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祟りと流れ星

帰ったら、少年はどうやら寝ているように見えて、わたしも横になる事にした。


「でも、今更の事を言うと、アストラ氏と喋ってると朝起きるのが遅くなってしまうな」


「まあ、それは仕方ありません。わたしは普通におしゃべりが食事の様な人だし、もともとはブイオさまのエーテルの勢いを貰って動いてるから睡眠は心の言葉の動きを休ませる目的が大きいのです。アストラさんのような人と喋るとその部分が落ち着くから、ぜんぜん平気」


「それはそうか」


わたしはブイオさまが入ったままマントを外して、自分の布団のようにして横になった。今夜の話を思ったら、けっこう頭がいっぱいの気持ちになる。ブイオさまは先までの話を続いた。


「だから、わたくしは『狼の星』としては本当に本体のところの薄さくらいが狼として理性を持つことができたということだ。1憶年前にこの星に来てたら姿も大分変ったかも」


「まあ、そのくらいの時期はたぶんわたしも普通に住んでたんですね」


「そうだな」


わたしは頭の後ろに腕を置いたまま、天井を見上げた。わたしは10才がやっとのクララとして生きている薬師の子でもあるけど、同時に非凡のものとしてはこの世界では異邦人(エイリアン)。まあ、クララとしても税金払ってない隠れ里の娘だから同じかも知れないけれど、確かにここの人ではあるから。


「型物理性とやらに入り込むのは難しいことです」


ブイオさまが同意した。


「それは容易くできるものではない。型物理性の理さえも難しいだろうな」


「変な話」


そして、わたしは眠りに落ちて、朝になった。


……

………

朝の真っ白はどの国も同じだろうか?


「おはようございます、ドルイドさん」


「ううん」


少年が起きて、わたしを呼ぶ声がした……凄く怠い感じだ。


「昨日はより遅かったようですね。先にギルドに行く準備をしていたところです」


「朝ごはんは?」


「まだです」


「なら面目ないな。食べよう」


「はい」


そして、わたしは起きて少年とパンを食べた。


「昨夜は、ネロ様が『ムー』について知ってるとはじめて聞いたんだ。そして色々聞いたけど全然忘れた」


「そうですか」


少年はむしゃむしゃとパンを食べて、水をちょっと飲む。


「そして流石にわたしは天才だったようで、平凡のドルイドさんとして恥じないくらいには夜空のことをだいたい覚えた」


「流石です。でもドルイドさんたちは平凡の人ではないと思います」


「それはそうか。とにかく、だから詰めた知識で改めて思ったんだけど、『狼の星』は普通に今もあることを再確認した」


少年も別に「おおいぬ座がなくなった」などのことは聞いた事がないので、これはこれで同然のことのようだった。


「ふうんなるほど。でも、それはどういう理由ですか?ブイオさまがこういて、ドルイドさんの仲間としておれの命を救ってくださったことは事実だし」


ブイオさまが説明する。


「それが、わたくしは夜空で見えている狼の星とは双子星なのだ。でも、ムー大陸の滅亡に等しいなにかの事件によってこの世界に飛ばされた。双星であるシリウスは無事のようだな」


「へえ」


「わたしはいったんブイオさまの全てのことを疑うから、ぜんぜん別の星が狼の星のふりをしてるのではないかとちょっとは思ったけど、もともと深紅の悪魔がブイオさまのエーテルから復活することも事実だし、わたしの『星化(スターライズ)』というものをやった時に、そのシリウスさんから『星のワンちゃん』を要請したらしい。この二重の事実はブイオさまの言葉が嘘だった場合成立できない」


「ブイオさまは本物です。おれもその証を持ってるじゃないですか」


少年は大事にしているスターダストの指輪を見せた。


「そうだな」


「でも、その事件がなんだったのか、ちょっと気になりますね。アストラ・ネロさんが『祟り』だと言って大魔術やそれに等しい事件を予測したのも結局ブイオさまがこの世界に来た事件と繋がるかもしれないし」


「それは可能性があるようだ」


そんな話をしてたら、少年が今日の午前の授業に行かないといけない時間だったらしい。


「なら、おれは火の堂に行って魔術の鍛錬をしたいと思います。ドルイドさんも今日も頑張ってください」


「うん、わかった」


「いってらっしゃい」


少年が家を出たあと、わたしはそんな気がしてアストロロギアの本をちょっと見た。はじめて見た時と違って星座のことも星の位置による占い方法もだいたいわかるようになってた。別に非凡の占星術師になるつもりはないけど。


「やはり天球の位置も同じです。狼の星の位置自体はブイオさまが爆発した事件とは別に変わってないようだ」


「まあ、ただわたくしの部分だけが弾いたことでいいよ」


わたしは椅子に裸足を上げて、足指と足首をちょっと触りながら言った。


「ふむ、でも奇妙なことです。狼の星のところの魔力爆発のようなことが起きたら、その部分だけが非凡や平凡の爆発が見えるだけで、『流れ星』には至ってないはずです。だって、流れ星ってほうきのように斜めに夜空を横断する現象でしょう?でもシリウスは普通に天球の一部だ。『そこから来る』形に見える筈です」


「ふうん、それもそうか」


ブイオさまは自分が爆発してこの世界に来た、そして星が地に落ちると喋りそうな理性を付与された自分自身がいちばんの興味だったので、それは盲点だったように言った。


「なら、それとは別に普通に平凡と非凡の流れ星はあったということになりますが。同時に、離れてる場所で宇宙的事件とやらが発生できますか?」


「そうだな……それこそが宇宙的確率だな」


「ううん」


「まあ、鍛錬しながら考えるか」


わたしはブイオさまの話に同意する。動いたら雑念が溶けるのだ。


「そうですね。体を動くとちょっとわかるかもしれない。大体眠気も去りました。行きましょう」


わたしはドアロックを締めて、大門に移動する。しながら……なんか白い蛇の様なものを見た気がした。

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