器、大魔術まえ
「それはどういうことですか?また神話生物理学の事ですか」
「そうだな」
「どうせあれでしょう、なんかその時という瞬間に歴史に印の石ころみたいなものを置いていて、それを目印にしているとかそういうことでしょう」
「そうだが……」
わたしは股関節のストレッチをしながら頷いた。アストラ・ネロさんと話をし過ぎていて、この世界の変な話が好きな子としてはクララの理解能力のMAX状態になったかも知れない。
「と、知ったふりをしてみましたけれど、わたしはもちろん魔術理論や理学などはわかりません。ちょっと完全記憶能力を持って、人々の喋りを完璧に覚えるくらいの女の子なので、別にわたしの器が星のエーテルがどう動いて置かれたのか、今は理解ができませんが、初めて『そういうもんがあるのか』と感じたのは、少年からわたしの非凡のものとしての本質が『花びら』だと言った時ですね。看破された夜でした」
「結構前だな」
狼の姿のブイオさまは意外のように上半身を上げる。こういうのはいつも「心の言葉」はわかるが、普段のどうでもいい考えのうちに入るので……わたしの心のどっかにコロコロと回ってるので、ブイオさまも普段は聞けず、初耳になったりするのだ。
「わたしは結局凄く小さい深紅の悪魔が星のエーテルを浴びていて粉々になったまま動いているもの。普通の深紅の悪魔として、これは本当にへんな状態です。コアも150㎝の身長のサイズに、ハサミを1セット、翼が2セットで足がいっぱい。その個体を基準に何もかもが動いた方が自然的だ。わたしがクララとしてドルイドのばあちゃんに聞いた神秘的な御伽噺を聞きながら想像した自分の想像の中の最強の呪術のようなものを思った時も『クララ式エーテル操作』を考案した時もそういうのは常識のようなものです。記憶や認識が宿るのは、その我の中。でもわたしは構造を考えると花びらならどっちにもその記憶が共有してる。少年に不確実だから『花びらをいっぱい失うと記憶喪失が来るかもしれないな』とか言ったけれど、たぶん可能性は低いです」
「まあ、ステラ・ロサさんの人の子の子の姿として維持できるかがその前の問題に来る筈なので、わたくしも記憶喪失などのことを心配する必要はないと思うんだ」
「そうですね。なら、わたしはコアがいっぱいだと言う。でもわたしは今ストレッチをだいたい終えて靴に入っているクララちゃんとしてのステラ・ロサさんだ。この中央がある筈だな?と思ったけど、まあ、それがオリジンですね。ステラ・ロサさんになった時ですね。そしてその時はわたしの大事なものとして『森の姫様の理想』と同じところに、桜のドルイドというアイデンティティと共に固定されている」
「そう。そこが固まってるとおまえはステラ・ロサさんだ」
「なるほど」
「もともとわたくしもこの世界でどんなに長く生きるかわからなかったから、期限が別に意味ない条件にした。わたくしの質量というものを集める事。そのあとはあとで考えます、と」
「適当」
「だから『座標の衛星』ステラ・ロサはもともと不変の存在として意図したものだったのだ。深紅の悪魔のように、星のワンちゃんも別に寿命とか意味がない存在だからだ」
「まあ、星の一部みたいな種族なんですね、今の話を聞くと」
シューズを着た後、わたしは肩と膝・肘の解け損なったところを解しながら言った。
「そうだ。シリウスの星の明るさが即ち偉さでありパワーだ。わたくしが思うにそれがこの世界で意味を失うには別に想定しなくてもいいくらいに時間が余裕だと思ったよ」
「なるほど」
何回も叱ったけど、まあ、わたしが「霊術師」だった不安なところのくららちゃんが聖堂の前で「灰色の呪い」を爆発させるところだったということを聞くと、確かにそれをすぐ浄化するとかエーテルを入れて扱うよりは、資源として考えるのが自然だったかも知れないと思えなくもない。(もちろん、自分のことではなかったら、の前提だ!)
「だからステラ・ロサの名前としての器はその時、わたくしの爆発前の偉さも引っ張って固定しているものだから、けっこう固い礎だと思うといいけど、それもそのウヌスとしてのおまえが自分を固めることができなくなったら、わたくしはなんもできない悲しき生き物になるところだったよ。それが厳密には少年と一緒に生きることになって安定的になったというわけだ」
「あれです。母がずっと言ってました。幸せな結婚をすると、愛をするとなんか治るとか戯言を言ったけれど、そういう虚ろの話にも平凡の人の子の何かの原理は入っていたのです。少年がわたしに大事な存在のなったということはその分強力だったということだ」
「まあ、深紅の悪魔は名前を持たない種族だから。それをきみが深紅の悪魔の成れの果てでありながらも『自分の事をステラ・ロサだと見做した』ことが本当に大きい事だったとわたくしは思っている」
「そう。わたしも思った。たぶんそれです」
走る!!!




