世は遠くて広くて深い
そういう、職人と塩とお金と、「元素魔術」が魔力のお仕事をやっている世界とか考えながら
海の匂いと涼しい辛さ、黒とゼロを
漆黒の海岸を見ているわたしであったが
「深紅の悪魔」を倒しているのならば、その星のエーテルも、「欠片」も回収ができたならば、早めに邪魔されない寝床を探して場を去った方がいいであろう。森に去った方がいいであろう。確かにそうだとわたしも思うけど、これには事情があるのだ。
今のわたしは悪魔から助けたお兄ちゃんがお礼を持ってくるのを待って、海の町の外で暇つぶしをしているところだ。
背が高くて、ガタイがよくて、漁師のようだ。名は聞いてない。
たぶん袋とかちょっとの食糧が得られると思ってる。
そして、逆に、なぜ町の外かと言うと、
町に入らないことにしてみたのだ。
最近の何日、「木」のエーテルの呪術の修行と鍛錬、「桜のドルイド」としての名声と使命。そして大事を避けて生きる(←これ大事だと思う)ための安全策などを色々考えた結果だ。
想定したけれど、やはり白い頭のドルイドちゃんはなるべく社会からは離れて孤高に生活する姿を見せた方が、「あの人は礼だけを貰ってクールに去ったのです」という逸話に残ると思うのだ。
そして、それだけではない。
その方が
神秘的で、利得だけ取って、
自分の「混ざり」としての正体を
(たぶん)人と怪物の亡霊だという事を暴かれる危険性を最大限に管理できる策なのではないかと思って、いったんの試しとして、これから何回はこんな感じで行動してみると決めている。
もともとわたしは人見知りだしな。人間が多いところは苦手の様だ。
それはともかく、「少年」みたいにみんなが自分の事を見逃してくれて、掘らないとは限らない。
人は全てを見てすべてを聞くからな。
すべてを見て聞く。
それは行商人とドルイドの話だけが間接的に入ってきた、わたしが住んでいた隠れ里の山の村の噂とかを考えてもそうだった。
どこの国が戦争で、どこの貴族が結婚したり死んだり。
わたしはそういう噂にあまり興味なかったから、全然覚えてないけれど、覚えていたら今便利かもしれないとか全然思ってないけれど、人々が噂が大好きだという事は承知の上である。
隠れ里がそうだから、ふつうの町は尚更だ。
だからだ。わたしは今ただ「怪物を倒した女の子」なだけだ。人と接する事が多くなるほど、違和感は生じる。仕方なく生じる。(フィレンツェの市町については、もう遅いかも知れないけれど)
死ぬように寝るし、体からは草の匂いがするし、自分はわからない何かの人らしくない不気味さが湧いてくるかもしれない。
そしてそれは、自分の実績があまりない、今の段階で「悪い方がデカくなって」広がる危険性がある。
うん、やはり「あの人はもともとそんな人だ。きみも知っているだろう」はいつかきっと叶えるけれど、それが築かれるその前は、ずっと村から、都市から、離れ離れになって生活した方が得だろう、と、ステラ・ロサちゃんのわたしは思った。
もちろんこれはなんも考えなくてわたしがただ人が苦手だから、社会が怖いからずっと逃げる事を決めている、無対策で待つだけではない。一応の考えがあるのだ。過去の知識から学んでいる。
まあ、賢明な読者の諸君は感じているかもしれないけれど、その考えとやらは、適切なところに話すことになるでしよう。
いったん、村から離れて、神秘さを増す。それが今、集中すべきことだった。
その結果的に、だから、夜の海を観光する事になっていたわたしは、暇つぶしだと言っても夜の海は怖くてあまり近づいていきたくないし、やる事もない。つまりとっても暇だ。
「元素魔術」が日常の便利なお仕事をしていると言われているこの世界を考えながら
うむ、あの海ぜんたいの「水」のちからを使ってなにかの術を行うと凄いよな。とかを考えていた。




