マギアの世界に投げられたおれは隙間を刺したいと思った
「そのような考え方でも、そうではない考え方でも、きみはけっこう大変な立場だ。家がマギアでも非凡のことに慣れている家庭でもなかったからな。だから生身で素質だけでマギアの世界に投げられたとも言えるし……そして、もともと戦争に巻き込まれ1人になってるし。いやいやとても大変なことだ。そこで、このステラ・ロサさんが少年の心をもてあそぶ事になったらどうする」
ドルイドさんは両手の指を素早く動いてなんか脅すような真似をした。
「はは、100万もそんなことはあるまいし、もしそうなってもおれは後悔しません」
「ふうん」
ドルイドさんは首を傾ける。
考えてみれば確かにおれの立場が「クララ」としての彼女の立場に似ていると思ったのか、もしかすると「狼の星」から一部だけがこの世界に来て、本当に1人になった自分の深紅の悪魔の立場に似ていると思ったのか……おれの顔面を見込んでいた。(もちろんそういう考えはおれの勝手な妄想で、別におれが彼女の心の言葉が読めたり感情が触れたりしたわけではない)だからおれは彼女に問う。
「なんですか」
「きみが一生健康で、やりたいことが続けたらいいなと思っている」
「それはまた急な話だ」
おれはちょっと照れくさくなって失笑した。やりたいことで健康か……まあ、おれがやりたいことは貴女の一番になる事ですが。それはもう決まっている。ドルイドさんにはもうどんな事をされてもいいし、もし「黄金のエーテルの術師」などが現れて離れることになろうともこの心は同じだろうから(そう、おれはその件について心配したりもするのだ)彼女が救ってくれた時のメンタルと比べて、もう大丈夫だと、おれはどんな状況になっても貴女が無事ならやりたいことをやるのだと、ちょっと言いたかった。
でも、ドルイドさんの話は続いた。
「平凡の戦争に行くのが心配なのだ。今回の大魔術は正直そんなには心配してない。人数が多いし、偵察も言っている。大魔術師の2人が引率者で、準備も急ではないのだ。これは『それフラグだぞ』と言われても返せる言葉がある、相対的に安心できる案件だ。
でも、平凡の戦争はいちいち命をかけなくちゃだめだろう」
ちょっとツッコミところを失ってしょぼんとするブイオさまのジェスチャーが感じれた。
「それはそうです。だからおれも頑張って生き残ります。無理な作戦に参加したり、政治的にハメられたり、心と気持ちを壊したりするのは積極的に注意して、避けたいつもりなんです。命は惜しい。ずっと生きて偉くなって、ドルイドさんを研究するんだ」
「うげ、きみの新しい属性の方を考えるのではなかったのか???」
ドルイドさんは今のおれの言葉は考えもしなかった様に、ちょっと引いた。
「そうだった。でも、考えてみればそれはやはり『魔術ギルドの中では』難しいことです。そしておれは多分エンブリオというマギアとして持てるいちばん最上が……ずっと魔術ギルドの『特例』からの『新しい顔』になることだ。そこで急に木属性や金属性のようなナニカのマギアだ!これはらよろしく!とか言ったら、おれの立場も大変ですが、今まで頼った4の堂のみなさんにも面目ない。だからその研究は……おれの属性は、4属性の間に置くんだ」
おれの言葉にステラ・ロサさんとブイオさまが反応した。
「間に?」
おれは思ったことは充分あったので、二人の疑問に答える。
「その、おれの夢があるんじゃないですか。ムー大陸そのものだと言っても過言ではない、膨大なエーテルリソースとしての個人の夢」
「そうだな」
「そのひと、たぶん属性がおれと違うのです。火でも、水でも、土でも、風でもない」
「そうなの???」
ドルイドさんは「古代魔術」のことを思うとどうぜんの事にそのチカラの根源たるぶにゅぶにゅの神様も四属性とそれを含める何かのエーテルを持っていると思うしかないのだ。(これは以前言ったことがある)
「いぜんドルイドさんも似たようなことを言ったと思いますが……『違う知識』なのは相対的にわかりやすいものなんです。『使える』のは事実です。そして、熱くて鋭くて硬くて素早いですが……その人物の属性はそれ以外のものだったと『違う』と感じるのです」
「一回見た夢の事をこんなに増幅するやつもきみ以外は相当いないんじゃないかな……その夢の主も引くだろうよ」
「そうなんでしょうか。まあ、ともかくその『主体』の能力は凄くて、他の属性も扱う事ができるけど、基本は人の姿ではない場合の奇怪な時の体により合う、なんらかの属性があったはずです。霊かも知れないなにか、ぶにゅぶにゅするものでしたが、おれは自分の器に合うものではないと理解ができないので、そこの『夢』はわからない。でも、彼女が多数の属性が扱えるもので、自分の基の属性の原理も才能の間に潜んでいる感覚を感じた」
「ふうんなるほど。きみが『完全記憶』だけではなくて、その夢と相性がよかったのも理由の1つだったかもしれない。きみは何人のマギアの生徒の立場を行き来するから、そのように他の記憶を見ても客観的に感じることができて、また日常に戻るのもできるのだろう。
そしてわかった。その『何属性も使った』ぶにゅぶにゅの神様のように、もしきみの本当の本当の属性が出て来ても、きみの4属性の魔術の中にその原理を隠すということだ」
「はい、そしてそれはきっとこの世界の他の人にも間接的に影響を及ぶことになり、いつかおれの属性はこの世界でとてもふつうのものになるのです」
「おお……」
「それがいったん、ドルイドさんの『白神女の次を狙う』立場を見て決めた、再調整したおれの目的ですかね」
これは決まったな。
今回もこのように彼の口で示すつもりはなかったけどエンブリオくんが勝手に言っちゃいました。




