秘術、クララ式エーテル操作ということか
「そう言えば、クララくん。その『クララ式エーテル操作』というものは上手く動いているのかね」
「なんですか狼の星さん。『操作』のことにお興味を。『理学』に入れたくなりましたか?」
「それは別にいいよ」
「別にいいか……」
「わたくしはただ、おまえが『香水魔術』を考案した時に、けっこう体系はあるんだなと思っただけだ」
「ふうんなるほど。いいでしょう。説明します。わたくしめの素晴らしいエーテルなんですが、基本的にわたしが白い子だから出た方法なんです」
「白神女の影響だとも言えるな」
「そうです。わたしの村はエーテルの適性がある人はぜんぜん無くて、わたしもぎり見える、聞けるだけ。でも木属性の適性はないから白神女にはなれない。平凡の人の子の子として視力もよわよわで耳鳴りが酷いからもともとエーテルのことがよく感じれないそんな体でした」
「つまり、自分の素体はいいと思ったけど不自由だったか」
「そうそう。その通りです。実際にドルイドのばあちゃんが見たらわたしは結構惜しい子だったんです。話をよく聞いて、エーテルの素質は無いが見る事はできる……あれだったらしい。ここはちょっと状況が曖昧です」
そこでわたしはちょっと控えめに言った。
「ドルイドのばあちゃんの呪術は見たじゃないか?なら見る素質はあったということだ」
「それはそうだ。エーテルを見る素質はありました」
「そして、ドルイドから見たら白神女を連想させる白い子が自分に親しくてドルイドの術にも意欲的だ」
「そうです。だから彼女は自分が話せる話を、最小木属性の適性がなくて寿命が短いと思われる商売の先の子には、いちばん精一杯丁寧によく対してくれたと思います。とてもありがたいことです。だからわたしはわたしの弟くんのおかげでドルイドのばあちゃんから聞いた様々な戯言を復習したので大体覚えてた」
「同じ言葉、似たような言葉をもう一回共有すると頭に残るんだな」
「そうですね。そういうコツは自然に知りました。そしてそれがわたしが生きてる間も普通に忘れて、何がなんだかわからなくなってなくなると惜しいな~~~と思って、自分なりの最強無敵究極完璧の世界のエーテルの方法を作ろうと思ったのです」
「いきなり壮大だな」
「それくらいしなきゃ。でももちろんドルイドのばあちゃんさえ別にわたしに普通の英才教育はしてくれなかった。文字を教えてくれたり本があったりそんな感じではなかったのです。ので、わたしはそういう記録ものもなくて目も悪くて耳も悪くて弟に話すことが精一杯。ここでは作り話のカタチが唯一な癒しであり脱出口だ」
「ふむふむ」
「だからクララ式エーテル操作はわたしに合う、なんでも属性エーテルにも対応できるものとして考案されたのです。つまり、まずは自分の目と耳をよく働かせる。気絶しないために身を動かす。苦しむ時に適切に心と体の感情や苦痛を分離して客観的に俯瞰する。これらを、『エーテルの操作のように自分の心と体を動く』のです。そして、木属性ならまあいいけど、どんな属性でも対応させる。最終的には、森の姫様になるのです。そのためのクララ式エーテル操作」
「なるほど」
「だからわたしは深紅の悪魔の成れの果てとしてクララに完璧になれたのです。動くことができた。人を知ることができて、人になる事ができたのです。クララとしてもそうです。わたしは基本的にわたしのように生きるとわたしだ。もともと物語に没入して、白神女に投影した。今は心の底で『本当に、せんせいが白神女なんじゃないの???』とか妄想を思っているほどにですね」
「何気にとんでもないことを言った気もするが」
「ただの妄想です。ならわたしはなんらかの理由で頭が白くなる前の白神女の素顔も笑顔も覚えてるチート野郎になるのです。全世界のドルイドたちに嫉妬される」
「それは大変だな」
「ありえないと思ってるけど、もしそうだったらドラマチックですね」
「そして、ドルイドのばあちゃんに聞いた話に基づいておまえが作り出した体系が香水魔術を維持する今も上手く使われているから、これからもおまえはこれを『桜のドルイドの呪術』だと主張してもいいだろう。そういうのをちょっと思っていたから、今『操作』のことを訊いたのだ」
「そうですか?それは結構ありがたくて気持ちがほかほかになる評価だ」
「そうか」
「わたしは厳密に言うと9歳から10歳に行く夜に死んでますから。10歳も生きていない女の子が作った杜撰すぎる秘術なんです。アストラ・ネロさんの話の通り自分以外はこれを信じる人も無くてわたし以外は聞いて『なぁにそれ』になると思いますよ。もちろんエンブリオ少年はわたしのことがこの宇宙でいちばん好きだから聞いてくれるけど別に彼のエーテルの運用が『操作』に変わるわけではない」
「それは別におまえが望むことではないのだろう」
「わたしは4属性に自信が付いた彼のことがけっこう好物です」
「そか」
わたしは振りにチカラを入れ過ぎたので、ちょっと姿勢を調整した。
「まあ『クララ式』に戻ると、いったん何でもかんでも三つに分けます」




