凍る海の冬
自分のこれからの活動資金を待ちながら、
資金というか、道具と食糧で
それ自体よりは「確かに貰っていけるな」という経験の方が大事かもしれない。
その達成の経験を待ちながら
「深紅の悪魔」から助けたお兄ちゃんが、なにかのお礼を持ってくることを想定し
わたしは何回目かもわからない
暗すぎる海を
なんも見えないを見ながら、眺めようとしながら、海風を吸って
「うー寒っ」とか独り言を言って
狼さまのモフモフに座っていた。
「ふつうは寒い、で済むような状況ではないのではないか?」
ブイオさまがツッコミを入れる。
わたしはそんなに花のようではないけどその言葉に笑って、
「はは、そうですが」
自分の鼻を触った。
「こういう地味な話が人の子の憧れのなにかに残るのだろうか…」
なんか言ってるのはスルーすることにした。
そうだ。実はわたしはあまり寒くなかった。
言葉の表現の魔法があって、言葉遊びがあって、「こいつ冬なのによく動くな、よく野宿できるな」と、この物語を聞くものは思うかもしれないけれど、見えないところで、書かれてないところで、だいたい魔法の星の狼さんに頼っている10才のドルイドちゃんだったのです、わたしステラ・ロサは。
妖精のマントを纏いくっそデカい狼のモフモフを纏ったのである。
「いや、まあ、めっちゃ神秘の娘なんで。」
毛皮だけではない。
多少鈍いところがあるかもしれないけれど、ちゃんと寒いのは寒かったり、熱いのは熱かったりする体で
クララの時よりはだいぶ無敵のわたしは
そんなに無敵か?とか思われるかもしれないけど
実はこれが、
食べなくても動くということは、普段もなんも食ってなくても自分の「座標の衛星」としての名前が器になっていて、ブイオさまから流れてくる「勢い」の星のエーテルが体に回って、人の子としてホカホカを維持してくれるのだ。
その余力が余計に余って、トリプル余の星のエーテルが頭も白く光らせ、世を照らす。
今宵もな。
「まあ、でも、そうです。
わたしがふつうのドルイドだったら、ハンターだったら、たぶんこんな呑気の態度は取れない。話が厳しくて、もっと動学的で、ゆっくりの今の時間より遥かに面白いかもしれない」
「ふん」
自分の白いサラサラをコリコリする。
「でも、わたしは最近まで、寒い、という言葉では済まない、ところか、秒で難しくなる自信あった、人の子の娘だったんです。
この、理由をずっと作ってどうでもいい夜景を見たり、未来を考えたり、なんもない話をするのは、わたしにはずっと楽しくて」
わたしは今度は結構花のようだったかもしれない笑いをしながら
「そういうやつが老いて死んでもずっと続くて粘るのがわたしの人生だ。」
決め顔などしない。




