コアが多いと言うのはそういうことだった
「そう。辻褄を合わすことができなくなると、それは平凡の社会で生きていけない違うもの、変なものになるのだ。あやしくなって喜ばしくない。『ふうんステラさんの動線と、時間の使い方が納得ができません。本当に薬師としてちゃんとしてますか?』と疑わしくなると、それはそのまま『型物理性のデメリット』のようなものが来るのだ。『確かに頭も白いしあやしいと思った』『四属性くんは騙されてるんだ』みたいになり、ギルドでこれからも『どうでもいいもの』としての扱いができるのかな……という」
「うわ、嫌すぎます」
そんなことを考えるとピリピリと、耳元でいやな感覚がするのだ。そして「だからこそ」わたしはクララとして、白い子として平凡の社会に入りたいと別に思っていない。
頭の色が珍しい他のマギアたち、アルマたちと似たように(白髪はふつうに平凡の人もそうで、非凡使いの素質と違って髪色と共に肌や普段の具合なども問題だが)社会で生きづらい特性なのだ。だから、ぜったい「魔力お仕事をやる人は頭の色が珍しいか」と「ドルイドさんはやはり神秘的な呪術を扱います」この二択。この二択で通じるところ、通じる人々が必要なのだ。そんな見方で味方してくれるところはいいけれど、そうではない国は行きたくない。別に友好的ではないなら、発展した都市国家の市内、はじめて行く村などに入らず生きた方がいいだろう。これはただの心配性ではなくて、アストラさんとの会話で少しずつ確認したことだ。魔術ギルドの権威が強くなる前は、珍しい髪色のマギアなだけ、魔女狩りに会ったって!!!
そして、ブイオさまはそれと共に安心できることも言った。
「逆に言うと、そのカタチの中に入ることができたら、人の子は実は他の人にぜんぜん興味がないのだ。税金問題がなくて聖堂、軍隊、お偉いさんの権威。身分が保証できて『いるように見える』『仕事をやるように見える』ものには、あえて関わらず、逆に自分が損することを険しく思って警戒する。わたくしが思うにその一番の方法は今年の初頭、少年に頼ってみることだったな。それが運がよくてうまく行った」
「そうですね。都合がよかった、と言うとあれですが、もともとそのまま深紅の悪魔に頭ぽかーんをされてやられたら、少年は多分すぐに駆逐されたと思うのです。だから彼がわたしたちが大事なのも必然で、わたしも彼が大切な縁だ」
「金髪もサラサラだしな」
「うん。かならずイケメンに育つと思います」
わたしたちはそんなクッソくだらないことを喋りながら(それから、「平凡の社会の利害得失がどんなに怠いか」などをいっぱい推測を含めて喋ったあと)いつもの川辺に来て鍛錬をした。ストレッチから初めて、走りと杖の素振り。いつものプログラムだということだ。
「おまえの体は不変で、チカラと柔軟性は同じだとしても、使う関節、集中する体の部分によって動きが変わるものだから」
「はい」
もちろんそういう鍛錬も助言もいつものことだったので、わたしは自分のクララの体に刺激を欠かせないことに集中して、飽きることに注意して、動きに集中した。「いつもの」動きだとして怠惰すると、必ず深紅の悪魔との戦いでその尻尾が出てしまうのだ。いでででで。
「わたくしの星のエーテルと、おまえの『クララが母くらいに大きくなったら』と『深紅の悪魔としての以前のサイズ』が噛み合って維持している器だから。今のステラ・ロサさん以上の凄く発達した動きはできないと思えるな。別に非凡のものとして動きたいわけではないとしたら」
「はい。非凡のものについてアストラさんと話しながらちょっとわかったのが、わたしはブイオさまが言った『不安定ないっぱいのコア』というものがすなわち『花びら』で、それが『本当に散ってしまう自分』にならないために、クララの肉体として、『真名』というものに集中するしかないということがわかりました。たぶんそういうのがわたしが初期に不安定だったということですね。他の非凡のものはもっと安定的に人に化けて生きている。アルベルト氏がそうですね」
ブイオさまは同意した。ちなみにこの川辺は今までの何か月、本当に誰も見たことがないので普通に影影の狼の姿でストレッチをするわたしの動きに目玉をなぞっている。
「そう。もともとは『星のワンちゃんが多分この星の人の子に化けている筈』みたいに、自分の属性とそんなに合ってなくても、その必要があると化けて混じり込むことができる。それが命だからだ。でも、おまえはその命がもともと『深紅の悪魔』としてもクララとしても明らかに自分が一回終わったと知っているから、『12月8日の爆誕をおめでとうございます、ステラ・ロサ!』という祝いであえてそこを人生のスタート時点として固めているのだ」
「そうだったんですか???」
わたしもちょっと自分の「この世界でだけ75000年、そして10才であり0歳」の自分について思ってたことだけど、こう確実に言われると確かにそうだった。記憶を完全に失ってる非凡のものの成れの果てや、死んだ女の子としてずっと生きる事は流石に厳しくて、隷属する霊属性の道のりだ。わたしはもっと、葉っぱとか生えた方がいいわ。春みたいに!木属性!
「だからこそわたくしとおまえの真名がその時『に』繋がっていることでもあるしな」
最近猫カフェに行ったのでその感覚を反映してみました。まあ狼と猫はぜんぜん違うけどいったん大きい哺乳類という観点ではわりと近いから。




