、散っていくような

毎晩毎晩(いつものよる)奇跡(きせき)みたいな風景(ふうけい)の下で

お星さまの狼のモフモフに座って、奇跡そのものの体と、視力と、腕力と、使命を手に入れた、わたし

普通過ぎて特別すぎる田舎娘である、わたしは

特に(おさ)める必要がないから夜の中でずっと頭を白く光らせている

桜のドルイドのステラ・ロサちゃんは()えた。


最悪の嘘で、神様にしていきたいと思っている星の狼さまに問えた。


「結局「深紅(しんく)悪魔(あくま)」は、ブイオさまにとって、(たみ)なんですか?」


座標(ざひょう)衛星(えいせい)」の役目を貰ったから、薄々気にしていたことを口にした。

「深紅の悪魔」に力を与える神様みたいな存在、という前提(ぜんてい)は、あいつらに、何かの神様を(あが)(たてまつ)るような心があること、知性(ちせい)があること(なんか知性はありすぎて(あふ)れて物語の表現が大変になりそうだけど、ともかくだ)などが一緒に嚙み合って話になる事だから。

獣には獣の神様がないから。人に獣の神様がいるだけだ。

(作家:ここの神様は、八百万(やおよろず)としての概念(がいねん)だから、凄い精霊さん、妖精さん、天使さまみたいな感じです。ここはダンテ・アリギエーリ「神曲(しんきょく)」の国なんです。)

その中で、特に(ことわ)れてもいい質問を飛ばしてみたのだが


狼さまはちょっと迷って、


「そういう話はもっとこう、話が3巻くらい進んだ(あと)にすべきではないか」


回答(かいとう)拒否(きょひ)った。

「そか」、とわたしは思い、ちょっと笑う。


「「少年」が好きな騎士小説などになったら、ですね。

はは、確かにそうかも知れない敏感(びんかん)話題(わだい)だった。」


つまり、今はそういう事を(はな)すにはわたしはまだ弱くて、物語全部がつまらなくなるということだ。

御伽噺(おとぎばなし)としたら、今だに「神秘のアイテム1個目」はともかく、旅を経ってもないところなのだ。そういうのは「神秘のアイテム2個目を貰った(あと)」あたりに()かされるのだ。


物語性(ヒストリカル・アイデア)捏造(ねつぞう)しようとする事は、重くて尖ったことなんだぞ」


「それは大変だ」


だから代わりに、ほんの少し、(ほん)の事を考えることにした。

わたしが本を手にしたのは、以前「少年」の家が初めてだったが、本の話は以前も聞いていて、

母にも聞いたことがあって、

御伽噺はドルイドのばあちゃんに聞いて大好きだから、御伽噺を集めた本などがあるといいな、と思ったのだ。


そう言った話は「白神女(しらかみおんな)」以外は大体作り話であることもわかっていたが、

あ、ドラゴンの話もマジだったようだ。「白神女」以外は大体作り話であると思っていたが、

そんな作り話は証拠(しょうこ)も無くて証人(しょうにん)も無い、そんなに有意義(ゆういぎ)であるかというと、ただの暇つぶしだ。

でも、本に残ると、後の社会の未来の子供が読んで、「ふむ、過去の大人はバカみたいな教訓(きょうくん)を残そうとしたものだ。あたしの社会と全然違う。面白い。」とか感想ができるから、そりゃあ、とても素晴らしい事なのではないか、とか思っている。


文字が読める子供なら、だが。


ちなみにわたしは文字、ぜんぜん読めなかった。

ドルイドのばあちゃんに文字の読み方を(おそ)わるとか、そんな便利主義(べんりしゅぎ)な設定はクララちゃんに無いのだ。狩りの残り物はドルイドが得るのが非常に大変で、条件がよくて来てただけだ。そして、わたしは彼女にとって「白神女」という憧れの存在を連想させて、だいぶ話を興味津々に聞いてくれるから、それは気持ちいいのだ。


「なんて(いや)なこどもだ」


「いや、ここは結構(けっこう)わたしの大事な思い出みたいなところなんですよ」


そして、不思議なあの子の知識も、「賢者の国」の学校に(かよ)った「深紅の悪魔」である、「灰色の呪い」のわたしの混ざりの知識も、さすがに未来の文字が読める境地(きょうち)では無かったのだ。


まあ、今はなんも()って行けない身軽(みがる)のドルイドちゃんなんだからいいけどよ。

持ってなくても、少年や他の頭いい人を通じて、本を読むことはできるだろう。


他の人よりすっげぇ余っている時間は、そんな勉強に使った方がドルイドぽくて良いかも

有意義かも知れなかった。

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